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【再掲載連載小説】恋愛ファンタジー小説:ユメという名の姫君の物語 第二十八話‐ユメ‐不思議な話を聞く

前話

「さて。二人きりになった所で……」
 タイガーは身を起こすと顔を近づけてくる。
「まだ、寝ていないとダメでしょう!」
「痛て!」
「ほら。無理するから」
「それは、ロッテが……!」
「私が?」
 ちろん、と睨むとあっという間に大人しい猫に早変わりする。そこでアビーを思い出す。その顔を見てタイガーは言う。
「母猫と一緒に面倒見てもらってるよ。きっと」
「それならいいけれど……。それより、『戻ってきた』って、どこから?」
 単刀直入に切り出す。
「おそらく、君の本当の居場所」
「本当の?」
「俺は眠っている間、ある国にいた。アグリと呼ばれて学生だった。その同じクラスにユメカという女の子がいたんだけど、今は病院で昏睡状態だ、と聞いた。この世界ではたった三日だったけれど、向こうでは三ヶ月ぐらいはいたかな? それでそのユメカという女の子のお見舞いに行った。君とうり二つの顔だった。君がユメ姫となった時期と彼女が昏睡状態になった時期と一致する。ご両親が熱心に世話をしていたよ。俺はユメカの幼馴染みと聞いた。どこか懐かしい響きだったな。そうこうしているうちに、君の泣き声が聞こえてきた。タイガーと呼んで……。そこで俺は自分はアグリでなくタイガーだと思い出した。それまでは本当にアグリとして学生生活を送っていたんだ。戻らないとと思って瞼を開ければ必死に俺の名を呼ぶロッテがいた。それだけ。それだけだけど、君の本当の世界はあちらじゃないか? 俺がアグリといして生きていたようにユメカとして生きていたんじゃないかって思うんだ。何か、引っかかるものはない?」
 言うだけ言ってタイガーは私の顔をじっと見つめる。ユメカ……。懐かしい響きだった。でも、本当にその世界のユメカが私なのだろか。まったくなんの記憶もない。シャルロッテとしてもユメカとしてもなんの記憶もなかった。
「不思議な話ね。ごめんなさい。何か懐かしいけれど記憶に引っかかるものはないわ。まったく記憶が欠落しているの。雰囲気とか香りとかそんなかすかな手がかりしかないの。父と抱き合ったときにその香りが懐かしかった。きっと私はこの世界のシャルロッテなのよ。ユメカはユメカでいるのよ。同じ人間かもしれない。私にはどこからかくる妙な学問の知識があるの。たしか『シンリガク』。でもどうしてわかるかもわからないの。ただ、湧き上がってくるの。だからあなたが刺されたとき、グレートマザーの負のに襲われた、と思ったわ。そしてあなたの事を愛していると思い直したとき、グレートマザーにはアニマアニムスの恋が隠れていた、と。それがなんなのかもわからない。ただの不思議な知識なの。国で見た牡鹿があなただってわかる程度よ」
「牡鹿が俺?」
 不思議そうにタイガーが聞き返した。不思議な話はまだ続いていたのだった。


あとがき
これを書いていたころは河合先生のエッセイをばかばか読んでいたので、エピソードが山ほど出ましたが、今では心理学とはなんぞや、です。ユメ姫の本というのが出てくるんですが、そこに何が書いてあるか正しい学問を書かないといけないのでストップしとります。どう書くべきかという問題が。最近読んでないで阪神ばっかり追っかけてるからなぁ。無意識と意識のあたりでも書いた方がいいのかしら。かといって学術文章はガチでかいたのは卒論のみ。レポートしけんなんてパズルですよ。引用の。言い換えて書けばいいので適当にこなしてました。その代価がいまここに。さぼらずまじめに学べばよかった。進化論の講義とか印象深いんですけどね。ま。大学の教授にも振られたことだし、戻るのはもう考えていません。研究生になることを考えていたのですけどね。今や、希望がない。目指すものがないのでここに小説載せててもどうしたものか、と思ってます。作家にはなれないので。ドクター過程行きたい。でも、今さら行っても研究所にも入れませんしね。顔を見たくない教授たちですし。しかし、母校にしかその学部はない。日本で唯一の学部なので。なので、悠々自適に暮らせる方法を手探りでやってる状況です。阪神ファンになって妙な生きがいはありますが。アレンパになるんでしょうかね。英語どうするんだ?とここまで読んでくださってありがとうございました。 次は訳ありアップします。

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