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【未完小説(完結を目指します)】とびっきりの恋をしよう! 第二部 第五話 太陽の子と月の子

前話

「レンー。育成に行くよー」
「ちょっと待て。まだ用意ができてない」
「え? 何の用意?」
 サーコこと藤堂佐和子には想像もつかない。
「今、サーラに軽食を作ってもらっている。太陽の間でピクニックしよう。わが子の誕生を祝うのも必要だからな」
「レン! 大好き! なんていい計画立ててくれたの!」
 サーコがレンに抱き着く。レンは急にしどろもどろになる。先日の押し倒し事件がまだ尾を引いていた。
「あ、あのな。サーコ。みだりに男に抱き着くもんじゃないんだ。はい、離れる」
 抱き着いている腕を解いてポン、と立たせる。
「レンだってしょっちゅう抱きしめてるじゃないの」
「最近はしてない」
「してる。昨日だってお休みの……」
「あれは別。おまじないだから」
「おまじない?」
「病弱だった頃、母上がいつも寝る前には額に口づけてきゅっと抱きしめてくれたんだ。病になりませんように、って。俺はサーコが元気でいられますようにって祈ってやってるの。だからいいの」
「レンだけずるーい」
「あら。また痴話げんかですか? はい。レン皇子。ご所望の品ですよ。飲み物はこぼさないでください」
 サーラがバスケットを渡す。レンの顔がほころんだ。うれしそうなレンの顔をサーコは嬉しそうに見る。
「なんだよ」
 真っ赤になってレンがサーコを見る。
「レンのうれしそーな顔久しぶりに見れた」
 にこにことサーコが言ってレンはさらに赤くなる。
「男はめったにそんな顔しなくていーの。サーコがうれしそうだったらそれでいい。行くぞ」
 サーコの手を取って天の小道へと向かう。その間もサーコはにこにことレンの横顔を見つめていた。
「あれほど幼いのにまるで夫婦のようだね。サーラ」
「はい。あれは新婚ほやほやのカップルですわ。何も起こらなければいいのですが」
 サーラが心配そうに言う。二人きりの空間で何かが起こっては遅すぎる。だが、自分たちは行けない。良識を持ってることを祈る心配症のサーラである。そんなサーラを愛おし気に見るレガーシである。こちらも夫婦なのでサーコたちとさほど変わらないのだが、そのことには気づいていないレガーシ達である。どっちもどっちというところだ。

 天の小道をとことこ歩く。サーコは今にも走って行きたいが、走れば持っているバスケットが落ちる。ひとりで持つといっても渡してもらえず、子供を間に挟んで歩く親子のようにバスケットを子供にして歩いていた。サーラにしてみればもう、子持ちですか? である。
「やっと着いた。レン、歩くの遅すぎるよ~」
「そうか~。久しぶりにゆっくりできて気持ちいいんだよ。この道が気楽に歩けるなんて信じらんないぐらいだからな」
「へ~。育児に目覚めたの?」
 サーコはにやり、と笑ってレンの首にかかっている月のしずくをさした。きっと太陽の間に行けば太陽のタマゴのように姿が変わると皆、思っていた。

「ただいまー。元気だったー?」
 サーコがバスケットを放り投げる勢いで手を離すとかけていく。太陽はちかちか光ってまるで笑っているようだった。
「おい! 食いもんを粗末にすんな! 子供が真似すんぞ!」
「子供って?」
 ほへ? とサーコがレンを見る。
「そこにいる太陽の子はお前が産んで育ててるんだろ。いたずらガキに育つぞ。俺の子はかわいーい女の子だもんなー。なー」
 もう。最初に生まれた娘は目に入れても痛くないという親を通り越してじぃじだ。まだ、卵にも戻っていないのに。
「知らない!」
 サーコがつん、とそっぽを向く。
「お? やきもちかぁ?」
「知らない!」
 つんつん、ととがった声を出すサーコである。ツンデレとレンが知っていればいじりがいがあるが、知らないのでただのすねたサーコにしか見えない。
「ほら。お前も、ここでこの子とねんねしな」
 レンはバスケットを床に置くとかけていた月のしずくのネックレスを外してペンダントトップをゆりかごにいれた。
 ぽん、と音を出して乳白色の丸い物体に変わる。そして淡く光がついたり消えたりする。
「ああ。呼吸をはじめたんだな。いい子だ。そこで兄ちゃんとゆっくりねんねしろよ」
 月の卵を何度かなでるとバスケットを置いた方に足を向ける。見れば、サーコが穏やかな表情で布を広げていた。
「レンも聞こえるでしょ? 月の子の声が」
「ああ。サーコは両方聞こえるのか? 俺には月の子しかわからん。ただ、ありがとうと言っていた。あんなに意地悪したのにな」
「でも、とてもやさしかった。レン。焼いちゃうほど。私が太陽の育成をしていた時レンはこんな気持ちになったのかな、って思った。ごめんね」
 サーコの目に涙が浮かんでいた。
「馬鹿だな。泣くことあるか。こんなことで泣いてたらいくら涙があってもなくなるぞ」
「そうね」
 サーコはハンカチを出すと滲んだ涙を拭く。
「サーコは太陽の子の声を教えてくれないか? 月の子は聞こえるが、太陽はわからない。サーコを通じて太陽の子の言葉も知りたい。サーコの子供は俺の子供でもあるしな」
 そこで、はたとレンは子育て論を延々としていたことに気づく。順番が逆だ。結婚する前に育児論なんて。ゆゆしき事態だ。
「レン。眉間にしわ寄ってるよ?」
 サーコが手を伸ばして眉間のしわをなでる。
「むぅ」
「むぅ?」
「俺たち結婚もしないうちに子育てしてるんだ。順序があべこべだ」
「って。太陽の乙女と月の息子なんだから当たり前でしょ。育成は」
「そうだが……。今すぐ婚姻の署名に名前を書くなんて言えばサーラが百叩きでもしそうだしな」
「レン? 結婚って言った?」
「ああ。子供育てる前に結婚しとかなきゃいけないだろ? 子供は親が育てるんだから」
 
 け、結婚……。

 サーコは急にどぎまぎしてきた。眉間に当てていた手もおろしてもじもじとしてしまう。
「サーコ? 俺、何か変なこと言ったか? あ。年齢か。そうだなぁ。こればっかりは変えられないからなぁ」
 サーコはしばし考えていたがレンの名を呼ぶと飛びつく。勢いでレン事倒れこむ。
「おわっ! だからおしたおすなっての」
 レンが元に戻す。
「結婚しましょ。今すぐ!」
「サーコ。落ち着け。今、結婚しようにも世の中の情勢が悪い。それにそんなこと口にすると二度とここにこれないぞ。俺と一緒には。サーラが異様に気にしてたからな。ひとりひとり来て育成てなことになると困るのはサーコだろ?」
「うん。結婚。難しいね」
「俺もまだまだひよっこの皇子だ。結婚なんて許される年齢じゃない。ここで親子ごっこをしよう。この空間だけは俺たち家族の空間だ。何もかも関係なく」
「そうだね。家族の家なんだね。ここ。じゃ、ピクニック続けようか。はい。サンドイッチ」
 サーコが理性を取り戻し、レンはほっとする。このサンドイッチを食べ終わったら力を注いでみようとレンは思う。どうなるのだろうか。太陽の子に変化が現れるだろうか。ぼっーっとゆりかごを見てぱくつく。
「うまいなー。これ何が入ってるんだろ?」
 サンドイッチを見て間に挟まっている具を見る。料理もしないレンには何が入っているのかさっぱりわからない。サーコはぱくぱく食欲お旺盛ぶりを発揮して食べている。
「サー…サーコ! 太陽の子が!」
「へ?」
 太陽がゆりかごから浮いてさらに一回り大きくなった。熱くはないが、フレアが出ている。
「やっぱり。月の子と対なのね。これで育成はうまくいくわ。食べたら、少しやってみる?」
「え? 何を?」
「育成。月の子はレンの優しい気持ちをまだかと待ってるよ?」
「じゃ。デザート以外をさっさと食おう!」
 ばくばくとレンが食べ物に食らいつく。サーコはしばらく呆然と見ていたが大好きなサーラのおかずを見て我さきと確保にかかった。
「これもーらいっ」
「サーコ。全部とるなー」
「いやだもんねー」
 ふざけているのか真剣勝負なのか食い物競争に太陽の子も月の子もあきれている。結婚など夢のまた夢、ではないのかと神の卵達は見ていた。我が親ながら子供っぽいことだと太陽の子がそっとため息をつく。月の子はあの食べ物を分けてもらえないだろうかと期待の目で見ている。どっちもどっちである。この親にしてこの子あり。この家族は果たして神聖な使命を全うできるか。それは、これからにかかっていた。


あとがき
いろいろ愚痴ってすっきりしました。ここで愚痴っても仕方ないんですけどね。私の性格上。それでも、聞いてもらえるってうれしい。そして、やっぱり、入ってしまったタイガースの正式ファンクラブ。日にちが迫っていたのでえいっと。あー。毒されている。この話の続きはまだ思いついていないのでしばらくかかります。出だしは考えて書き出したのですが。進まない。あとは外貨預金だけだ。あとはー。ルルアのアトリエをダウンロードするか否か。あと一つ名前忘れたけれど黄昏れシリーズの一つが未プレイできになっている。アーシャはコンプした。今、マリーのリメイクやらどうぶつの森を午前中にする日が休みというので執筆と手帳とかペットの世話と競合中。でもパンダコリがでかい。あんなに大きくなるのね。タニシも子供産んでるし。六匹のちびこがいる。あと二匹孵化寸前を阻止したのが悔やまれる。過密飼育と焦ったのです。ですが、コケを食べてくれる貴重な戦力。ばしばし孵化させればよかった。明日が寒いそうで、財布買いに行こうとしてやめました。その代わり執筆。これから「最後の眠り姫」を更新します。あとはゆっくり執筆して毎日更新を目指さないようにします。最近続けていたのでまた毎日更新しようかと思っていたのですがあ、思いのほか執筆のプレッシャーがかかって。飛び飛びすぎてPVが減っていたのでまたちょこちょこしていたのですが。ま。フォロワーの定義も変えようかと。でも性格上、暴力と性的なものには嫌悪抱いちゃいますね。実は固定記事消えてたの知ってます? フォロー企画を書いてありましたが、だれも読まなかったので(読んでいる人もいる)消しちゃいました。ページにスキ入れてもフォローしなかったり、フォローしても該当記事にスキいれなかったり。あべこべになってるので廃止です。100にはなりませんが、創作アカの方お待ちしています。

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