見出し画像

【連載小説】恋愛ファンタジー:最後の眠り姫(53)

前話

「兄上ー。頭痛いー」
「一本も空けるからだ」
 クルトの言葉通り、ヴィルヘルムの二日酔いは三日酔いまで延びていた。クルトの執務室に集まったものの、使い物にならない。横でフリーデが介抱している。居ないのは当人、カロリーネお姉様だけ。
「方策の目星はつけているんだ」
「え?」
 クルトの唐突の言葉に三人ともばっと視線を向ける。
「婚礼前にお隣の国から祝いの宴をしたいとご招待がかかってる。もとは一つの国。是非、エミーリエ様に会いたいんだとさ」
 面白くなさそうにクルトが封筒を投げてくる。すんでのところで受け取って中の招待状を確かめる。
「その旅行に護衛として任務を課して連れていくつもり。どうやら、勉学の方が得意らしいからそのうち簡単な事務からはじめて秘書官まで上り詰めたら姉上とも結婚できるよ。」
「ちょっと! それじゃ、私は本当の行き遅れになるじゃないの。そんなに時間かけたら!!」
 カロリーネお姉様が突撃してきた。
「そんなに時間はかからないよ。登用試験の出来は主席だったから。ある思惑から騎士団に入れられたんだ。運動神経はないらしいのに。事務方になったらとんとん拍子に上り詰めるよ」
「ちょっと、私の夫の悪口は言わないで頂戴!」
 クルトに噛みつきそうなお姉さまをフリーデと一緒に止める。
「まぁまぁ。お姉さま落ち着いて。秘書官が向いてるんだから好都合じゃないの。騎士団経由ならもっと遅いのよ。これもクルトの妙案で偶然が偶然でなくなるんだから」
「まぁ。そうね」
 手近にあった椅子にお姉さまは腰かける。
「いつ行くの?」
「もう少ししたらね。婚礼準備が進んでないから。宮殿がややこしいらしい。俺の宮殿だけでいいのに」
「ちょっと。クルト!」
 言いながら隣に座っていた私の肩に手を回す。
「兄弟姉妹の前だ。かまってられるか」
 なんだか投げやりのクルトに驚く。こんなに不服そうなのはこの招待状の性?
「クルト。この招待状の政治的意味合いは何なの?」
「エミーリエ」
 クルトが驚いて私を見る。それからふっと優しい表情に戻る。
「エミーリエは聡明だね。その招待状に込められた意味を感じたんだね」
「だって。クルトが見たこともないほど不機嫌なんですもの。何かあると思うのが普通でしょ?」
「よく見破ったね。東もエミーリエのことは手放しで渡したわけではないといいたいのさ。伝承は両国が一つの時からあった。たまたま、屋敷がこちらの国に属してこちらの王族に手紙が伝わっただけだ。東にも権利があるといいたいんだよ。それをあえて譲ってやった、と暗に言いたいのさ。国のために俺たちは結婚するんじゃないのに」
「そういえば、そうね。国のためなんて思ったこともなかったわ」
 これからは政治のことも考えないといけないらしい。しばらくクルトの秘書でもして執務を覚えようかしら。お父様もお母様と一緒にお仕事をなさっていたわ。
「エミーリエ! 君はなんてすばらしい女性なんだ。執務を覚えようなんて。そこらの姫君は夜会のダンスにしか興味ないよ。俺と一緒に仕事をしてくれるんだね」
「当り前よ。女性も仕事をもってしかるべきだわ。亭主元気で留守がいい、なんていう私じゃないもの」
「なに? それ……」
 ヴィルヘルムが聞いてくる。ほかのみんなもきょとんとしている。
「ただの言葉よ。旦那が仕事で家を空けているだけまし、ってとこかしら。でも今は、現代よ。女性も仕事をするべきだわ」
 急に仕事人間に変わった私を皆、驚いてみる。
「エミーリエってぽやーとしてるけれど、しっかりしてるのね」
「ええ」
 お姉さまとフリーデが称賛のまなざしを投げかける。
「多くの王室では執務は女性はしてないわ。いつもそばに立ってるだけ。私も嫌よ。そんなお人形さんごっこ。だから、行き遅れたんだけどね。みんなおとなしいだけの姫君がほしいから」
 はぁ、とカロリーネお姉様がため息を派手につく。
「私にも執務の一部を渡してもらうようクルトから話しておいて。私は愛しの王子様の所まで散歩してくるわ」
 思案気な顔をしてカロリーネお姉様が去っていく。その後ろ姿を最後にカロリーネお姉様は行方を消したのだった。
 縁談事件の前に事態は急変を迎えたのだった。


あとがき
毎日更新しないとみてもらえないのね。でも、余裕がない。ためにためて60話までためてあるけれど、まだ続く。一日一話が限界。今日も執筆の時間は取れそうにない。年末調整の書類で大幅に予定が狂ったのです。ほんとなら睡眠負債をなくすべく、昼寝の予定だったのに。国税庁のホムペの書類返還に無駄な時間を費やしてしまった。どうやっても表示されない。PDF{アプリもいれたのに。あとでぬいとこ。腰が痛いです。同じ姿勢で何時間もして。ネットの方が手っ取り早いとやったのですが。無駄足でした。結局紙媒体取り寄せです。明日は寒いという。行きたくないが、店長がいるときにしか渡せない。台紙の件もあるし。去年作ったパスワード忘れました。とっさに作ったので。しかもパスワードで切り替えができるのかどうかもわからない。クラウドということはおそらくそうだけど。うちの給与明細はネット経由です。でもPDF出力はできません。それでかな、書類が出なかったのは。古いんかねー。このPC。ここの更新だけはと上がってきたけれど、読んでる人いないっぽい。ま。いちゃいちゃしてるだけだからね。伏線が伏線を呼ぶ展開になってるけれど当分先、の話。まだ回収されてない部分もある。原始の宇海ってなに? 勝手に書いたけれど無意識の手なので、あとがない。ここをクリアしないと終われない。どこか冒険に行くんですかね。今、違和感を覚えて調べなおしたら西と東の国が入れ替わっていた。危ない危ない。初期の原稿めちゃくちゃだったりして。西に逃げたって覚えていたのに東に逃げたことになっていた。エレオノーラたちが。なんか地図が変だなーと頭で思っていたけれどやっぱり間違っていた。あー、決定的ミスを犯すところだった。危ない危ない。あとで見直そう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?