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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(79)<画像年末年始仕様>

前話

 カロリーネお姉様に連行され、お姉様だけが存分に楽しまれた後。
 はや、次はお母様のアンティークアクセサリーを見ましょうとさらに連行されかけたその時、ちょうどいいところにヴィルヘルムがフリーデと散歩していた。
「ヴィー! フリーデ! 助けて~」
  情けない私の声が二人にかかる。
「姉上。またお人形ごっこですか?」
「お母様も入れてあげないとかわいそうだわ」
「それよりエミーリエ姉上。剣と水晶を収める土地がわかりました。かなり、遠いです。東の帝都からずっと東の端にある辺境の村落が通じているようです。婚前旅行にはうら寂しすぎます。墓参りの名目が立つかどうか。魔皇帝の別の墓も帝都にありますから」
「ちょっと! 今頃それ言うの?! 全員、会議よ! お姉様も行きますよ!!」
 ぐいぐいお姉様を引っ張る。そんな馬鹿力どこからでるの? とでもいうようなお姉様の顔だ。私だって多少は剣を扱うわ。力ぐらいあるわよ。

「クルトー。シュテファンお兄様ー」
「おや。エミーリエ。その服かわいいね」
「あ。そう? ……じゃなくて! ヴィーが今さら墓参り名目が立たないって言ってるのよ!!」
「それで?」
「それで? ……って」
「さっきからキンキン声が入ってきているよ。ヴィーも記憶が関係しているんだろうね。二人の会話が同時に入ってきいた。まぁ、落ち着こう。俺はそれより怖い事態を想定してたからね」
「怖い……」
「事態……?」
 私たち四人は不思議な顔をしてクルトを見る。クルトが珍しく眉間にしわを寄せていた。思わず、指でなでて直す。
「そんなに大変なことがあるの?」
「まぁね。こちらにおいで」
 クルトが私を隣に座らせる。その動きが優しくてついにっこりしてしまう。そのまま甘えかけて頭をふるふる振る。正気にならなきゃ。
「大変なことって何?」
「ゲッツ。ああ、東の枢機卿ね。彼は隠し子で、コンプレックスが昔からあるんだけど、そのせいか、通りかかる女性を皆というほど、囲いたがるんだ。まだ正妃の座についている女性はいないけれどね。大方、エミーリエにあけてあるんだろうね。仮の婚礼の指輪だけで彼を止められるか、わからない。先程シュテファン兄上から漏れてきた噂だと、かなりやばい。かといって行かないわけにはいかない。両国の友好行事に行くんだからね。教皇の方は落ち着きが多少あるけれど、こっちも似たようなもんでね。エミーリエを絶一人にできないほど危険な状況になってるみたい。いっそ、やる?」
 クルトの意味不明の言葉にきょとんとしてるとカロリーネお姉様がクルトの頭をごん、と派手に殴った。
「乙女になに言ってるの! 二人きりの時ならともかく! ヴィルヘルムもいるのよ!!」
 ここまでいわれて、ああ、とわかった。初夜のことか……と。それは表から見えない。どう防御になるの?
「東では隠し子やら側室やらが暗躍してるけれど、妻は必ず貞操をささげる必要がある。正妃にそれがないなら国民は認めないし、教皇も認めがたいだろうねぇ。古くから続く伝統だから。この国ではモラルが様々でいろんな結婚の形があるけれど。今の一緒に眠っているのだって、一種の結婚だよ。うら若き男女が一緒の部屋で寝てるんだから。東はそれすら許されない。いざ、襲ってなかったら、真っ青だよ。なので事前に、と……」
「クルト!」
 カロリーネお姉様の鉄拳がまた飛んでくる。私はそれを止めてクルトを見る。
「キアラをお母様に預ける?」
「エミーリエ! それは……!」
 私の覚悟の言葉だった。


あとがき
やっとここまで来たか。そうです。次回はというか明日、一線越えます。長い春でしたね。でも本来の婚礼もあるのでまだまだ正式な夫婦ではありません。正月に来るか、この話が、ってな感じです。今日は忙しいのでこの思わせぶりな更新だけで止めておきます。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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