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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(100)

前話

「ああ。ここの戦勝碑ももうぼろぼろだね」
 風で風化した石柱に手を当ててヴィルヘルムは言う。その表情はどんなものなのかは後ろ姿からはわからない。ただ、悲壮感はなかった。
「今にも折れそうね」
 私も石柱に手を当てる。おじい様の生きた証ももう二千四百年も経つと誰の物かもわからない。その存在はヴェールに覆われていた。
「ヴィーはヴィーよ。おじい様じゃないわ。こんなおこちゃま、おじい様なんてとっても言えないわ」
 そう言って背中をバシッと叩く。
「いてっ。暴力反対ー」
「じゃ、デコピンがいい?」
「姉上。妊娠で性格変わりましたか?」
 威勢のいい私にヴィルヘルムは言う。
「別に。これが私よ。クルトはとっくの昔に見抜いていたわ」
「愛の力は偉大だ」
「そう。魔皇帝の愛、もね」
「姉上……」
 そこには苦渋の決断をしてきた歴史を背負ったおじい様が私を見ていた。
「やーい。おこちゃま」
 ピン! とデコピンする。一気に表情が崩れる。
「姉上ー」
 ヴィルヘルムが追いかけて私は速足で逃げる。まだまだ負けないわ。
「エミーリエ様!」
 フリーデが顔を真っ青にしている。それを見たヴィルヘルムが止まる。
「姉上。もう追いかけませんから止まってください」
「あら。そう? 面白かったのに」
「面白かったのはエミーリエだけ。さぁ。ピクニックの段取りをとるよ。明日。牧草地に行って牛を見ながらのんびりしよう。エミーリエはお仕置だよ。危ない真似はしちゃだめ」
 ひょいっと横抱えにして抱き上げるとただ、お姫様抱っこしたかっただけじゃないの? とでもいうような表情でクルトが強制退場させる。するとお姉様がまたねだっている。シュテファンお兄様、がんばって。クルトと見つめあってくすくす笑う。その後をフリーデが必死になってヴィルヘルムの手を引いて追いかけてくる。フリーデも恋に素直になんってきたようね。ただ、仕事は割り切れないみたい。あくまでも付き添いをしようとする。恋人の旅行なのに。はっきり言ってあげたほうがいいのかしら。
「黙っていた方が面白いよ」
「クルトの意地悪」
「俺は奥さんと娘たちが無事ならそれでいい」
「ま。のろけるのね。妻の前でも」
 正式な婚礼はまだだけど、もう私とクルトは夫婦だった。クルトは最近、よく「奥さん」と呼ぶようになっていた。朝だけでなく。その言葉が心地いい。
「そんなに奥さんが気に入ったのかい? じゃ、俺も何かの名称で読んでもらおうかなー。パパ、なんてどう?」
「まだ気が早いわよ。だったら私もママ、だわ」
「ママとパパ。いいねぇ。早く生まれないかな~」
 二人でこちゃこちゃといちゃついていると追いついたフリーデとヴィルヘルムが呆れている。
「ママパパは、お生まれになったらいやおうなしにそうなりますから、旦那様とお呼びしてあげると良いと思いますが」
 僭越ながら、と眼鏡をくいっと上げてフリーデが言う。
「それもいいね。一度旦那様って呼ばれたかった」
「そんなのいくらでも呼んであげるわ。旦那様、明日のピクニックには果物が欲しいわ」
「おや。おねだり用語になるのかい?」
「かも、ね。つわりはややこしいらしいから」
「あ。兄上。僕、食べられる土プレゼントしてあげるよ。よく、妊婦さんは訳の分からないものが食べたくなるらしいから」
「まぁ。土が食べられるの? 食べてみたいわ」
 私が夢想に入るとクルトはぎょっとして見ていた。
「なぁに? 旦那様」
「ほんとに土、食べるの?」
「さぁ。持ってみないとわからないわ」
「つわりを甘く見ていた。帰ったらパパ研修を速攻で受けよう」
「その方がよろしいですわね。果物なら、この地域に珍しいものがありますから取り寄せましょう。ヴィー。手配お願いします」
「はいはい。フリーデのお願いはなんでもかなえてあげるよ。じゃ、手続きに行こう」
「ヴィルヘルム様!」
 仕事半分。恋人半分。のカップルは疾風のごとく走り去ったのだった。
「あわただしいねぇ」
「ねぇ。いい加減おろして」
「やだ」
「旦那様って呼ばないわよ」
「う」
 必殺技を手に入れて私は自立歩行も手に入れたのだった。


あとがき
記念すべき100なのに。いちゃついてる。全員浮かれている。なんでこんなくだりが必要なんだ? でも道筋的にはあっている。と、今日もここは家から更新作業。とんでもない早起きです。六時起床が四時半起床に。でも寝なおしたら起きれない。いや、仕事さえなかったら寝てますよ。でも、またベッドにかじりついたら~と考えたら恐ろしくてさっさと服着替えていました。その後30分ほど寝ようかと思ったのですがもう五時で……。もういいや、と。30分の基準は睡眠段階があと30分でとれるから。今のところ睡眠時間2時間半。あと半あればレムとかでるんですが、この時間だと出ない。点数もでない。この睡眠負債が恐ろしい。今日は帰ったら昼寝しよ。あとで漢検にしよう。朝はちょうどいいらしいから。魚もまだ寝てます。電気つけたらコリパンダたち、隠れ家から出て思い思いの場所で固まってました。というか寝てました。じっとして。白コリは動いたんですけどね。ので部屋は相変わらず暗め。朝の散歩しようっと。朝日を浴びてセロトニンを作るのです。今日はまず、これだけを更新しておきます。もしかして記録が途絶えてから初の50日連続かも。めでたい。ということで更新しておきますね~。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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