見出し画像

【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(55)

前話

 あの事件があってカロリーネお姉様は寝込まれてしまった。いつもの元気なあの声はない。どこか儚げな表情を浮かべて、床についておられた。
「カロリーネお姉様。お加減はいかが? あら、オリヴァー何してるの?」
 体を半分起こしながらカロリーネお姉さまはオリヴァーの書類読みの姿を見ておられた。
「今度、東に行くから護衛にと。なのに、なぜかこの事務書類を渡されて、カロリーネ様の部屋で読むように、とクルト様が……」
 オリヴァーは不思議そうに言う。なるほど、一気に事務方へ入れる気ね。ふむふむと納得しているとお姉さまが言う。
「どうして私のところなのかしら」
「お姉さまが元気がないから差し入れなんじゃないですか?」
「余計な差し入れよ!」
 久しぶりにお姉様の突っ込みが入る。
「お姉様はそうこなくちゃ。でも、オリヴァー様はどうして門兵を志願なさったのですか?」
「それは……。その……」
 オリヴァー様が言いよどむ。
「クルトは運動神経がないとまで言ってましたよ」
 そう言うとオリヴァーは顔を真っ赤にする。ちらり、とお姉様の顔を見て一気に言う。
「カロリーネ様のお姿を見ていたかったのです。高嶺の花ですが、こんな私でも恋はします。一目で恋に落ちました。ですからいつも外へ元気よく出かけられるカロリーネ様がみられる仕事に就いたのです」
「なるほど、父君と思惑が一致したわけですね」
 したり顔で言う私に二人が同時に見る。
「いい加減、本名をお教えしてはいかがですか? オリヴァー様。いえ、ヴァルター・シュテファン・ライゼン子爵様」
「子……爵?」
 カロリーネお姉様の顔に驚愕の色が浮かんでいく。
「ライゼン侯爵様のご子息ですよ」
「まぁ!」
 社交界にあまり詳しくないカロリーネお姉様が声を上げる。私も社交界には詳しくないけれど、大臣の顔ぐらいは知っている。
「これで、カロリーネお姉様が元気になられたら縁談がまとまりますわね。相思相愛。身分的にも問題ない。クルトは側近の一人として目をつけている。なーんの問題もありませんわ。どうぞ、ここでいちゃいちゃしてくださいませ。フリーデ。お姉様と子爵様にフルーツの差し入れでもして差し上げて。お姉様、またお人形ごっこしましょうね」
「ちょ……ちょっと! エミーリエ! おいていくつもり?!」
「はい。恋人たちには甘い時間が必要ですよ。お母様と今度は私がカロリーネお姉様のウェディングドレスのデザインを考えますわ。あとよろしく」
「はい。仰せのままに」
「ちょっと! エミーリエ!!」
 お姉様の元気な声が廊下まで聞こえてくる。心配そうにみていた侍女たちににっこり笑う。
「もうカロリーネお姉様はいつも通りよ。体力を戻せる食事を作ってあげて」
「ありがとうございました!! エミーリエ様!」
「やだ、お辞儀なんていらないわ。いつも助けてもらったのをお返ししただけよ。さて、クルトの執務室で仕事を教えてもらうわ。じゃぁ」
 背中にお姉様の声を受けながら私はお姉様の宮を後にした。


あとがき
はい。更新日です。相変わらず、見てもらえることはないけれど。今は、山場を越えて次の山場へといくところです。つなぎなのでどうしようかなーと思ってます。今日が執筆日なのですが、日本シリーズ企画で日がずれてしまって。二日はあけられないな、と更新。明日も更新して月木土の執筆日に戻そうかな。とは言いつつ、一日一話は書いている。最近二千字になるので困ってます。千字長期連載という名目なので。伏線がいろいろ回収されているので、あとからこの意味のなかった設定が使える、になっています。書いた当時はおいおい、でしたけど。あ。書き加えまた増えた。設定を忘れていた。あとで直そう。ということで明日も更新に来ます。ここまで読んでくださってありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?