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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:煌星の使命と運命の絆~星の恋人達 第十三話 レイナの使命

前話

「あー。もう。きゃぴきゃぴした私には縁の無い話なのに、ついにこのときが来たのね」
 一瞬明るい声を出したかと思うとレイナは真剣にアステリアを見た。
「あの馬鹿がね。煌星の召命というのにとりつかれちゃってね。あちこち調べ歩いたの。そして、最初の召命の地がここ、メリッサ・ナイトシェイドの所で闇と光のバランスをとることを学ぶ、と聞いてあの馬鹿は嬉々としてやったわ。その結果が、悲劇よ。闇に食われてバランス崩して死んでいったわ。この、光と闇のバランスは星の子、つまりアスティとアルにしかとれないの。そういう使命なのよ。私もそこではじめて気づいたわ。自分の使命に。相方の死を見て闇を見て、その上であなた、正当な煌星の召命を受けたアスティを見守る。これが私の使命だったの。あいつは無駄死にして行った。あなたに闇を見せるためだけに……。これがあたしがあなたに近づいた理由よって。なにあんた泣いてんのよ」
 アステリアはボロボロ涙を流していた。痛む胸に手を当てて。小さく謝る。ごめんなさい、と。繰り返し謝る。人の死の上に立った使命ってなんだろうか、とアステリアはずっと自問自答していた。
「馬鹿ねぇ。この子は。そりゃ、最初はアスティを恨んだわ。本当の使命のために死ぬ人間がいるなんて。それがあいつなんて。私から宝物を奪った子なんて嫌いだった。でも、あの街道で出会ったあなたは何も知らない、綺麗な心の女の子だった。この子にあの闇を見せることが怖かったわ。だから着いてきたの。使命だろうがでなかろうが、自ずと着いてきてたわ。あなたを放っておけなかったの。純粋な目をした星の子を放っておけなかった。そしてあなたは闇を見る前に闇を見た。感じた。そして力を暴発させて倒れた。もうだれも失いたくなかった。あなたを失うなんて考えられなかった。私の中であの馬鹿とあなたはもう一緒なの。大事な大事な子よ。もう謝らないで。怒ってないから」
「ほんと?」
 目に涙をためてアステリアはレイナを見上げる。
「ほんと。ただ、あなたにバランスが取れるかどうかが心配なの。もうあんなこと経験したくないから」
「大丈夫じゃ」
 とメリッサ・ナイトシェイドの声が割り入った。
「この子は迷路を解くときに闇と接触しておる。そこで気を狂わせなかったという事はこの子の中でバランスが着いておる、ということじゃ」
 メリッサはそうレイナに言うとアステリアを見た。
「漆黒の波動といってわかるか?」
「漆黒の……波動。闇の力ね」
「闇と言うから誤解が出る。闇は負の要素を纏っておる。漆黒の波動と言えばただの光の流れと理解できるだろう?」
「ええ。さっき、入り口で見た闇も負の要素は何も無かったわ。逆に闇と言われていじめられてると泣いてた。もう、大丈夫だからといえばすっと渓谷の霧が晴れた。あれはどういうことなの?」
「闇を認めた物が闇を制すると言うことだ。漆黒の波動の手前で理解したそなたは試練に受かったという事だ。ただ、バランスの取り方は知っておくべきだね。あとで、教えてあげるから、先にご飯でもお食べ」
「でも、って。レイナ、いいいの?」
「どーしてあたしに聞くの。アスティのためだけに用意された食事よ。あたし達は数に入ってないんだから」
「おや。お前さんはそこまで読むようになったか。安心せい。お前さんも今回の召命の使命を持つ人間の一人だ。皆で、ゆっくり休むと良い。アステリアは後でワシと練習だな」
「はい! 行こう。レイナ。アル。あっちにご飯があるよ」
 すっと勝手知ったる家とでも言うようにアステリアが動く。余りにも自然な動きでレイナもアルカイオスも着いていき損ねた。
「前世の記憶でも持っておるのかね」
「ぜ……前世?! 生まれ変わりってあるの?!」
 レイナが疑う。ああ、とメリッサが答える。
「おまえさんはあの子の姉だった。えらく可愛がってな。召命の旅にやはり着いてきておった。随分早い召命かと思ったが、やはり、今が本当の召命だ。まぁ。漆黒の波動というものを知るには三人とも経験すると良いかもしれぬな。まぁ。ここまで来るのにろくに食べておらんだろう。ゆっくり休憩おし」
 こんな子供姿で言われても納得しがたいところだが、レイナが会ったのならもともとこうなのだろう。アルカイオスはアステリアを追う。
「アスティ。俺も食う」
「ちょっとっ。置いてかないで。このばばぁと」
「なにか?」
「いいえ。お嬢様、と言ったのですわ」
 きゃぴっと返事を返すと慌ててアステリア達を追う。
「まぁ、あの目をしていないだけ、ましか」
 あの死んだ魚のような目をしたレイナはそこにはいなかった。アステリアとアルカイオスがいやしているのだろう。召命は時に恐ろしい環境を招く。それがレイナの時だった。そしてレイナは使命に目覚め、アステリアに会った。これからもレイナはアステリアの良き理解者として側にいるだろう。それだけでいい。彼女の召命はそれなのだから。
 メリッサの視線は決して他人が見ることのない優しさで満ちていた。
 慈愛を持ちながら時として非情な役目をもたらされたメリッサ・ナイトシェイド。彼女もまた犠牲者なのかもしれない。レイナはそんな事を思いながら、食事を始めていた。


あとがき

この物語の続きは後日になります。ストックはここで終わりです。明日から何か別の物語を出してきますね。再掲かもしれませんが。ユメあたりを復帰させようかと思ってます。それが終わったら訳あり。これだけは延々とあるので苦労しない。一話何かを書くと決めてもなかなか書き出せない。次の一手に行くのだけど、思い切りが出ず、緑茶飲んで眠気飛ばしただけ。どの話も第2ステップ。いや、風響だけが第三ステップか。本題に入るのですよね。あと一話で50話なのに。たった千字が書けない。でも自分で書く事に決めている。まぁ、今浮かんでいるシーンがあるからそれを形にしよう。さて、執筆へGoですわ。

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