見出し画像

あなたの心を映しだす、健康と美の守り神。 若宮八幡宮 「美の鏡御守」

あなたの本当の心が映し出される。そんな、まるで魔法の鏡のような神社が京都にはあるという。京阪五条駅を東に向かって10分ほど歩いたところ、五条坂と呼ばれる緩やかな坂を登った左手に見えてくる若宮八幡宮だ。

若宮八幡宮の創建は、平安時代中期の1053年(天喜元年)。後冷泉天皇の勅願により、当初は六条醒ヶ井(現在の西本願寺の北東あたり)に源頼義によって建てられたとされている。しかし1467年(応仁元年)に勃発した応仁の乱によって京都は焼け野原となり、若宮八幡宮も荒廃してしまう。また、豊臣秀吉の時代に入って打ち出された「六条一帯は寺の区域にする」という方針により移転を余儀なくされ、その後も社地は転々としていくこととなる。そして1605年(慶長10年)、近衛家の照高院門跡だった道澄の所有地に、後水尾天皇のご勅願で社殿を造営したのが、現在の若宮八幡宮だといわれている。


じつはこのあたりは清水焼・京焼発祥の地でもあったことから、古くから多くの窯元が立ち並ぶ陶器の街でもあった。やがて1949年(昭和24年)に陶祖神の椎根津彦命が合祀されたことから、若宮八幡宮は陶器神社としても知られ、神社の入り口付近に「清水焼発祥の地」と記された石碑が建てられている。毎年8月7日から10日には例祭である「若宮八幡宮大祭」と「陶器神社大祭」が行われ、陶器で作られた「陶器神輿」の巡行などが行われている。また大祭にあわせて京都を中心に全国から窯元や個人作家が集結する「五条坂陶器まつり」が催されるなど、五条通りの陶器の文化を活気づけるためのイベントも盛んだ。

さて、若宮八幡宮を訪れたら、ぜひ手に入れておきたいのが美人祈願に御利益のある「美の鏡御守」。じつはこのお守り、なんと手鏡になっているとってもかわいいお守りなのだ。では、なぜお守りなのに手鏡なのか?その理由は、若宮八幡宮の御祭神と関わりがあるという。
そもそも鏡は「三種の神器」のひとつであることからもわかるように、日本古来より天皇家の儀式などには欠かせないものだが、お守りの由来となった御祭神である神功皇后はとして知られる、まさに才色兼備な女性だった。たいへんな美貌の持ち主であるうえ、その美しさは外見だけにとどまらず、心もたいそう美しいお方だったといわれている。伝えられる逸話によれば、息子である応神天皇を身籠もっているさなかに玄界灘を渡って新羅との戦を指揮、新羅のみならず百済、高麗までをも服属させたという強き女性だったいっぽうで、直後に産まれた応神天皇を深き慈愛をもって立派に育てたことでも知られている。「いつまでも若々しく美しい」「政治や戦に強い」「子育て上手で賢い」。もしかしたら、現代女性のロールモデルとなるような女性だったといえるかもしれない。こうした逸話から若宮八幡宮は「美の守り神」として崇められ、そのご利益を授かろうと多くの女性たちが訪れる場所になったのだそうだ。


その点からも「美の鏡御守」が手鏡であることには、深い意味が込められていることがわかる。カバンに入れて毎日持ち歩く鏡に自分の姿を映すことで、身体、心、顔の状態を知ることができる。その鏡をお守りとすることで、自らをあらためて見つめ返し、自身の美や健康に気を配ることにもなるため、それが美人祈願のご利益につながっているのだ。
八幡様の使いであり平和の象徴でもある鳩が描かれていて、見た目もピンク色のデザインでとてもかわいい。ふだん使いできるので、自分用にはもちろん、友だちや家族へのお土産にもピッタリのお守りだ。

鏡といえば、境内には御影石に大きな鏡を嵌め込んだ「美貌の碑」と呼ばれる大きな鏡のついた石碑が置かれていて、その碑には「身も心も美しく」と記されている。若宮八幡宮を訪れた際には「自分の心が映し出される」といわれるその鏡を覗いてみてほしい。



若宮八幡宮は小さな神社ではあるが、そのほかにも見どころが多い。本殿は「前室付流造」と呼ばれるめずらしい構造で京都市の指定有形文化財となっている。また陶器神社らしく陶製の獅子と狛犬もほかではあまり見られないもの。また、江戸時代に架けられた立派な石橋が架かる庭も美しく、春には桜、初夏には菖蒲や紫陽花、秋には紅葉など四季折々の花を咲かせる。また孝明天皇などの胞衣(えな=胎盤のこと)を埋納したとされる「御胞衣埋納所」があるほか、小さな「胞衣塚」もある。
くわしい話は社務所のインターホンでお声がけして、女性宮司さんに直接聞いてみると良いだろう。わたしたちの取材にも、とても気さくかつ丁寧に神社にまつわる興味深いお話をしていただけた。宮司を務める松井さんは「参拝に来られたらぜひお声がけいただけたら、どなたでもお話しさせていただきますよ」とおっしゃっていたので、みなさんもぜひとも積極的に話しかけて、いろんな質問をしてもらいたい。御祭神や御由緒、境内のさまざまな建物や社などについて、くわしい謂れを知ってから想いを込めてお参りすれば、きっとより良いご利益がいただけるはずだから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?