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チャンスはピンチの顔してやって来る。捨てる"ハワイ"に 拾う"ハワイ"?

 

ハワイ大好きな私は、ハワイの仕事をしてみたい…あわよくば、仕事でハワイに行けないか考えていました。
夏が来ると思い出すエピソードがあります。
私の仕事史上ベスト5に入る不思議な経験で、チャンスの神様はピンチの顔してやって来ることを学びました。

信じられないトントン拍子! 大チャンス到来!?

14年ほど前。ちょうどランニングが女性に流行り出したこともあり、私は、<大好きなハワイ×流行りのランニング>をテーマとしてホノルルマラソンを軸に、観光ガイドとは一味違うムック『心と体に効くハワイ』を企画しました。

まずはハワイ州観光局を訪れ、ホノルルマラソンについて相談を開始。
観光局の方がホノルルマラソンの事務局(当時はアサツーディケイ)の担当者を紹介してくれ、そこからトントン拍子に話が進み、なんとJALさんから、この『心と体に効くハワイ』企画に多額の資金、取材者のハワイへの渡航費、販路にも協力、という信じられないくらい破格なスポンサードを頂けることに!(もう時効だと思うので実名記載させて頂きます)
あとは出版社を決めるだけになりました。(出版コードがないと一般発売できないため)

一般的に、ムックや書籍の出版には、出版社が負担する制作費と販売数見込みの厳しい条件のクリアが必要ですが、今回は金銭的な協力が既に約束されているので、版元にとっては通りやすい企画のはず。
というアドバンテージを持って、懇意にしている某出版社に提案すると、担当者も経験からのカンでしょう、これは良い話!と社内稟議を即スタート。

来週からいよいよハワイに行ける!…はずが…

一点だけ、ヒヤヒヤ問題がありました。
市場面として、発売は夏のトップシーズンの前6月下旬が理想で、そのためには5月初めまでにハワイ取材に行く必要があったのですが、稟議スタート時点で既に4月に入っていて、最終決裁が降りる役員会議は4月末という綱渡り状態でした。

本来は、最終決裁が降りないと制作は始められませんが、最終決裁の4月末まで待っていては5月初めの取材の渡航手配が間に合わない!ということから、出版担当者さんの判断で「役員会議でOKが出る(NGになる理由がない)」前提で、ハワイ取材の準備を始め、フライト手配はJALさんが全て整えた上で役員会議の終了を待つばかり、となっていました。

一秒でも早く始めるために、出版担当者さんは、役員会議当日、私と他スタッフを出版社内で待機させるほど、全員が決裁確定を信じていました。
ところが…!

待機中の私に、出版担当者さんが青ざめた顔で伝えた結論は「決裁降りずNG」。理由は「制作時間が短かすぎる」。

正直、担当の彼も、キツネにつままれたような、合点がいかない、悔しそうな表情でした。確信あって相当な根回しをしていたはずなのに、最後に来てこんな結論は、誰もが全く予想だにしていませんでした。
「制作時間が短い」という理由は、もっともな部分もありますが、実働する現場は想定内で可能と判断していたので、関係者全員にとって理由が釈然とせず、衝撃的なものでした。
他の出版社の可能性も考えましたが、もはや時間切れ…。諦めきれないJALさんとアサツーさんから責めを負わなかったのが、唯一の救いでした。

ハワイにふられた…。
企画が通らないことはありますが、万全な条件で進んでいたにもかかわらずこんなシャットアウトは、阻まれた、という印象。
不可解すぎて、何か大きな力が働いたとしか思えず、私は勝手にハワイから嫌われた感覚になっていました。

拾う"ハワイ"現れる!

ホントは今頃ハワイに取材に行ってたのになぁ…と思っていた矢先。
映画『フラガール』の宣伝担当者Yさんから連絡が。

ハッ!そうだった!

実は、ホノルルマラソンの相談で行ったとき、ハワイ州観光局の方が『フラガール』という映画の製作が始まることも教えてくれていました。
そのとき私は、映画とタイアップした「フラ本企画」を閃き、映画会社に企画書を送っていたのですが、そこから5か月ほど経過していました。

「これ(フラ本企画)、絶対にやりましょう!全然連絡くれないからどうしたのかなと思ってたんですよ!」と映画会社のYさんは既にノリノリ。

ただ、閃きの企画書から時間が経っていたのには、ワケがありました。
「フラ」には、それまで"高齢女性の趣味"のイメージがあり、出版界では売れないコンテンツという先入観が根強く、難色を示す出版社があったため、私はイマイチ積極的になれていなかったのです。

しかし、第一関門である映画会社のOKと協力態勢、Yさんのノリノリに押されるように出版社への提案を再開。とはいえ、乗ってくれる出版社があるのだろうか…。
アッ!目の前に!

私は「ホノルルマラソン企画」が頓挫したとき、諦めきれずに1社だけ他の出版社(実業之日本社)にダメ元で相談していました。マラソン企画は時間切れ断念でしたが、担当者Tさんがハワイにもフラにも興味を持っていたことを思い出し、あらためてTさんに「フラ本」企画を提案。
「今またハワイブームが来ているし、このフラ企画なら売れる!」というTさんのカンどころもあって出版が確定しました。

ハワイには行けなかったけど、大きなリターンが来た!

映画『フラガール』公開に合わせて、オフィシャルのフラ本『あなたもフラガール』が刊行。
スパリゾートハワイアンズでのDVD撮影、出演されている松雪泰子さん、蒼井優さん、南海キャンディーズ・しずちゃんへのインタビュー取材、映画のモデルでもあり現在もフラダンサーの振付けや育成をされているカレイナニ早川先生への取材。
本場ハワイではなく"日本のハワイ"でしたが、携わる人々の熱い心意気に触れ、大きな実りある仕事でした。

そして、映画の大ヒットのおかげで『あなたもフラガール』も重版を7回も重ね、「フラは売れない」という前例を覆すヒット作に。
その後も『フラガール』は舞台化されたり、東日本大震災からの復興の象徴になるなど、スパリゾートハワイアンズのフラが話題になることが多く、そのたびに本も売れ、フラガールパワーをお借りして、数年にわたり売れ続ける予想外の大化け作品になりました。

売れ行きのおかげで、1作目の発売から8年後にシリーズ2作目も刊行され、
結果的に、私個人にとっても、名実ともに息の長い作品になりました。

ピンチに逆らわない その中にチャンスの種がある

もし片方の選択肢だったらどうだったのか、は誰も知り得ず、比較もできないので「たられば」は好きではありませんが、もし『心と体に効くハワイ』が決定していたら『あなたもフラガール』はできていなかったかもしれません。
頓挫したからこそ、そのおかげで、フラ企画に興味ある出版担当者に出会い、実現ができました。
そもそも、ホノルルマラソン企画を思いついたからハワイ州観光局に行き、そのタイミングで映画製作の前情報も入手できていたことも大きいです。

何が幸いするかわかりません。
チャンスは"いかにもチャンスな"顔しているとは限らないようです。
逆もしかり。

もう一つ私が得た教訓は、
「思いもよらぬ事態が起きたときは、逆らわず、ムリをせず、ふてくさらず、流れに身を任せる」

思いもよらぬ、理不尽さえ感じる出来事に遭遇すると、悲観的になってしまうものですが、きっと何かをもたらされるキッカケかもしれない、と思うようにしています。

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