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院内ヒヤリハット報告書をフィードフォワードに生かすために!


そういえば、とまた思い出したのですが、私が老健施設勤務時代に、全老健協認定の「介護老人保健施設リスクマネジャー」資格を取得、そして集合研修を受け、「福島県身体拘束廃止推進員」なる役目を拝命していました(2011年頃か?)。リスクマネジメント委員会を立ち上げ、施設をあげて勢力的に取り組んでいたのを覚えています。

独自の「転倒・転落アセスメントシート」を作成したり、定例委員会を開いて、データ報告・分析を行ったり、、

中でも、「ヒヤリハット報告書」から、実際に都度各部署招集し、現場にてシミュレーションも行って、再発防止に取り組んでました。
ただ、身体拘束は全面撤廃という旗印のもとの運営でしたから、事故件数がなかなか減らず、苦慮した記憶があります。



ヒヤリハットの視点


「ヒヤリハット」というのは、事故が起こる以前の、業務中に「ヒヤッ」としたり「ハッ」とするような事象のことを指します。

この割合を示す時に、「ハインリッヒの法則」が有名ですが、それが発表された40年後の1969年に、約175万件を超えるデータから導き出された「バードの法則」というものがあります。これによると、「ニアミス:物損事故:軽傷事故:重大事故=600:30:10:1」という比率が示されています。つまり、1件の重大事故の裏には10件の軽い事故があり、さらに軽い事故の裏には30件の物損事故があり、そしてその裏には600件のニアミスがあるということです。


公益財団法人 日本医療機能評価機構の「医療事故情報収集等事業」においても、今年2021年1~3月のヒヤリ・ハット事例の内訳報告がされています。(事例情報報告参加医療機関は668施設、病床数合計は 212, 443床)

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このように、重大な事故が起こるかなり未然のニアミス段階をいかに共有化して、チームで生かしていくかが大事になります。

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報告書が集まるようにするには


ところで、この肝心の「ヒヤリハット報告書」がなかなか集まらない、、という悩みがよく聞かれます。

もしきちんと提出し集約するとすれば、忙しい業務上、残業ともなりうるような追加の作業ともなります。まずこれをいかに簡略化するかがポイントですし、

前提として、「事故・ヒヤリハット報告書を出す」=いけないこと,面倒なこと、というネガティブなイメージを払拭しなくてはいけません。ましてや、犯人捜しのようになってしまえば、いくらチーム内で決め事となっていても、人間の行動としては、自ずと提出することから遠ざかっていきます。


そこで、報告書を書くことは良いことだ!ヒヤリ申告大歓迎!といったプラスの意味付け。むしろそれが加点評価となるような仕組みづくりが必要でしょう。 

また、「私さ、昨日こんなことがあったんだよね」のように朝礼のネタとして披露し(経験シェア)、他のメンバーも自分ごととして捉えるきっかけにしても良いでしょうね。


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当然、病院の専門やステージと介護保険施設では、リスクの質も、事情も変わってくるでしょう。

しかし、先の日本医療機能評価機構の報告においても、医療事故の件数は年々増加しており、10年前と比較しても実に倍(!)となっていることが分かります。

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重篤なケースであれば訴訟にまで至る案件もありうるなど、医療安全管理者としては、院内教育を含めたリスクマネジメントに苦労されるところだと思います。


フィードフォワードに生かすって?!


コーチングにおいて、「フィードフォワード」という手法があります。これは、

過去や現在よりも未来に目を向け、その未来に働きかけることでより多くの価値、成果、幸せを生み出すことができるとする考え方

この思考を前提に、「現状にとらわれてしまいがちな部下や後輩、配偶者や子供に対して、コミュニケーションや観察を通して相手の状況を把握し、相手に起きている出来事やそれにともなって体験している感情を受け止めた上で、その人が自分のゴールに意識を向けて行動できるように促す技術のこと」

欧米ではごく一般的に行われている人材育成技術のフィードバックの良さを生かしつつも、欠点や改善点の指摘に終始することを回避し、未来に目を向けてより具体的な変化を起こしていくことに重点を置いている、よりポジティブで生産的なコミュニケーション技術。

一般社団法人フィードフォワード協会HPより引用)

つまり、組織として「ヒヤリハット報告書」は未来の安全をつくるためのとてもポジティブな活動であると位置づけることと、未来視点から逆算しての今の動き方です。

元よりリスクに溢れた環境下において、可能な限り抑制化の方向にいくのではなく、人がすることには一定割合ミスが付き物という前提で、いかに未然に防げるか。院内教育のスタンスにしても、ミスをとがめるのではなく、安全の意識をもった上で、積極的なトライが「善し」とされるような風土づくりがまずは大事なのではないでしょうか。


[ALTURA オンライン事業部 鯨岡エーイチ(講師,PT,プロコーチ)]



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