昭和のケーキは、

時はもう12月25日である。
クリスマスケーキの話題がニュースに挙がっていたりするのをみて、「昔のケーキはなあ、、、」などと思い出してみたりしていた。

最近のケーキは、本当に美味しくなったと思う。
今ではデコレーションケーキには、生クリームや生のフルーツが当たり前のように使われているけど、昭和末期の頃の私の記憶の中のデコレーションケーキは、そのようなものではなかった。

黄色っぽい白だったり(プレーン?)、茶色いチョコレート風味だったり、いくつか種類はあるが、今のような柔らかい生クリームではなく、硬いバタークリームのものばかりだった。固形のチョコレートのように硬いが、チョコレートのように美味しくはない。表面が硬いので、蝋燭をさしたり、包丁で切るときにも、必ず周囲が崩れた。

そして、中のスポンジに挟まれているものも、生クリームやフルーツではなくて、甘ったるいべたべたしたジャムかシロップのようなものだった。

そして、ケーキの上には、たいてい、サンタや動物の砂糖菓子の人形が乗っている。これもたいして美味くない。マジパンとやらいうような洒落た代物ではなかったはずだ。大人に「お人形はあげるね」などと言われても、たいして嬉しくもない。「これも食べなきゃいけないのか、、、」とテンションの下がる贈り物であった。

ただ、見た目は可愛らしくてキレイで「ほしいな、食べたいな」と思わせられるものがあった。

見た目は美味しそう、食べたい。でも実際食べると、たいして美味しくなくて、たくさん切り分けてもらってもちょっとしか食べないですぐに飽きて嫌になってしまう。まあ、今のケーキと違って日持ちがするので、何日かかけて少しずつ食べてもたいして劣化はしないのだけど。
そんな存在だった。昭和のケーキは。

漫画などで登場人物がケーキに大喜びして、美味しそうに食べているシーンなどは、いつも信じられない気がしてみていた。「子どもはケーキが好き」みたいな俗説も、絶対嘘だろう、と思っていた。私が好きだったのは、デコレーションケーキの見た目だけだ。

ところがいつのころからか、ケーキに生クリームが使われるのが当たり前になって、本当に美味しいと思ってケーキを食べられるようになった。
蝋燭も簡単にさせるし、包丁でもキレイに切り分けられる。
ケーキが見た目だけではなく、本当に楽しいものになったと思う。

ただ、今のケーキは、昭和のバタークリームケーキのように頑丈でもなければ日持ちもしない。
繊細なものは、大切に扱わなかったり、適当に放置していたりすれば、大きく価値を損なうことになる。
当たり前にケーキが食べられる時代になっても、大事ではないということではないんだね。



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