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「ハーバード日本史教室」 佐藤智恵

ベストセラー「ハーバードでいちばん人気の国・日本」の著者 佐藤智恵さんが、ハーバード大学の10人の教授にインタビューして10の講義方式になっている本です。

作者はここ数年何度かハーバード大学を訪問して、学生や教員が日本から何を学んでいるかを取材しました。
毎年900人の学生がトヨタやJR東日本テクノハートなどの日本企業の事例からリーダーシップの本質を習得していました。

特に学生達に人気だったのは
「三菱グループの創始者 岩崎弥太郎」「世界初の先物市場、堂島米会所と徳川吉宗」
「広島・長崎への原爆投下とトルーマン」など日本史に関連するテーマが多かったようです。

ハーバード大学は1636年 創立で、日本で言えば三代将軍徳川家光の時代です。

日本人が初めて留学した1872年 明治の官僚・政治家の金子堅太郎は帝国憲法や日露戦争の講話外交に貢献しました。
セオドア・ルーズベルトとは同じ卒業生ということで意気投合して親交を深めたようです。

ルーズベルトは日露戦争を終結させる仲介役を引き受け、日本に有利な内容のポーツマス条約を締結しました。
これは金子堅太郎の影響があるのではと言われているようです。

ポーツマス講和会議に参加した小村寿太郎もハーバード大学卒業生、また薩摩藩士の松方乙彦は留学中親しくなったフランクリン・ルーズベルトの対日政策に影響を与えたと言われています。

山本五十六も同時期の留学生で誰よりもアメリカの国力を認識していたようです。
そして山本五十六はポーカーの名手だったことでも有名だったようです。

「武士道」「忠臣蔵」「メイドインジャパン」など取り上げる他「終戦の詔書」を読み上げたり、和食の奥深さなども語られています。

大学に日本研究所が設立された頃、田中角栄はアメリカにおける日本研究を支援する方針を打ち出し1000万ドル(当時の30億円)提供したといいます。
これによって日本研究が大きく進展することになったのは間違いないです。

この本では日本史、環境史、経済学、経営学、文化人類学、政治学 各分野の大家である10人の教授から話を聞いていますが、どの教授も日本を熟知していて日本の良いところ悪いところ世界から見た日本はこうあるべきだということを指摘しているのがとても的を得ていて気持ち良かったです。

そして日本が世界に貢献するために取り組むべきことを示唆しながら、世界に日本という国が存在してくれてよかったと心から言ってくれています。

何より日本史でも教えてもらったことのないことをたくさん知ることができたのは興味深いことでした。

  目次

1 教養としての「源氏物語」と城山三郎
2 「忠臣蔵」に共感する学生たち
ハーバードで脚光を浴びる幻の貿易都市 十三湊
3 龍馬 西郷は「脇役」 木戸 大久保こそ「主役」
4 ハーバードの教授が涙する被災地の物語
5格差を広げないサムライ資本主義
6 渋沢栄一ならトランプにこう忠告する
7 昭和天皇のモラルリーダーシップ
8 築地市場から見えてくる日本の強みと弱み
9 日本は核武装すべきか
10 世界に日本という国があってよかった


明治維新からまるで別国のように変革していった日本ですが、現在明確な目標がない文明大国となってしまっているのかもしれません。

ハーバードの授業のような日本史の取り上げ方は是非日本でも参考にして欲しいと思いました。



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