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ほんのわずかな山行記録 11

まだ暗い中朝飯の準備

不思議な感覚

2012年7月30日
2時過ぎに目が覚めた。
オジサンの寝言で1回起きたけど6時間くらいは寝た。

当然まだ真っ暗な中、飯の準備をしながらテントの中を片付ける。
暖かくて寝袋が邪魔なほどだったが、初テント泊は快適だった。

ご来光を稜線で拝むべく、4時過ぎに出発する。まだ薄暗くてよくわからないが天気は良いようだ。

ヘッドランプを点けて樹林帯を登っていくと、木々の隙間からうっすら明るくなってきた東の空が見えた。
天気は良く雲海が広がっていて、空はオレンジ色に染まりつつある。

「やべぇ、早く森林限界を超えないとご来光が拝めないぞ」
気は焦るがペースは乱したくない。この日は13時に広河原に下りるという予定。時間的には余裕があり、9時間ほどの長丁場ということもあってペースは抑えめにいきたい。昨日のこともあるし。とはいえご来光を拝むためには時間がない。息を荒げて登っていく。急な登りを進むと前方が明るくなっている。来た!稜線だ!明るくなっているところに着くと視界が開けた。しかし、開けたのは西から南の方向で東側はまだ樹林帯に遮られて見通すことができない。一刻も早く樹林帯を抜けきりたいところだが、西側の景色が足を止めさせた。
そこには南アルプス主脈の北岳、間ノ岳、農鳥岳の白峰三山とその巨大な尾根が静かに、威厳をもって並んでいた。
「おーーーーっ!」思わずデカい声を上げる。南西方向には富士山も雲海に浮かんでいる。大きな岩の上に立ち、三山の雄大な姿を眺めながら何枚か写真を撮る。いやーーー、すげぇーすげぇーを連発しながら興奮状態で先に進む。ペースも何もあったもんじゃない。息を荒げながらやっと樹林帯を完全に抜けたが太陽はすでに雲海の上に浮かんでいた。
ご来光の瞬間こそ見逃してしまったが、それでも目の前の景色に見とれてしまった。まるで別世界にいるような感覚になる荘厳で神秘的な景色。

現れた白峰三
山右から北岳、間ノ岳(北岳に隠れてる)、農鳥岳
雲海が右側に流れ込んでいるあたりに南御室小屋がある
神の造形

なんだこれは、、、
こんな景色を自分の目で見ることができた幸運を何かに感謝する。

自然が作り出す造形にただただ感動し、ひれ伏すしかない。そんな気持ちにさせる特別な瞬間。
こうやって見ている間にも目の前の造形はゆっくりと変化していて、その様は何かの意志を感じる。

でもまだだ。

この先はもっとすごいことになっているに違いない。
今日体験できる最高のことはまだ先にあるはず。
興奮を抑えながら黙々と進む。

砂払岳を過ぎて少し下ったところに薬師岳小屋があるが、スルーして薬師ヶ岳に進む。
砂礫に足を取られながら急坂を10分ほど上ると、広く開けた薬師ヶ岳山頂に着いた。

東側は大きな岩が立ち並び相変わらず見通しは良くないが、西側の白峰三山はさらに迫力の姿を見せている。
進む方向を見ると雲海に浮かぶ砂礫の道が観音ヶ岳へと伸びている。

東側の開けた景色を求めて少し進むと壮大な景色が広がっていた。
どこまでも広がる雲海は、強烈な陽の光が生み出したコントラストによって立体的に浮かび上がり、塊感のある造形。
上層には青空をバックに薄い雲が縦横無尽に広がり、雲海と上層の雲の狭間には太陽がこれでもかと輝きながら浮かんでいる。

カメラを構えるがどう撮ればこの景色を収めることができるのか、このスケール感を伝えることができるのか。とにかくやみくもにシャッターを切る。

これがアルプスなのか。こういうことなのか。恐るべし、アルプス。

薬師ヶ岳
薬師ヶ岳山頂
観音ヶ岳に続く砂礫のトレイル

ところで、、、
薬師ヶ岳を登りきった時、不思議な体験をした。

不思議というか、何とも言えない感覚がこみ上げてきたんだけど、それが言葉でうまく説明できない。
谷川縦走でも似たような感覚があったものの、ちょっと強さが違うというか、こみ上げ方が違うというか、、、

腹の底からこみ上げる、興奮を超えた興奮というのか、、、

こみ上げるその感覚はブワーッと全身に広がって髪が逆立つような、グワーッと目が覚めるような感じで、、、(語彙w)

と、とにかく、、、それがものすごくきもち良くて、力がみなぎってくるという感覚だったんです。

感動しすぎるとこんな感覚が襲ってくるのでしょうか。
8カ月空いたことによる禁断症状がそんな感覚を呼び起こしたんでしょうか。

この時の感覚が忘れられなくて、いまだに不思議なんです。
何だったんだろう?って。

またいつかあの感覚に出会いたいもんです。

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