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目指せ!プロパン屋~ミキシング編~

ミキシングとは

パン生地を作る際の一番重要となる部分ではないかーと。

ミキシング方法にも機械の違いや手ごねなど含めると様々な手法があります。
一番のポイントは、求める食感にあわせて生地を捏ね上げること。

捏ね上げる(ミキシング)というのは、「グルテンをつくる」ということとほぼ同意義です。
そのグルテンがどのくらい必要なのかでミキシングのかけ具合が異なります。

もう少し掘ってグルテンというものはをざっくりと。
小麦粉中に含まれるたんぱく質の
「グリアジン」と「グルテニン」
の2種を叩いて伸ばしてをすることで、
「グルテン」という網目構造になります。

イメージはネット(グルテン)の中にポール(二酸化炭素CO2)が引っ掛かって、外に出られないという感じです。

この網目が粗いとボールが網目に引っかからず、たくさんボールが集まった場所ができたり、外に出て行ってしまったりします。

ちなみにたくさんボールが集まった状態を利用したのが、フランスパンですね。気泡がとっても大きいです。その代わり、ボールが逃げ出しやすいので、生地の扱いが難しいぱんとなります。

食パン、正確にはうちの子の話をすると、
「もちこ」は網目をできるだけ細かく
「さくお」は網目をそれほど細かくしすぎず、ほどほどに。
となっています。
これは、食べ方や食感を考えたとき、もっとも美味しさを引き出す網目の状態を作り上げています。
その微妙な変化はミキシング10秒で大きく変わるため、アルテの製造班は音を聞き、生地の動きを見て、その微妙な時間を見極めています。
次はさらに深いお話になります

混ぜる順番

ミキシングは単純にいうと、
一般的な粉もの(小麦粉・砂糖・塩など)や液もの(水・はちみつ・バターなど)
アルテの場合他に中種・湯種も一緒にミキシングします。

そもそも、アルテ方式が珍しいので、ここでは一般的なお話をします。

バターなど油脂を使う場合は、先に入れるとグルテンの形成を阻害するため、内相(クラムという白い部分)が粗くなりやすくなります。それを防ぐために、生地をしっかり作って、十分なグルテン形成になってから、油脂を入れ、生地処理性や伸展性のアップ、美味しさをアップしていきます。

では、スタート地点に戻り、ミキシングする順序を考えていきます。
★中種法・内相が細かい食パンの場合
○低速ミキシング:生地の均一化をある程度の範囲で目指す工程。
・生地を作るイメージではなく、混ぜるイメージ
①液ものと粉ものを合わせる。
⇨ミキサー内で生地が飛び散らないようにペースト状にします。
②ペーストと湯種(できれば何等分かする)を混ぜる。
⇨生地量が増える前に湯種をある程度ミキシングし細かくします。
 ①の段階で入れるとミキサーの底にへばりつきやすいので注意
③さらに中種を入れ、混ぜていく。
⇨生地がある程度均一になるまで低速を続けます。
 ②の段階で入れると、湯種と戦い、ペーストがミキサーから溢れることがあります。

○中速ミキシング1:生地をしっかり艶がでるまで作る工程。
・生地を伸ばしてすぐ割けずに、薄い膜がある程度できればOK。
(とても薄く綺麗な膜を作る必要はありませんが、手を抜くと内相は粗くなります。)

①ある程度均一からしっかり均一になり、フックに絡むようになってきたら第一段階。
⇨この時に湯種や中種がなかなかなくならない場合は、細かくちぎって練りこんでいく。

②音が変わり、ミキサーの壁にペチンペチンとぶつかり出したら第2段階。
⇨ほぼゴールですが、まだもう少し。そこから生地が完全に離れればもう終わりのサイン。(水分量によって大きく変わるため、生地を伸ばして出来を確認)

○油脂投入:生地が出来てからグルテンの網に油脂を入れていく工程。
・ミキシングしながらでもOK。油脂は常温に必ず戻しておく。
(冷たいままだと生地も冷え、入りも悪い。かといって液状は生地を緩くするため要注意。)

①時間に余裕があれば、低速で混ぜた方が飛び散りも少なく、綺麗に混ざっていきます。

○中速ミキシング2:油脂と生地を均一化し、もう一度生地を作り上げる工程。
・一度生地はできているため、すぐに終わる。中速ミキシング1と同じくらいまでグルテンが形成されればOK。(油脂がなくなっていることを確認すること)

①にゅるにゅるとミキサーの側面を生地が滑っていくが、気にせずに。
⇨にゅるにゅる感がなくなり、均一になったら次の段階

②均一になり、しっかりペチンペチンと言い出したら、グルテンを目標まで作り上げます。

○高速ミキシング:グルテンを目標まで作り上げる工程。
・かけすぎると、ブレイクダウンするため、要注意。伸展性が上がり出し、生地の表面が筋もなく艶やかになったらグルテンの出来を確認し、OKなら終わり。

①ペチンペチンからピチャピチャに。
⇨ペチンはまだグルテンに余裕がある状態。ピチャはグルテンが少し壊れ、水分が出てきている状態。

②ピチャになったら、ミキシングを止め、生地をあげます。
⇨ここまでくると伸展性も程よく上がり、艶がしっかりと感じられ、筋感は一切なくなる。

*ストレート法の場合は、湯種や中種の項目を抜いて行うこと。
*求める食感がサクサクや軽い場合はピチャになる前であげる方が良い。グルテンを作りすぎると歯切れが悪くなります。
*手ごねの場合は中種・湯種は細かくちぎって、机を使い擦り切るように練りこんでいく。(バターも同様にうりゃーと刷り込むイメージ)

温度について次の次とします。

ブレイクダウンについて

グルテンは形成後さらに不可がかかると壊れていきます。(網が裂けるイメージ)

それにより、形状を保てなくなり、網から水分も漏れ、水状になった生地をブレイクダウンした生地といいます。

グルテンは壊れた場合再形成しないため、とてもベタつく、生地になってしまう。(がんばれば形にはできるので、手粉を多く振流のが吉。内相はかなり粗く、そんなに美味しくはない。)

湯種などタンパク質含量を減らすものを多く入れるとブレイクダウンが急激になりやすい。ピチャという音がなく急にブレイクダウンする場合もあるので注意。

防ぐためには、音と生地の伸び具合、温度管理が重要。
日頃から生地の動きをこまめに見ておくと、危ないなというのが雰囲気でわかるようになります。

温度管理

温度管理はパンの良し悪しを決めるとても重要な部分なのですが、ミキシングにとっても非常に重要となります。

まず、食パンの場合、生地の捏上温度の最終目標は28度。26度を割るとかなり影響が大きくリカバーが難しくなります。
温度に影響を出すものを考えていきます。

○温度を下げる要因
・気温
⇨冬場は特に、早めに暖房をつけ22度できれば24度くらいの室温を目指しましょう。

・ミキサーボール
⇨金属はつめーたいので、触って明らかに冷たい場合は温水で温めてあげましょう。

・ドウフック
⇨ミキシングのためのフックも生地に直接触れるため、温めてあげるといいです。

・油脂
⇨朝の仕込みの時は冷えていることが多いですが、せめて常温に戻しましょう。

・仕込み水
⇨最終的にはこれを温度上げるまでが限界となりますが、40度を超えることはやめてください。パン酵母の限界温度は40度ちょっとのため、活性が落ち、パンが膨らまなくなります。

・その他素材
⇨この辺は温めることはできませんが、常温にしておくだけでだいぶ違います。

○温度を上げる要因
・気温
⇨冷房で調節しましょう。ただ、パンは40度を超えなければ元気です。しかし人間が不調をきたすので30度以下に絶対にしましょう。

・ミキシングしすぎ
⇨高速だと生地量によりますが30秒で1度近く上がることもあります。それを見据えて温度管理しましょう。

特に低温捏上は工程が遅れる他、見た目や食感に違いが出る場合がありますので要注意です。アルテの場合、ミキシング時間が極めて長いので、温度が上げやすく調整もしやすいので、下がりにくくなります。

それでも、冬場は低めに出るので、そこからまた調整を重ね、ホイロまでに希望温度まで上げていきます。

また、温度が低いと生地がしまっています。そのため、いつもより生地の上がりが早いなとか、思ったら、温度をチェックして、管理をしっかりしましょう。

水の硬度

硬度とは、水1Lに対して、マグネシウムイオン・カルシウムイオンがどれだけ含まれているかを表したものです。

そのうち120mg/Lを超えたものを硬水・それ以下を軟水と分けているようです。

その辺は僕の得意分野ではないのでおいておきます。
さて、この硬度が生地にどの様な影響を及ぼすのか考えます。

一般にパン業界で言われるのは、硬度が高い方がパンの味が美味しく焼きやすい。

これは、開発者としては当然の内容ではありますが、では軟水だとダメかと言われるとそうでもありません。

イメージとしては焼きやすさランクを軟水が0とした時、1〜2にアップするよってくらいなものです。ただ、大量の生地を焼く場合や、同品質のパンを焼く場合は非常に重宝します。

日本では、水道水は基本的に軟水ですが、その軟水を使って硬水の力を持たせる方法はあります。それを「イーストフード」(生地改良剤)といいます。フードの配合にはマグネシウムやカルシウムの化合物が含まれています。その力を借りて、イーストの能力をどうこうというよりも、生地の締り具合や発酵力を安定させること、手助けをしています。

特に生地が非常にだれやすい、フランスパンの様なグルテンの弱い生地には効果は絶大で、水道水が硬水であるフランスでは適している水となります。

それでも、V.Cやモルトエキスを足すことでより安定性をあげています。

生地に水をしっかり入れたい場合は、硬度の高い水の方が入りやすくなります。(生地がしっかりするため)ただ、限度はあるので、数パーセントの効果になります。
例えば、イーストフードを1%添加したら、水が1%入る様になるのかと言われると、難しいと答えざるを得ません。その様なことをしたいのであれば、加工でんぷんなど水を吸収することに長けている物質を使うことになります。

話は戻ってミキシングに戻ると、軟水はしっかり練りこむことが必要です。それに対し、硬水の場合、ミキシングが早く上がりやすいので、注意も必要です。ここでも、生地の叩かれる音や生地の動きなどを見て判断をしていかないといけません。

生地の取り上げ方

お家の卓上やお店の大きなミキサーではいろいろ変わるところではありますが、生地を取り上げているところ見たことありますか??

アルテの食パンでは、生地は取り上げることのできる柔らかさのパンはほぼないので、流し込むタイプで取り上げています。

ただ、そんなに生地が多くなく、水に近い生地でなければ、ヒョイっと取り上げる事も可能です。

注意を先に話しておきます。
〇生地を壁や床、その他の場所にくっつくことがあればやめる。
〇重すぎる場合は、腰へ負担がかかるため、無理をしてはいけない。

この二つだけは守りましょう。

まず、生地を取り上げる場合、フックから生地を綺麗にとります。
この際は、水を使ってあげると、間に水が入り込み、手やドレッジ(カード)などに付着する度合いが大きく下がります。

スプレー油も同様に使えますが、水の方が安く、手軽に使えます。

その後、ミキサーボールから生地を取り出しやすいように斜めにし、生地をはがすように生地とミキサーボールの間に濡らしたドレッジをいれ、全体的にはがしていきます。

全体的にある程度まとまったらうちのお店では番重に移し替えていきます。
生地量が少ない場合は、濡らした手で、生地をつかみ、ボールからはがしていき、一番下まではがせたところで一気に持ち上げます。

生地がゆるい場合や重い生地の場合はかきだしてあげましょう。

フックに生地を残すと、コンタミ(混入)する場合、アレルギーなどを考えると非常に危険性が高まります。

アルテの食パンでは、アレルギーについてもですが、生地感やカラー・味わいが変わる可能性があるため、できる限り次の生地になる際はきれいにします。

ただし、確実に100%ということはこんな小さなパン屋さんでは不可能ですので、できる限り・・・。

アレルギーの場合、7種に含まれる原因物質の中でも、アレルギーを持つ方が多いが軽症のものとアレルギーを持つ方は少ないが重症(死に至る)のものがあります。

小麦は前者、そばは後者にあたります。

さらに、卵の場合、卵アレルギーを持つ人は卵白である可能性が非常に硬く、卵黄は大丈夫という場合もあります。

アルテの食パンでは、食パン自体に含まれるのは、「こがね」の卵黄のみのため、そういった問題が少なくなるように配慮しています。

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