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目指せ!プロパン屋~計量編~


ミスを減らす方法

コアな部分でもあり、パンにとってめんどくさいながらも手を抜いたら一瞬で終わる。それが計量です。

ミスの問題点
○大切に作り上げてきた配合が一つの間違えでおじゃんになる。
○お客さんが離れる。
○2万円など大きな単位で損失&負債にかわる。
○捨て生地の処理も大変

パンを焼いていると直面することなので、ミスを0になるべく近づけるアルテの食パンで気を付けていることをまとめます。
ちなみに、オープンから1年半生地をすべて捨てるレベルでのミスが判明したのは、1回です。
ただこれが原因で、ミスをしないための対策を考えています。

アルテの食パンの場合、イベント除き3種類程度の生地の種類を使っています。一般のパン屋さんはもっと多いでしょう。
ただし、仕込みキロ数をその中で変動させているため、7種類くらいの変動の中計量をしています。
注意する点
○種類によって計量する箱などを色分けする。
○キロ数が異なる場合は大きい順などいつも決めておく。
○同じ素材は一気に計る。
○塩はここに入れるなど場所を決め、あとで見て確認できるようにする。
○計量後総重量を計る。

ここまでしても、十分おつりがくるくらい計量は重要な作業となります。さらに、ミキシング前に目視で確認ができるもしくは確実に間違えない状態を作ることが重要となります。それでも、不安になることはあります。
例えば、とても微量の計量となる酵素やビタミンCを使う場合。見た目には小麦との違いもわからず、判断はできません。そのため、計量の直前に粉にくぼみを作り、そこに入れるなど、あとで確認をできるようにしています。
それでも、くぼみが崩れていたりすると入っているかわかりません。計量が自分であれば思い出せますが、日によって変わる場合はそうもいかないですよね。
その場合は、本人に確認し、定かでないのであれば、もったいないですが捨てましょう。リスクを持って不安なパンを焼くよりも安心して焼くことが重要です。

また、ミキシング後不安になることもあります。総重量を計量し忘れた場合なども中にはあります。その際は生地を口に含みましょう。正しい生地の味を覚えることで、何かが足りないということがわかることも多くなります。さらに塩が抜けていたりした場合は、生地の出来がやたら早かったりします。
生地のグルテンの成長具合は注意してミキシングを行うとパンとの距離感も近づきますよ。

素材に合った秤

パン屋さんと言えば竿秤が有名ですね。今回はデジタルスケールの話ですが、まず違いからまとめます。

〇竿秤(さおばかり)
アナログ、同じものを何度も計る、対応範囲は狭め、慣れによって早くなる、電池がいらない、壊れにくい
〇デジタルスケール
デジタル、誰でも使える、とても軽いものから重いものまで、安価、電池が必要、壊れやすい

ざっくりこのような違いがあります。パン生地を切り分ける分割では竿秤が大活躍しますが、これは早いことと正確性が一番大きいと思います。0.5g以下の精度が一瞬で判断できるということがとても素晴らしく、現在も使われ続けている所以と考えられます。

逆になぜ、デジタルスケールではだめかというと、とにかく遅いというのが一番の原因です。結果が出るまでの時間、調整する時間がそれぞれ、多くかかります。

ただし、分割以外では竿秤は向いていません。分銅の重さを利用して天秤の要領で測るため、いちいち重さを変えなければならないためです。その点デジタルスケールはいつでもすぐに測れることがメリットとなります。

では、パンを作る前に行う計量ではデジタルスケールが大活躍となります。ただ、計量する重さによって、デジタルスケールは使い分けが必要です。

例えば、2000g(2kg)まで測れるデジタルスケールの場合、1gの細かさで測れることが一般的です。そうすると、10g以下くらいの少量さらに言うと1g以下のものは計るのに適さないとなります。

1g以下となるのは、パン品質改良剤やビタミンCなどが想像されます。フィリングに追加で塩をという場合もありますね。

実際にお店をやろうという方は、自分が計量する可能性のある範囲で3種類くらいはそろえた方がいいと思います。

アルテの食パンでは0.1g(0.5kg)、0.5g(1kg)、1g(2kg)、10g(20kg)の4種類で計量を行います。それぞれ役割があるので、電池はいつでもなくなって平気なように常備しています。

実は私の大嫌いな計量ですが、このようにできるだけやることを少なくし楽にするために、いろいろ考えるとミスも自ずと減り、時短にも大きくつながります。

パン屋と言えども、勤務時間は11時間は超えないように小さな努力を積み重ねています。(今では一人増えたので1人当たり拘束時間9時間以内になりました!)

一緒に入れて良いもの悪いもの

計量するときに気を付けるべきことがちょこちょこあります。本にもよく載っているので、化学的にも少しまとめたいと思います。

○塩(砂糖)とパン酵母
 パン酵母は生き物です。そして、小さな小さな子たちが集まって見えるようになっています。私たちと同じように、パン酵母も体のほとんどが水でできています。

これは、生き物に共通するもので、そこにあとは様々な細かい要素が追加されて違いが生まれます。

パン酵母について詳しくは別に書きますので、省略しますが、地球にあるものは均等にしようとする力が自然と発生しています。冷たいものと温かいもの、低い圧力と高い圧力、高い濃度と低い濃度など。

これが安定している場合は何かしら物理的な障壁や均等だと判断している状態、それ以上に力が働いているなどなにかが起きています。

例えば、涼しい部屋に暖かい空気が混ざって最終的に外気温と同じになる。氷の入っている水が置いておくと同じ温度になる。(途中過程で密度の関係で上下に分かれますがそれは対流といいます。) 

こんな場合が身近だと発生しますね。風が起きる原因もこの拡散という力がかかわっています。ちなみに上昇気流は対流です。

話は若干それましたが、パン酵母と塩の関係も同じで、酵母の外にある塩分濃度と酵母の中の塩分濃度は同じでないため、浸透圧の違いが生まれます。

自然の摂理で、パン酵母の中の塩分濃度を濃くするか、外を薄くするかという判断を迫られます。

その結果、外を薄くする(水分は体重(分子量)が軽いため移動しやすい)ため、酵母の外に水分が持っていかれて脱水症状になり、死滅してしまう。。。となります。

逆に、酵母以外の話だと、人間にとって害のある細菌を増やさない方法として、塩蔵という方法があります。

食品を塩漬けすることで、食品中の水分を奪い、酸化などの化学反応を起こさせないとうだけでなく、塩分が多いため、パン酵母と同じように死滅します。

結果、食品を腐らせてやろう!!という悪い子(細菌)たちは近づくと干からびて天に召されるというすごい状態となります。人間にとってはとってもメリットですね。

水分との関係も書きたいところですが今回は置いておいて、パン生地になるまではパン酵母と塩は近づけないようにしましょう。

ホームベーカリーも同じですので、お気をつけて。水に溶かしても同じなので要注意。

時間を決める

私は実は前職が数学教員です。専攻は生化学です。意味わからない経歴ですが、その経験はとっても生きています。その中でも、タスク(の時間)管理はとても重要です。

人間って嫌いなものに取り組むときに、だらーだーらーってしがちですね。おうちの掃除、興味がないことのお勉強、強制的ななにか。だるーって思いますよね。

私は、ひどくめんどくさがりです。楽して生きるためにはどうするかと考えて30年弱生きてきたといっても過言ではありません。将来楽するために、楽しむために今まで、頑張ってきた部分も多くあります。

とはいっても、楽するためにさぁがんばろう!ってなりません。

当たり前ですよね。楽したいんですもの。布団ゲーム漫画本読んで、遊びにだって生きたい。

遊ぶのすらめんどくさいときあるのに。その状況でやるには、5分がんばろう!!!ってやるんです。頑張っている自分かっこいいじゃんって励ましながら。

さて、パン屋さんの計量に戻ります。計量に戻るのは、大嫌いだからです。パンを焼くのは結構好きなので、楽しいです。でも、計量はどうしても嫌いです。これを乗り越えるためには、時短をすることが1番でした。

嫌いな時間は人生の中で短く。

大体1日6種類くらいの計量を粉ものと液ものとそれぞれ行うので、12箱くらいになるんですね。それを何分でやるか。

30分で終わらせよう。

終わったら、少しだけツムツムしよう。

自分の中でご褒美を決め、頑張ります。すると、だらーっと1時間くらいかけてやっていた(やりたくなーとかいいながらうだうだしていた)が30分くらいに縮み、ツムツムをしてもおつりがくるようになりました。

1つの工程を分単位で時間管理しておくと、例えば、3時に打ち合わせがある。いまは14時20分、計量だけ終わらせて、あとは巻き込みに使うこまいのを計ってしまおう!とか無駄なく時間管理ができるようになります。

私なんかは、パン屋さんにいる時間(勤務時間)をなるたけ、1秒でも少なくしたいタイプです。それは一緒に働くみんなにも強いています。

そのために、工程も考え抜き、なるべく残業はないよういつも目を光らせて無駄を排除しています。

何分かかった?

考えるだけでも、自分の時間を作れるようになりますよ。ご褒美も忘れずに。頑張ったら頑張った分だけほめましょう。大人も子どもも他人も自分も。

ベーカーズパーセント

パン独特の書き方ですね。

1つの配合における全種類の小麦の合計を100としたとき、それぞれの素材はどのくらい入れるのかをベーカーズパーセントと言います。

簡単に言うと、2%のパン酵母とあれば、100gの小麦を使うのであれば2gのパン酵母を使うよってことですね。後は掛け算になるので、3000gなら30倍の2×30=60gとなります。

割合については、数学教員だった僕の十八番ではありますが、パンでもよく使われます。

このベーカーズパーセントですが、何がいいって、調整がしやすいんです。
例えば、甘みが足りないなぁ、って思って5%を10%にしました。

それが、グラムで作っていると、5gを10gに。じゃあ15人分作ったりすると。。。計算めんどくさ!ってなります。小麦を100にしておくとあとで量を調節したりするのが楽になります。

話は戻って10%なら500gの小麦量になろうと簡単に50gって答えが出ます。

もちろん、毎回計算しませんよ。EXCELでまとめて、数値を変えれば全部変わるようにしてやっています。ただ、掛け算だけで答えが出るのはとても便利です。

さらにEXCELなら合計gも簡単に出るので、ロスをぎりぎりにした計算もできます。それもベーカーズパーセントならではですね。ポイントは小麦を100という区切りのいい数字にしたところ。考えた人すばらしいです。

パン屋さんは毎回同じ量で焼くわけでなく、日によって天気によって量を調節するので、そこに対応できるのはとてもいいですね。

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