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地方が世界の課題に真剣に取り組んだら、地方の課題が解決する理由。

日本のエシカルファッション市場も、確実に成長しています。
国内外のブランドが、環境や社会に配慮した方法で商品を提供し、消費者も若い世代からエシカルな服、循環型の消費行動を求める声を感じます。

先日、良品企画が「ReMUJI」に本腰をいれると発表しました。

古くから布を使い切る方法の「染め直し」から着想を得て、15年に「ReMUJI」として染め直して再販する「染め直した服」をスタート。21年秋には「洗い直した服」と回収した服を解体してつなぎ合わせる「つながる服」の販売を開始した。回収量も少なくコロナ禍ということもあり、一部店舗での販売のみだった。現在、「染め直した服」は25店舗、「洗い直した服」は6店舗、「つながる服」は1店舗で販売する

WWD japan


エシカルファッションが「特別なもの」から「当たり前のもの」へと変わりつつあります。消費者が選択する余地もなく気づいたら環境配慮型の製品をきているかもしれません。

ユナイテッドアローズとファーストリテイリングが30年までには50%をサスティナブルな素材の商品にすると発表しました。

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、2030年度までに全使用素材の約50%をリサイクル素材などに切り替える。2021年12月にまとめたサステナビリティ(持続可能性)の目標とアクションプランに盛り込んだ。環境や人、社会に配慮した服を提供することで、持続可能性と事業の成長の両立を図るという。柳井康治・取締役グループ上席執行役員は「衣料の分野における新しい産業革命を起こしたい」と述べた。

朝日新聞デジタル


エシカルアパレルが市場に普及しない課題


エビデンスもありますが、私の仮説も多分に混じった一つの考察として読んでください。

エシカルアパレルがいまいち普及しない理由は、高価格、機能性やサービスとしての信頼性の低さです。そもそものファッションとして楽しみが見出しにくい、消費者側にすれば未熟なジャンルでありました。理由は生産者に旨味がないから取り組むブランドが少ない、販売の受け皿がない、出口戦略が見えない。生産者にしてみたら市場規模も懐疑的だったと思います。

しかし、今後こうした大手小売店が本腰をいれることでチャネルがみえてくる、販路として大きな広がりを見せそうです。
いまよりも、高品質低単価なエシカルアパレルが増え、魅力的なエシカルブランドが登場するでしょう。

今後、エシカルアパレルが、いちジャンルという認識ではなく、循環型の販売方法、環境に配慮した素材がファッションのデフォルトになっていくことを示していると思います。

「SARROWS(サローズ)」とは、ユナイテッドアローズのサステナビリティ活動の合言葉で、「Sustainability」の「S」と、「ARROWS」の「A」を掛け合わせた造語です。
2020年4月、当社はサステナビリティ推進の指針として5つのテーマと16のマテリアリティ(重要課題)を定めました。さらに、2022年8月、2030年に向けた3つの活動目標:「Circularity(循環するファッション)」、「Carbon Neutrality(カーボンニュートラルな世界へ)」、「Humanity(健やかに働く、暮らす)」と、この3つのカテゴリーに紐づく数値目標を設定しました。これらの目標の実現を目指し、具体的な取り組みを進めるとともに、その進捗状況を積極的に情報発信していきます。

PRTIMES
2022年4月~2023年3月のサステナビリティ活動「SARROWS」の実績と総括 公式サイトから引用

環境や人、社会に配慮したアパレル製品がグローバルスタンダード基準になると、ふたつ懸念があります。

ひとつは消費者とグリーンウォッシュ。


消費者はその製品を真偽を問う眼を持たないといけません。例えば、認証制度の基準をクリアしたエシカルマークが付与された商材を選ぶのも選択方法です。実際に今、私たちが展開している「アップサイクル」を例にお伝えすると商品開発で100%サスティナブルな展開が出来ているとは言えません。アップサイクルというのは「付加価値」が肝心です。製品価値は消費者に寄与するので、付加価値がついているのかどうか?は生産側の定性であり、プレファレンスに左右される曖昧な境界線だと思います。

「エシカル」や「サステナブル」といった言葉だけが一人歩きして、広告や販路に活用されてしまい、ブランド側が売るためだけに「エシカル」や「サステナブル」といった言葉を使ってしまう。消費者側が、サステナブルやエシカルの本来の意味を考えずに、なんとなく手に取るだけの消費行動を促してしまう危険性があります。
結局、安易に購入した洋服は、これまでと同じように廃棄しやすい扱いになるのではないでしょうか。そういう判断も含めて、消費者一人ひとりの選択が重要です。

アップサイクルの意味と定義アップサイクルは、本来は捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生することで、「創造的再利用」とも呼ばれています。 デザインやアイデアによって付加価値が与えられることで、ものとしての寿命が長くなることも期待できるため、製品のアップグレードと捉えることもできます

講談社SDGsBy C-station

次は生産者です。


私は地方に移住して、沢山の一次産業の方々と出会う事ができました。地方には素晴らしい技術と誇りを持って産業を支えてる地場産業があります。
私はこの地場産業、産地や土地が培ってきた職人の技術こそ地方が世界に誇れる価値だと思っています。

先程の2030年を目安に、小売業者は人や環境、社会に配慮した商品のバイイングが本格化する。これはエシカルか否かて、生産者の取捨選択が始まるという意味です。サスティナブルやエシカルな基準がアパレル業界のスタンダードになったとき、あなたは何を売りますか?
何も買ってもらえない状況になっては困ります。

海外ではフランスが生産者の衣類廃棄禁止令を施行しました。世界トップブランドでは間違いなくサスティナブルやエシカルが業界のスタンダードになっています。私が知る世界的な有名ハイブランドのOEMを受け持つ小さな国内工場は、ブランドが求める20ものエシカルな審査項目をクリアしています。その準備と体制があるからこれからも世界的なものづくりを担うことができてると話してくれました。

越境ECなど安易に口にするマーケターもいるけれど、実際には輸入基準が厳しくなっている可能性もあります。そもそも環境に配慮しない製品は輸出できなくなるかも知れません。

しかし地方都市において、環境に配慮したアパレルの商品開発や取り組みはあまり進んでいないように思います。理由は先に述べた、販路と市場規模が懐疑的だったからだとおもいます。表層的なエシカルビジネスではなく、本質的な取り組みが必要ではないでしょうか?

地域課題と社会課題は繋がっている

現在、世界のアパレル廃棄問題は国内でも認知されつつある社会課題です。しかし課題の対象が広くて遠過ぎるために自分ごとになりにくいと思います。しかし、私たちがこの社会課題に取り組む上で見えてきたのは、地場産業の衰退の地域課題でした。
縫製就労者は84%も減少しているそうです。このままでは地方の産地、伝統工芸的技術などの文化的資源の魅力は持続できないのではないでしょうか?

地域課題と社会課題はリンクします

世界ではサスティナブル、エシカルな取り組みは当たり前です。少し乱暴な推測ではありますが、これから先の10年を考えた時に、間違いなく、人や環境、社会に配慮した取り組みが日本国内でも必要となってくるのです。
私はこれがチャンスだと思っています。地方の地場産業こそ、人や環境。社会に配慮した商品開発を本気で取り組むのはどうでしょうか?

日本の地場産業が世界のアパレルでエシカル商品開発のトップをとれるのではないでしょうか?
アパレル産業には、日本のものづくりの技術が世界のファッションを席巻してきた歴史があります。私の故郷兵庫でも丹波丹後のシャツ布帛、姫路の革なめし。これらの技術は世界の有名メゾンに供給しています。そうした日本のものづくりは、地方の地場産業が支えてきました

日本のエシカルアパレル産業改革です!
地場産業の職人はイノベーターだと思います。なんども挑戦を繰り返してきたイノベーションの積み重ねが職人の歴史であります。伝統を守るだけでは無く、そのイノベイティブが世界に認められてきたのだと思います。地場産業の技術とスピリットこそ、これから拓かれる日本のエシカルアパレル産業改革に発揮すべき価値です。

日本の地方のものづくりのチカラで世界のグローバルスタンダードに挑んで行きたい。ぜひ、人や環境、社会に配慮したアパレルの取り組みを、組織や仲間で議論して欲しい。今日を境にエシカルアパレルの生産をいまから準備して、どんどん取り組んで欲しいです。

さいごに


今回、高松にある服飾学校と共同して廃品回収した古着のシャツをコートにするアップサイクル活動を実施しました。25もの作品の中、7作品はリサイクルや廃棄素材を活用した展示でした。若い子達はアパレルの未来を見ている。オシャレ、かっこいい、可愛い!がファッションの醍醐味です。ファッションロスという重いテーマでも、そのオシャレの楽しさを自由に表現していました。ある学生さんが言いました、地元で働きたい。今、地域では人材不足が問われていますが、人口減少や少子化だけが問題なのでしょうか。衰退する縫製業においても同じことです。実は、人材の受け皿となる側にも課題があるのではないのでしょうか。ある東北の地方の縫製工場の代表と話をしました。給料を上げても職人の応募がない。けれど縫製工房やアパレル作家の元には若い職人が集まっている。その方が出した答えは、縫製業はワクワクする仕事じゃないのではないか? 

けれど思います。目の前で地元でファッションの仕事をしたい、という学生がいる。彼らの中には縫製が得意で好きな子も沢山います。
ワクワクする縫製業になりたい。そのためには、新しい挑戦。
地方こそワクワクする挑戦がしやすい環境だと私は思っています。
そしてオープンイノベーションです。散らばっている点の力を面にする、総力戦で世界に挑むべきです。小さな町や土地で競争しあっても仕方がないのです、それぞれのプレイヤーが持っている素晴らしい技術、個性、知恵が混じり合って大きな力になる。世界や社会に目を向けた取りくみを行っていれば、自然とワクワクする産業となり、自ずと人も集まってくるのではないでしょうか。
地場産業の皆さま、一緒に世界の未来を開拓しましょう。そのイノベーションの取り組みが地方の未来につながると私は信じています。私もこれまでのアパレル小売、ソーシャルビジネスの知見を活かして一緒にエシカルな商品を開発します。地域の地場産業、伝統工芸的技術を持った職人の方々と一緒に汗をかいていきたいと思っています。

私たちのオープンイノベーションの一例です。さぬき市の本藍染工房Khimairaでパターンをお越し、東かがわの大同染工(株)で染め、高松の吉田愛服飾専門学校で縫製した、廃品回収した衣類をアップサイクルしたコート

この度、光栄にもボーダレスジャパンが運営する「For Good アワード」のエシカルブランド部門賞をいただきました。
私たちが考える付加価値とは、地域が培ってきた地場産業の技術。日本の職人技です。メイドインジャパンの技術でメイドインジャパンの人や環境、社会に配慮したブランドを展開して参ります。

For Good


上田勝仁1977 神戸市生まれ 2020より香川に移住。


エスショップ主催。セレクトショップで販売員。麻布テーラーの店長や広報、バーニーズニューヨークでマネージャーを経験したのちボーダレスジャパンに入社。ソーシャルビジネスの世界へ。バングラデシュの貧困問題の解決とり組み、起業プログラムにも参加。2020「エスショップ」立ち上げソーシャルビジネスの取り組みに奮闘中。2023より東かがわ市にて、雇用を創出するスマート牡蠣養殖事業に参画。

東かがわ市地域プロジェクトマネージャー就任
ソーシャルビジネススクール ボーダレスアカデミー2期卒業
瀬戸内チャレンジアワード準グランプリ受賞
ボーダレスジャパンFor Good アワード2023エシカルアパレル部門受賞


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