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私が「わたし」に出会う「場」づくりで支える、ライフ・キャリア支援

一、「なぜ私は生きるのか、働くのか」を支える場づくり

 人生の転機や岐路に立つとき「自分の人生にとって仕事や勉強ってなんだろう」と思うことがあります。特に仕事のため、受験のための人生に疲れていたり、複数の選択肢のなかでどちらに進むべきかを迷っていたりするなら、なおさらでしょう。わたしはライフ・キャリア支援者としてこうした場面に立ち会うなかで、この問いに正面から向き合い、はっきりと言語化できたときに自信を持って相談室を出ていく人を見てきました。


 わたしのキャリア支援では、はじめに「なぜ」働き・学ぶのかに取り組み、次に「何が」自分にあっているのかを探して、最後に「どのように」取り組んでいけばいいのかを一緒に考えるようにしています。これはライフ・キャリア支援のひとつの近道のようです。仕事・受験のための人生から、人生のための仕事・勉強につなぐには、一人ひとりが人生と仕事・勉強との意味のつながりを発見して「結ぶ」プロセスが必要なのです。

二、2つの「適応」:adjustとadapt


 私たちが環境に適応するには、大きく2つの方法があります。一つは環境に自分を「適応する(adjust)」ことで、もう一つは自分に環境を「適応する(adapt)」(=適応させる)ことです。日本語ではどちらも「適応」と表記しますが、その意味はまるで違います。
 これからのライフ・キャリア支援では、後者の適応(adapt)を扱っていくことが必要なのではないか、というのが私からの提案です。

三、その特徴は!?

 人に環境を適応する(adapt)支援は、人に優しいライフ・キャリア支援だと私は実感しています。その特徴は、無理をしない・させないことにあります。
 これまでの環境に人を適応する支援では、学校や職場などの社会環境から要請される役割に人を合わせていくことに主眼が置かれていました。すると、役割が増える度にそれを引き受ける器である個人に負担がかかり、抱えきれずに溢れた部分がストレス反応となり、いわゆる「ウザい」発言、やがて「キレる」行動につながっていたと考えられます。環境に人を適応させ続けると、やがて心と身体そして社会的な繋がりに影響を及ぼすことが多いのです。


 20世紀の近代化の過程では、キャリア支援の基盤は「自己実現」モデルに置かれ、右肩上がりで成長し発達する個人を支援することに目が向けられてきました。しかし、社会の複雑化・多様化などによって、個人に複数の役割を担わせた結果、自己は飽和(ガーゲン,1991)してしまったのです。そしてこれは21世紀に持ち越された私たちの課題でもあります。


 そこに登場したのが、人に環境を適応する(adapt)型のライフ・キャリア支援でした。このタイプの支援では、「実現する自己」に代わって「構成する(construct)自己」が置かれました。構成するとは、支援者との対話のなかで次のストーリーを構成する(書いていく・企画していく)ことを指します。そこでは、社会的役割としての「私」が素の「わたし」に出会うなかで、生きる意味や働く意味が発見されるのです。

四、どのような人の役に立てるのか

 自己は実現するものではなくストーリーとして構成すると考えることは、自己をすでに存在する固定的なものとして見る視点から、主体でも客体でもない常に変化するものとしてみる視点で位置づけ、自分の次のストーリーを企画することになります。キャリア面談に訪れる相談者の多くは、「積極的に自分の人生を切り開いていきたいわけでもないし、かといって誰かに決められる人生もイヤだ!(とは思ってはいるけれど、はっきりと言葉では言えないし・・・)」というように曖昧模糊とした状態にあります。人に環境を適応する(adapt)型のキャリア支援は、このような転機にありながら「決めたくないけど、決められたくない」人たちを支える力があります。

五、おわりに:場をつくり、提供し続ける

 コロナ禍にあって人と環境の変化が激しくなると、私たちの支援を求める声は増え、緊急度も高く、内容も切実になってきています。そうしたなかで私たちにできることは、流動的な社会をわたっていける人生テーマを発見する「場」をつくり、転機を迎えた人びとに提供し続けることです。その場をつくり続け、来談者にとっての社会環境として存在し、次のエピソードが構成されたことの証人になるのが、私たちキャリア支援者だといえるでしょう。

 わたしのキャリア支援の場はいつでも開かれています。持ち物は変化したい気持ちだけです。こちらから受けることができます(無料)。

特定NPO法人日本キャリア・カウンセリング研究会:
https://npo-jcc.org/careercounsiling20210409/

最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。あなたの「スキ」が励みになります。「サポート」されると張り切ります。私の記事が必要としている人に届きますように。