夏の思い出〜機屋の心地よい音〜
バスでお昼寝していると、がしゃこーん、がしゃこーんと機の折る音が聞こえる。
母方の祖父の家は、桐生織物の機屋だった。
自営で、祖父や伯父や伯母たちは当然フル動員で、機屋をしていた。
美しい着物に、浴衣に、デザインの変わった当時であれば最先端であっただろう、素敵な帯の数々。
色とりどりのものに囲まれていた。
先月、久しぶりにお墓参りに行ったら、まちが古都っぽい雰囲気になっていて、古民家のカフェとか、良い感じのお店とか増えていた。
東京からの移住者も多く、機屋の工場を改造したりしているそうだ。
音って不思議。
夢の中であの音とともに、まるでタイムスリップしたかのように光景がはっきりと出てきていた。
起きた今でも、あの景色がよぎる。
がしゃこーん、がしゃこーん。
よく箒で掃除された畳の上で、寝転がって、窓を隔てた工場の心地よい音を聞いていた。
記憶にあるのは小学生時代だけれど、毎夏、遊びに行っていた。
もっと小さい頃は、いつもおんぶしてもらっていたそうな。
機屋の孫が玉止めすら満足にできなくて、お爺ちゃんは苦笑していることだろう。
夏の思い出、そこかしこにあるな。
それすら、当たり前のことではないんだなと思えるのは、この年になってからだけれど。
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