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ステンレスコートベル考:||

やあ、あまぎつねである。
明けましておめでとう。
皆さんお元気であろうか。

冬の寒さが身体に染み入る季節だが、是非温かくしてもらいたい。
冷えると心身共に防御反応が出てしまうのだ。


さて今回は"ステンレスコートベル"について報告と考察をしていきたいと思う。
なかなか長くなってしまったが内容は濃い。

話は103を購入した去年1月下旬、つまり約1年前に遡る。
当初は以前のオーナー様から、103にデュルクのハンドハンマーベル(イエロー)を付属してお譲りしますという旨を受け、その通りに購入した。
その際に「もしよければ元々ついてきた純正ベルもいかがでしょうか?」とお話もいただいていたのだが、一時的に保留してもらっていた。
そしてその3ヶ月半後の5月頃にその純正ベルの購入に踏み切ることになる。ちなみにこちらもイエロー。

ラッカーは掛かっていたものの剥がれかかっており一部腐食し状態は良いとは言えず、比較的安く取引していただいた。ありがたい。
大きな歪みこそ無いもの、凹みや傷はそれなりにある。

とりあえずこのまま試奏。デュルクの豊潤な倍音に比べ少々チープな響き。重量自体が軽いものの反応の良さはデュルクと変わらず、様々な音域においてもほぼ完全に下位互換のベルという印象だった。
デュルクが良すぎるのかも。
(デュルクのハンドハンマーは新品で購入すればベルだけで17万円超なのだ)

その後、この凹みは自分でローラーを使ってある程度の修理を施した。

こういったものは修理痕が残る。またある意味伸ばしているので、全体的に歪みが無いように調整が必要だ。素人ながら入念に注意しながら作業した。

ちなみに修理後も試奏してみたが、音に大して変化は無かった。


さて、こうなるとどこかしらデュルクを超えるスペックのベルにしなければ購入した意味が無い。
勿論全てのステータスで上回ると言うのは不可能だろうが、せめて一定のメリットがあるベルに仕様変更、つまり改造をしようと考えた。

まずパッと思い付いたのは銀メッキを掛けることだが、やはりコストが高い!
全て業者に頼むとすれば、ラッカー剥離に研磨、メッキ塗装でG万ほどかかってもおかしくは無い。

ふむ、となると…。
(  ⍨  )

全て自前のDIYで何とかならないか?というように思考をもっていく。早速、手軽に施工できてメッキ塗装に匹敵する耐久性ものは無かろうかと探し始めた。

そこで発見したのがこちら!


2022年1月現在、145万回の再生数を誇るこの動画。客観性溢れる素晴らしいコメントと滑舌の良いハツラツとした説明が癖になる。
この商品は耐候性や耐久性に非常に優れ、梨地から研磨することでヘアライン仕上げや鏡面仕上げまで加工することが出来るらしい。

商品ページはこちら!


語弊が出てしまうが、言ってみればステンレスメッキの気分。(的確なのはステンレス塗装だが)
これは中々良さそうな商品だ。
他にも色々な動画を見漁って、他のステンレスコーティング商品とのスペックの差を確認した。
間違いない、これは善きものだ!


という訳でAmazonで塗装剤をポチポチ。
この純正ベルをステンレスでコーティングすることにした。
恐らく世界初だろう…(笑

何故のこの時期を選んだのか分からないが、世間がハロウィンで騒がしい10月31日から作業に入った!

ここから加工の経過風景に移る。

まず洗浄。
それでも緑青は少し残る。

次にラッカーの剥離。
屋外で有機溶剤専用のマスクとゴーグルをかけて行った。この剥離剤は人体に非常に有害で、直に嗅ぐと麻酔性があるので厳重注意である。また強いアルカリ性なので専用の手袋をして作業する必要がある。
(ちなみに剥離剤はフォロワー様からのプレゼントである!ありがたや!)

綺麗に剥がれた!
管よりもベルの方が細かいところまで気が配れる。ハケの乗りも良い。裏表それぞれ2度塗りだけで大丈夫だった。

その後、一度水で良く洗ったあと、お風呂に持ち込んで中性洗剤でこれまたスポンジでしっかりと洗浄する。

そして耐水ペーパーの100番手でだいぶ粗めに足付けの作業をした。細かいところまで足付けしなければ塗装が剥がれ易くなるので、大胆且つ繊細に。
素材がプラスチックであれば1000番や2000番の方が良さそうだったが、金属である真鍮に対しての塗装なので粗めの100番をチョイス。500番でも問題無かったかもしれないが、今のところ100番で後悔しているところは全く無い。

この段階で細かい傷やら腐食やらもある程度整えた。


さて、プライマーを吹き付ける。
使用したのはミッチャクロンマルチ。
撮影のタイミングをちょっとミスるおっちょこちょいさは愛嬌として受け取っていただきたい。

そして乾かないうちにステンレスコート スーパーブライトの塗装をする!!
環境はヒーターを使い20℃程度に調節した。
湿度は50%~60%ほど。

動画の通り缶を温いようにし、充分に攪拌してから吹き付ける。
まずはベルの内側から。

薄く均一にをイメージするが、形状として凹んでいるので平面の塗装より気を遣う。

乾燥後の表面はザラザラ!!
まるで細かい砂を吹き付けたみたいである。
写真は2度塗り後だが、この後さらに2度塗って4層に仕上げ、乾かす。


次にベルの外側。別日。
スクリュー部を丁寧にマスキングし同様にプライマーを吹き付けて、ステンレスコートで塗装する。

直後はテカテカに見えるのだが、乾燥するとやはりザラザラになる。
5層塗りをした。

ある程度乾燥したらマスキングを取る。
スクリューが綺麗!


乾燥したら最後にもう一度内側の塗装。最終的にこちらの面も5層に仕上げたことになる!
両面を5層塗りである。何とも豪華。


して、乾燥自体は1晩あれば済むが、こういった塗装は乾燥と別に「硬化」が必要である。
カタログに書いてある最長の10日をかけてきっちり硬化した。
硬化後は爪で掻いても全然剥がれない。こりゃレビュー通り強い塗膜だ!


という訳でステンレスコートベルが爆誕。

缶スプレー1本約4,300円を、大体2.7本分ほど使用。作業は全部で半月ほどに及んだ。

梨地のザラザラ。

冒頭にも紹介した通り研磨することでヘアライン仕上げや鏡面仕上げまでもっていけるが、とりあえずこのまま様子を見てみる。

ホルン仲間にも試奏してもらい、フィードバックをいただいた。


写真には収められなかったが、他に3~4名の方に試奏していただいたので、私を含めて合計6~7名の楽器に装着されたことになる。プライベートなアンサンブルの他、We Love 103というイベントにも持参した。

そしてあまぎつねの103!

バストーミ!これについては次の記事で書こうと思う。簡単に説明すると、低音特化の替え管を装着した状態の103だ。


ベル自体の重量は502gだった。硬化前は504gだったので2gの水分が飛んだのだろう。紛れもなくヘビー級だ。元々の塗装前は386gだったかな?と記憶は朧げ。
既存の商品と比較するとクランツ付のもの等に匹敵する。

一応、あまぎつねが調べた範囲の103適応可能ベルの重量まとめを置いておく。

デュルク
・ハンドハンマー約430g (所持436g)
・スタンダード:約380~400g
・ライトウェイト:約350g

ザントナー(アレキサンダー) 
・ヘビーフレア0.70mm:???g
     (クランツ付き:約480g)
・ソルダードフレア
      0.45mm:???g
      0.50mm:438.5g(赤)
・エクストラストロング(ハードプレス)フレア
      0.55mm:373g~404g
・スタンダードフレア
      0.55mm:約340~407g




さて、ここからは最も気になるところ、ステンレスコートベルのフィードバックと印象を箇条書きで連ねてみようと思う。
勿論103の楽器にも個体差や年代による仕様の違いがあるし、人によって感じ方に違いがあることは念頭に置いてから見て欲しい。


・持った感じが重い
・吹奏感は全音域で抵抗強め
・真ん中の実音Fからは息が入っていかない感じがしてキツい。
・逆に高音はコントロールしやすく、ツボにひっかかり易い
・強く重めのサウンドになる
・明るめの音色になる
・柔らかさが欠け、硬い音色になる
・ザラザラして右手が痛い
・右手が滑らなくて良い
・中低音が吹きづらい、鳴りづらい
・HighE♭/HighE/HighF辺りが当たりやすい
・ペダル音域は鳴らしづらいが、振動しきった時の遠達性は強い
・「これいいですね、欲しいです」


んむ。ざっとこんな感じだ。
当初の目的「一定のメリットがあるベル」には充分に仕上がったと思う!成功としておこう。
デュルクのベルとも元のベルとも違う新たな良さが生まれた。
錆びないので汗をかいた手で触れて放置しても大丈夫というのも旨味。

実は、製作過程では低音奏者に向いているベルになるのではと思いながら作業していた。出来上がってみると寧ろ上記のように高音域を褒められる。あまぎつね自身が吹いた感じでも同意見で、抵抗感に息を乗せて押し通した時に、高音域で「ギラッ」とした明るい輝きの響きが生まれる。今まで吹いた中ではクランツ付のベルに近い響きかな?と思う。
一方で低音域は息が通りにくいし、通せても音が硬くなり過ぎるので、聴いていてあまり豊かだとは感じられなかった。
そういう意味では上吹き用のベルという認識が適切かもしれない。

有識者からみればイエローブラスやゴールドブラスより、ニッケルなどの硬い素材のベルの方が音が明るくなるのは一つの道理であるそうだ。
今回のステンレスコーティングによって、ベルに"硬さ"が生まれたとしても何もおかしくない。



一方、しかし。


しかしこれら上記の感想は、あくまで普通の103を普通のセッティングで吹いた時のものである。
バストーミほど低音に特化したセッティングにすると、逆にバランスが良くなり遠達性を活かせる事に気付いた。マウスピースが250gほどなのも少なからず影響しているだろう。

意外にも意外…。これは計算していなかった。
あまりに高音域ばかり優れたベルになったのなら、誰かに譲ろうかな?等と乾燥させながら考えていたが、これなら自分にも有意義に使えそうだ!

つまりは、要するに

「メリットが発生する音域が極端なベル」

なのだ。
中低音域~中音域~中高音域等の所謂ミドル音域では一般的なベルより少し吹きづらい位だが、超低音域~低音域、そして高音域~超高音域では、条件を満たせば強靭なサウンドを発生させることが出来る。
なんともユニークな仕上がりだ。


今後もアマプロ問わず様々なプレイヤーに試奏をお願いして、フィードバックをいただきたいと考えている。


あと派生して考えてしまうのは、「ステンレスそのものを素材としてベルを作ったらどうなるのか」というもの。
既存の機械では製作は難しいだろうから入手は困難だろうが、やはり気になる。
マウスピースもステンレス製の流通が始まっていることもあり、今後どこかで製作される可能性はゼロでは無いだろう。密かに期待している。




ふう、こんなところかな!
いかがだったであろうか。
これからどう研磨するかは決めていない。そういう意味でもまだ可能性を秘めているベルである。
ちなみに103の他、カタログ上ベルサイズがMediumとされる104、107、107X、403s、200、301、303、309、310、そしてデュルクD3やD10等に互換性があると思われる。
もしかしたらそれらを考慮し、これからはレンタルサービスを開始するかもしれない。そんな用途もある。



最後に、





実は、もう一枚ベルが手元にある。。。

とあるフォロワー様が、これらのステンレスコーティングのチャレンジをTwitterで見て、「うちに使わないベルが転がっているのでどうぞ、有効に使ってあげてください」と送ってくださったものだ!クルスペのニッケルシルバーである。なんとありがたいことか!!


これから加工費を集め、またステンレスコート加工すると共に、新しく「ダブルカット加工」をする予定だ!

という訳で皆のもの、これからもお楽しみにの〜!!


最後まで見てくれてありがとう。感謝である。


あまぎつねがお送り申した!


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((ฅ*¯꒳​¯*ฅ))📯

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