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風の中で

子どもたちが大きくなり、ご飯を作り置きしておかなくても自分たちで何かこしらえて好きなものを食べてくれるようになった。そんなふうに子育てが一段落し、文字通り手が離れてきたらしたかったことは、音楽に触れることです。

かくいう私は、車谷浩司さんの大ファンで、10代の頃から好きで好きで、一番聴き込んだ大学時代は夜中に小さな音でCDをかけながら油絵を描いていました。

当時は、激しいロックを奏でたかと思えば美しい旋律のメロウな曲も大好きで、その幅広い音楽性が魅力でした。また、社会問題を扱う歌詞から小説のような歌詞、日常のささいなことを繊細に描くこともあって、日本語の世界も美しくて、いろいろなことを教えてもらいました。

そんな車谷さんにまた会いたくてLIVEへ行ってきました。現在は、「Laika Came Back」という名前で活動をされています。一人でやっているのは存じ上げていたのですが、2時間近くのステージの弾き語りです。「一体、どのようにするんだろう?」と久しぶりの再会に少しだけの心配もありました。

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ステージがはじまるとその心配はなんのその、まるで古い親友と再会したようななんとも言えない気持ちに心が震えました。思わず涙がこぼれてくるんです、しかもたくさん。

1曲目の「桜花」、イントロのアルペジオにのせ、優しい声が聞こえた瞬間に涙、涙。
「桜花」の歌詞の世界は、昔の知り合いに再会する前の物語。「お土産話もないけれど」と歌うところに車谷さんらしさが溢れていて、謙虚で憂いのあるところが好きだ好きだ〜〜と、アツいものが込み上げてきました。

光の粒が見えてくるようなギターの音色と、透明な歌声。活動名を変えても変わらない部分もあって、「お互い、いいことも、辛いことも、たくさんあって今があるね」と、古い親友に再会したような、なんとも温かい時間でした。

そう感じたのは私だけではないはずで、ちらっとお隣の男性を見れば、私よりも泣いていて、目頭をハンカチでおさえているのに目尻から「😭」←このマークと同じように涙が流れているではないですか。斜め前の男性もしきりに涙を拭いている。みんなそれぞれに思い出すことがあるのでしょうね。


最後の「駿馬」は、マイクなしの生歌でした。声の迫力よ。

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2時間のステージで、終始感動したのはその演奏方法でした。

アコースティックギター1本と必要最小限の少ない機材のみで作り出すナチュラルな “バンドサウンド” “ワンマンバンド” スタイル

Laika Came Back Webサイトより

まさに、この公式の解説通り、ギターが打楽器となり、つぶつぶの光がこぼれ落ちるような繊細なアルペジオに、気持ちが昂るカッティングにもなるし、エレキギターにも、メロディックに歌うベースにもなるのだけど、機材を巧みに操ってループさせることで、リアルタイムでバンドサウンドを作り上げているのです。音が重なる豊かな世界が目の前に広がっていくのが美しくて、しきりに感動しっぱなしでした。

(「ループさせる」というのは、コード進行にも制約があると思うのだけど、かといって単調にはならないきれいな旋律にも、その技巧にも、涙を流していたのです)

自宅に戻ってきて、お土産のアイスを食べながら小学生の子どもにいかに素晴らしかったかを話たら「一人で300人を迎え撃つってすごいな」とぼそっと言ってました。

まさにその言葉の通り!

何十年もの間、音楽を続けてきた方の経験や重みが相まって、「すげぇーーーー。こんなことできるんか!」と思わずにはいられなかったです。

そしてお一人でできる最大のことに果敢に挑戦している姿が、潔く、力強く、人生そのものに見えました。

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1日経ち、まだ余韻に浸っています。浮かんできた言葉は「足るを知る」と「Less is more」でした。制約があるなかでの創意工夫がクリエイティブを生み出すこと、そしてクリエイティブの引き出しこそ、見てきたもの、経験してきたことで、センスなんだなぁとしみじみ感じます。私も目の前のことに一生懸命に、また小さな幸せを味わいながら次の再会を待とうと思いました。静かに、力が湧いてくるようなこの感覚を胸に秘めて。

音楽って最高! クリエイティブって最高!

余談ですが、大学生のときの話。

「スパイラルライフっていう可愛い二人組がいてね、すごくいいんだよ」と教えてくれた鳥取出身のあの子は元気かな。そのときに見せてくれた、スパイラルライフのビデオが、体に電飾を巻いてステージで歌う車谷さんでした。

真っ暗闇のなかでキラキラと光る電飾がかわいかったことをよく覚えています。

↓ この1:10くらいからスタートする「GARDEN」がそれですね✨😿(YouTubeすごいよ…。一緒にビデオを見たワンルームや、テレビデオまで思い出しちゃうね)

今回の「風の中で」は、キャンドルがステージいっぱいに灯されるシンプルできれいな演出でした。車谷さんも「きれいでしょう」って言ってたっけ。

このキャンドルを見たときに、出合った電飾の思い出と重なることろがあってよかったな。あの子は元気にしているかな。お互い歳をとっているけれど、また会いたい。

「昔話に花を咲かそう。桜が咲く前に」。

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