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『青春とは、』姫野 カオルコ 読書記録(2021.06.20)

 年をとってきて小説が読めなくなった。昔からファンタジーや緻密な世界観を作っていくようなのも苦手だ。(それでも、『十二国記』9冊が手つかずで枕元に置いてある)翻訳ものや国内ミステリーにも勇気が出ない。『白夜行』なんか、文庫のその厚さに降参した。
 なにを読んできたかというと、エッセイやコラムをまとめた本だ。通勤で読むのにちょうど良かった。ただし、北大路公子や西原理恵子は危険だ。笑ってしまって電車で注目される。姫野カオルコも最初は「おもしろエッセイ」の引出しで見つけた。
 今、調べてみると『みんな、どうして結婚してゆくのだろう』『禁欲のススメ』『すべての女は瘦せすぎである』『愛は勝つ、もんか-それでも恋を待っている- 』『すっぴんは事件か?』『ブスのくせに!最終決定版』『コルセット』『昭和の犬』『部長と池袋』と9冊も読んでいる。
 わたしには特技がある。忘れっぽいことだ。同じ本を2冊買うのはよくある。とくにブックオフの100円棚には注意が必要だ。…ああ!おいたわしや、世が世であれば…、などと既に持っている本をかごに入れてしまう。そのぐらい忘れっぽいわたしでも、姫野カオルコのエッセイは面白かった、ということと、悲惨な少女時代を過ごしたようだ、という2つのことは頭の中にのこっている。

 この『青春とは、』は、姫野カオルコの自伝的な小説で高校時代を描いている。家族・家庭・親子というところに全く居場所のなかった少女が学校という空間と時間、先生や同級生のなかに自分の居場所を見つけ、そして家から脱出する強さを作り上げてゆく物語である。

 主人公、乾 明子(メイコ、2020.03現在61才位)は、昔貸されてしまった本と名簿を見つけ、滋賀県立虎水高校の3年間(昭和49年から51年)の出来事を思い出す。
 おそらく実際の場所や人物のエピソードを積み重ねたと思うが小説なので個人名も学校も仮名だ。同級生のあれこれを思い出し、切ったり貼ったりしながらキャラクターを作っていく作業は、楽しかったと思う。一つ々々の出来事に当時のテレビ番組やラジオDJ・レコード・参考書等々がでてきて時代性をあらわす。それがとても効果的だ。(好きなんだろうけど、ミッシェル ポルナレフ!? 重要なポジションだ!)また、先生たちが秀逸だ。明子の脱出の援護もしてくれる。
 わたしの高校も田舎のゆるい校風だったけれども、大谷沙栄子先生はいなかった。保健室の先生はずっと恐いおばちゃん先生だった。もう取り返しがつかない。
 大学進学を武器にして、親からの脱出をやり遂げた明子、本当に良かった。でも人生は続いてゆく、今度は、自分の生きるすべを獲得しなければな
ない。

 明子は、平成26年のクラス会でそれぞれの消息を聞く。亡くなった人、元気で働いてる人、それぞれに生きた。そして述懐する。

「満開の桜の下で、わたしは3の7にいう。
 クラス会にも学年同窓会にも来なくていいよ。ばらばらなのが組風なのだし。
 でも、いてくれ。いなくならないでくれ。」 


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