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【11/11文学フリマ東京】アンソロ本「夜温」への参加作「十六夜月よ、優しくあれかし」について

アンソロ本に参加します

 このたびご縁がありまして、11日に開催される「文学フリマ東京37」にて販売されるアンソロジー本に参加させてもらうことになりました。

【文学フリマ東京37】2023/11/11(土) 12:00~17:00
東京流通センター 第一展示場・第二展示場

西野夏葉氏主宰の『真夜書房』(シンヤショボウ)
ブース番号:第一展示場『P-07』にて販売されます。

過去にも機会あって電子書籍化は何度かお世話になっていますが、自分の創作作品を紙の本として売ってもらうのは初めてでして、たいへんワクワクしています。
残念なのは、当日自分は足を運べなさそうなこと。西野氏をはじめ、参戦を表明されている皆々様方にぜひお会いしたかったのですが……

自分にできることは少しでも事前に告知&宣伝することかなということで、今回のアンソロ本と掲載作の紹介をさせてもらいます。
こういう機会でもないとこういうことやらないし、当日会場に行く行かない、買う買わないにかかわらず、

主宰の西野夏葉氏について

amanatzがmonogatary.comにて創作を投稿するようになったのが2020年8月のこと。足を踏み入れて早々に「なんか面白いお話を書く人多いな……」「ちょっと自分には真似できない感性を持ってるな……」と思わされることが多々あったのですが、その中の一人が西野氏でした。

とにかく語り口が上手くて、冴えた比喩やユーモアにするすると引き込まれると、芯の強さを感じさせる登場人物の魅力にいつの間にか浸っている。
アマチュアの集う小説投稿サイトにおいて、はっきりと自分のスタイルを確立して執筆されているのが印象的で、おそらく西野氏のファン勢はみな口を揃えて同意してくれることかと思います。
(なおamanatzは、この年の10月末のmonogatary.com3周年企画お題の際にすでに西野氏を推している、と古参ファンアピールをしてみる)

なお昨年2022年末には、noteでのアドベントカレンダー企画も立ち上げられており、amanatzはこちらにもも参戦させていただいております。

そんな西野氏が、最北の地北海道から文学フリマ東京に出店する、その際に販売するアンソロ本の参加者を募集するということで、これはぜひとも参加したい! と第一感で思いました。

ただ、昨年度くらいから仕事が忙しさを増しており、参加予定だったコンテストに間に合わないようなことが度々発生していたため、「間に合わなくて迷惑をかけないか……?」という逡巡があり。
最終的には〆切までかなり余裕もあるし、むしろこんな機会、夏のコンテストより優先してもいいくらいだよなと考え、あっという間に埋まった参加申込のほぼ最終枠に滑り込んだのでした。

テーマ「夜」についての模索・構想

アンソロ本のテーマとして西野氏から提示されたのは「夜」。
某ずとまよファンであること、また作風的にも西野氏らしいお題です。

9000字~10000字までの一次創作短編というほかには特に条件も指定されず、そうなると、縛り大好きなamanatzとしてはやや広すぎることもあり、さて、どんな作品を書こうか? と、まず考え込みました。

ひとつ明確だったのは、ジャンルは自由とはいえせっかく西野氏主宰のアンソロ本なのだから、やっぱりエモさを出していきたい! ということ。おそらく他の参加者の皆様も、その辺りは意識されたんじゃないかなと。
あえてコメディとかSFで目を引くのではなく、がっつり正統派。登場人物どうしの人生が交錯し、ドラマが生まれる――そんな正統派な作品を書きたいな、と考えました。
とはいえ、どこかで読者の意表を突く展開を盛り込みたい、というよりは入れないと気が済まないamanatzなので、そういう要素は入れられるなら入れたい、そういう気持ちもありました。

大まかな方向性はわりと早い段階で決まったのですが、そこから具体的に「これを書こう!」と決めるまでに、だいぶ時間を要しました。
構想は、最終的に、3つの候補に絞られました。

  1. 花火の話
    約1年前、monogatary.comで行われた「花火」テーマのコンテスト向けに構想したものの、時間がなくて執筆を断念していたお話。かなり練っていたので当時はだいぶ凹んだので、いつかどこかで絶対出したいと温めていたもの。

  2. 飲み会後の打ち明け話
    飲み会後、酔い覚ましに真夜中の街をぶらぶら歩いて帰るのが好きでして。amanatzは若かりし頃、同僚と渋谷で飲んでいたら終電が行ってしまい、その後なぜか下北沢まで語りながら歩き、そこでもう一度明け方まで飲み直した経験があります。なんか深い話ができるんですよ、そういうときって。そういう感じで、夜の街を歩く二人が「実は、○○のことが好きなんだよね」とかなんとか会話する話。

  3. 秘密基地の話
    田舎の夏の夜が好きで。里帰り、縁日、星空、蚊帳……そういう空気間の中、幼い頃に地元の友達と作って遊んだ裏山の秘密基地に大人になって戻り、かつての友人と再会する……そんな話。

どれもやや方向性は異なりますが、面白い話にできそう、と自信をもって練ったので、ここから選ぶのも少し悩みました。

「1」の花火は、エモさは申し分ないけれど、花火が上がるのってかなり夜の早い段階だよなーというのと、考えていた構想をすべて盛り込むとおそらく10000字という制限を超過してしまうのではないか、という懸念があり。また、より相応しい出し先が今後出てきそうな可能性もあるので、見送りとしました。いつか書き上げたい。

「2」の打ち明け話は、ベースは夜の街を歩く二人の会話ながら、その中でかなりたくさんの人物の話をする(誰が誰のことを好きで、みたいな)ような形になるのですが、読み手にはちょっとわかりにくい、とっつきにくいと感じてしまうかもしれないと考え、こちらも見送りに。いつか書き上げたい。

そうすると「3」になるのだけど、展開としては書きたいと思いつつ、「この話の落としどころをどうするのか?」については、なかなかこれだ! と思えるものが当てはまらなかった(全部ではないけど、いろいろ雑にアイデアを出して当てはめていき、合いそうなものがあったらプロットに落としていく、というやり方をよくとっています)ため、だいぶ難航しました。

特に、この「秘密基地」というのは、青春物の王道と言えるくらいモチーフになりがちな題材。だから、どこかで見たようなオチにはしたくないな、と自分の中のハードルが高めだったということもあります。
あれこれ頭を悩ませて、ようやく「これなら行けそう!」というオチを思いつきました。やっぱりね、エモい感じの話でも、できるだけ意表を突く何かを入れたいのです。それがある種の自分らしさだと思うので。

というわけで、作品の方向性が決定!
この時点で、すでに8月に入っていました。

タイトルに込めているもの

本編執筆の前に、作品のタイトルについて。
実際にはもう少し後で決まったのですが、先にお話ししておきましょう。

amanatzは作品タイトルがなっかなか決まらないことが多く、本文を書き終えてもなお浮かんでこない、ということもザラにあります。
最近では、今年(2023年)はじめに受賞させていただいた「美しすぎた日々の、その後に」なんか、〆切1時間前に書き上げたときにもまだ決まっておらず、〆切15分前になってようやく「これで行こう」と決まったりしました。
まあ、その前に書いていた「当たって砕けた、その後に」の延長線上の話ということで、何とかリンクするタイトルにしたいという思いがあったのも、難しかったところではありますが。

逆に、決まるときはあっさり決まります。
「我が愛しの殺人鬼」なんかは、サクッと決まりました。本当は「マイ・スイート・○○○○」ってしたかったんですけど、マーダーでもシリアルキラーでもちょっと違うなーってなって、それで日本語にしたという単純なものです。
こういう、あっさり決まるときのもののほうが、お気に入りになる確率は高いです。ピタッとはまった、ということなので。

前置きが長くなりましたが、今回はアンソロ本ということで、タイトルは通常より大事だ、という意識がありました。各作者の渾身の作品が並ぶ中で、埋もれないようある程度目を引くようなものにしたいな、と。
ということで本編の執筆開始直後、主役の二人が邂逅するくらいの段階でアイデア出しをしてみたら、わりとあっさり、これでいいじゃん! というものが出てきました。
それが「十六夜月よ、優しくあれかし」です。

アンソロ本のテーマ「夜」らしく、かつ少し謎めいてもいる、いい塩梅に仕上がったと自賛しています。
時間の経過を感じさせる「月の満ち欠け」を匂わせつつ、三日月でもなく満月でもない十六夜(いざよい)の月を選んだこと、「あれかし」なんてちょっと古めかしい言い回しなのも含めて、ストーリーそのものに直接は影響しない範囲でいろいろ絡まっている具合も、お気に入りです。
タイトルから影響を受けて決まった展開や表現も多々あります。

プロットから執筆~難航した理由~

さて本編の執筆です。
もう時間も余裕があるわけではないので、さっそくプロット作りに取り掛かりました。

まずはプロットと言っても、ある程度筋道が立ったら、もうどんどん書き始めてもいいと考えていました。
過去の経験からして、「アイデアが一本にまとまってきた段階で一気に書くのが、モチベーション的にもかなり筆が進む」こと、また話の作りが、主人公と久々に再開する友人とのやり取りが主となる「会話劇」であり、自分のもっとも書き進めやすい形式であること、この2点から、かなりの速さで書いていけるのでは、という予測があったからです。

しかしながら、これがなかなか難航しました。
その原因はわりと明確にあって、大きく3つ。

ひとつめは、ちょうどこの頃同時期に行われていたmonogatary.comの「モノコン2023」の影響です。
そっちにも手を出していたから単純に時間がない、という話ではありません。問題だったのは、このコンテストのお題のひとつ、【聴くモノガタリ― ドットコム+(plus)賞】。これは、「男性2人によるオーディオドラマ原作」、つまり主人公と友人2人の会話劇であるこちらの作品と、非常に似た設定であったことです。
そちらで構想しまとめた作品とは、当然ながらまったく違う設定かつ展開ではある一方、詳しくは言えませんが部分的に近しい部分もあり……できるだけ被らない、違うものにしたいという思いもあり、まとめ方にかなり気を遣いました。端的に言って、同時進行はやりづらかった!

ふたつめは、キャラクターの問題。
登場する主人公「ゴウ」とそれに相対する友人「ハル」、2人はかつて山を遊び回った悪友なので、多少のブランクや思うところがあるとはいえ、気安い関係だし、どちらも一人称は「俺」だし、性格や口調に差が出しづらいという難点がありました。
当然ながら自分の中では、両者は明確に違っている面があるんです。でも、例えば男女とか、年齢差があるとか、同性同年代でも対照的なキャラクター2人を喋らせるような会話に比べると、どっちがどっちかわからなくなったりはしないか? と不安になりました。
このあたりは気付かないほうがサクサク書けたのかもしれませんが、一度気になってしまった以上は意識してしまい、なかなか書き進めるペースに影響が出た要因になっていたと思います。

一応の対策としては、「会話の中でできるだけ相手の名前を呼ばせる」「一人称の表記を『俺』と『オレ』にする」「語尾などの口調を分ける」といった工夫を捻り出しました。さて、混乱することがないとよいのですが。

最後にみっつめ。
主人公のゴウは、再会した友人のハルに対し、相当に複雑な感情を抱いています。それはいつも仲良しだった彼らが離れるきっかけになった出来事や事情に関係しているのですが――その辺りは、会話が進むにつれて色々と明らかになっていきます。
で、一人称で書いていると、視点人物が最初からわかっていること考えていることを上手く伏せつつ、あるいはミスリードさせつつ、モノローグやトークを展開させていく必要があります。

まあ、それだけならば腕の見せ所だということです。ただ、実は今回、主人公が自ら抱える過去や感情のほかにも、彼としては自明の、でも読者には最後の最後まで伏せておきたいある事実があって。
叙述トリックはたくさん書いてきたほうですが、今回は特に書き方が難しかったです。できるだけ自然に、読んでいて意識していないところから「えっ!?」って言わせたいですから、作為的に不作為な感情で語らせるのに、相当な神経を使いました。
果たして、上手くいっているのかどうか。ぜひ、読んでいただければと思います。

推敲、そして校了

そういうわけで、いいものには仕上がりつつも相当作業が難航してしまい、
西野氏に泣きついて、8月末だった〆切を延長してもらいました。

しかし、運の悪いことに、9月に入ってから仕事がものすごく立て込んでしまい、結果的に完成までその後もかなりオーバーすることに。その節はたいへん申し訳ございませんでした。

この記事も本来は一週間前くらいに仕上げて公開したかったのですが、直前いなってしまい、果たしてこんなんで宣伝効果があるのかどうか。まあ、ないよりはマシだということで、また実際お買い求めて読んでいただいてからこの記事を「あとがき」的に読み返してみるのも面白いのではないかという思いもあって、またそうでない方にとっても自作をここまで解説するのはなかなかないので何かのお役に立てていただきたいという思いもあって、長々と書き連ねてみました。

そんなわけで、アンソロ本「夜音」、そして収録作「十六夜月よ、優しくあれかし」の紹介でした。
文学フリマへお立ち寄りの際は、ぜひ足を運んでお読みいただければと思います!


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