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【AZ】インタビュー 佐野弘翔(画家)

私が人に佐野さんを紹介する際、必ず伝える言葉がある。「佐野さんは、まごうことなき画家だ。」と。初めて作品を見たのは、佐野さんがまだ20代前半で、でも、もうその時から”画家・佐野弘翔”だった。そして、佐野さんは教授者としての知識や言葉も持っている。私の絵画の先生であり大学に入る前、わからないことはなんでも聞いた。卑下せず、わかるまで答えてくれた。大学に入っても、わからないことはなんでも聞いた。美術史も美術論も、私の陳腐な質問も、揶揄することなく丁寧に向かいあってくれる。私に追い越されると佐野さんはいっていたが、崇高、そして”まごうことなき画家・佐野弘翔”に備なう美術学を、私が追い越すなど、まず無理である。"生”と真摯に向かい合い、時に佐野さんは傷つく。その純粋な感受性も、作品から感じることができるのだ。



──自己紹介をお願いします

佐野弘翔です。絵を描いております。

好きな生き物はサボテンや花で、最近買い集めて世話をしています。昨年秋に家族の都合で、故郷を離れ岐阜、本巣市に引っ越しました。山地から平野部へ変わり、地形のダイナミズムを感じます。

──創作の中で意識していることやコンセプトはありますか?

意識していること、と言われると難しいですが、「絵に対してかけられた言葉すべて」はずっと頭のなかに残ってしまっています。青一色の絵がいい、構図はシンプルがいい、作品のために作家はいらない…など。でも、人の言葉って本当にいい加減で、次の日には真逆のことを言われたりするもので悩むことも多々あります。言葉というのは時に支配的です。博物学も、言葉でタグを付けますよね。

だから最近は「人の話を真に受けない」ことを意識しながら、その時自分の体調が本当に気分でやりたいことを聞くようにしたいとは考えています。でも油断すると色々な人の顔が浮かんでくるのでなかなかできません。

コンセプトは「部分と全体」「破綻とバランス」です。反対の意味のものが同居している絵が描きたいと思っています。将来的なコンセプトは、、、例えば「狂気と常識」も、いいですね。


──普段、どのようなことからインスピレーションを受けますか?

理想は「歩いていたら道端の小石に感動する」ですが、最近は特に忘れてしまいます。話はずれますが、インスピレーションという言葉、そういえば「イン スピリット」とお世話になった先生が言い直していたのを思い出します。魂を揺さぶる要素と言えば、案外日常のちょっとした壁のシミや道端に咲く小さな草花かもしれなくて、それに気づきたいです。


──今回AZに出品いただく作品について教えてください。

「札落ちssp.」という名前です。

札落ちとは、園芸品種において種子が雑交して正確な品種が分からなくなってしまったり、名札が紛失された状態の園芸植物のことを指すようです。

ssp.とはsubspecies の略称で、亜種や雑種といった、品種のなかのバリエーションです。

本来組み合わされない言葉ですが、「札落ち」と書かれた札が差されたサボテンを見て、言い知れぬ愛を感じました。また、「札」の考え方が美術にもよく似ており、そして博物学的だなとも感じ、そう名前をつけました。


──今後の活動ビジョンを教えてください。

せっかく「動物園」が主旨の展覧会に参加させていただいておりますので、博物学的な残り方ができるような作品制作を心がけたいです。近いビジョンでは、たくさんの作品を咲かせて、皆さんに楽しんで頂けるといいなと思っています。

佐野弘翔(画家)
INTERVIEW 2024.2.27


APARTMENT ZOO vol.6
会期:2024年3月9日〜3月23日
会場:アート&スペース あまねく
住所:静岡県静岡市葵区鷹匠2-10-24 AP2F 1号
開館時間:12:00〜17:00
休廊日:月・木
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