気づかれない程ささやかな物語
5月が好きだ。
自分が生まれた季節というのもあるかもしれない。
春に動き始めた樹々や草花の息吹が、夏へ向かって加速してゆく。
私はこの季節が好きだ。
肌をかすめる風は適度に乾いていて、
高く澄んだ空へと緩やかに吸い込まれてゆく。
さっき洗い物ついでに淹れた珈琲。
温かいカップを手に庭へ出た。
すっとする空気が心地よい。
いつの間にかカラスノエンドウがいっぱい。
ひょろっとした茎の先、山盛りのアブラムシ。
諸君、相変わらず逞しいなあ。
アブラムシの出す甘い汁に群がる蟻たち。
毎日いろんなことが起こっている。
多様な世界、多様な視点。
そこには多様な物語が、
殆ど誰にも知られずに一瞬、一瞬
無数に生まれては消えている。
そんな当たり前を感じるのは、
実はとても大切なことかもしれない。
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