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 またもや陸上の話。

 陸上は成績が上に行くほど楽しくなる。仲間ができるから。
 今までコロナの影響で試合がなく、チーム内の関わりしか持っていなかったが久々に一緒に走った人たちと再び顔を合わせると嬉しくなってしまう。日本インカレで久々に他大学の知り合いと話したが、やはり自分の心に新しい風が吹いたような気がした。
 同じチームの仲間は大切だが、身内のような存在になってしまうので新鮮味がない。ずっと家に引きこもって家族としか話さないような状態に近い。しかし外に出て、他のチームの選手を見ると、我々のチームの持っている色とは違うものを感じ、非常に新鮮味を感じる。

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 大学一年で初めて関東インカレに出場した。周りは皆自分より格上の、雑誌で取り上げられ、YouTubeで見る選手たちばかり。一緒に出場した同チームの先輩は他チームの選手に声をかけて、レース本番前というのに和気藹々としている。自分はあたりを見回しても知り合いはいない。完全にアウェーで孤独を感じた。

 大学二年も同じようにアウェー感に翻弄されたが、三年生になって私は決勝で戦うことになった。予選では同じくらいの資格記録のヤツと引っ張りあって仲良く準決勝進出。準決勝ではまた同じ組になり一緒に決勝進出。決勝では、人数も少なくなって、走る前後に密な会話ができるようになる。走る前は、皆目標のタイムがあった中で「なら前半俺が引っ張ろう」「じゃあその後俺出るわ」「最後はもう成り行きだな」といった具合に。そして走り終わった後は皆仲良くなり、一緒に記念写真を撮ったりもする。これがもちろん走った後であるという充実感もあるが、多くの人と仲良くなり、語り合う。陸上をやっている中で一番楽しい時間かもしれない。
 そして別の大会でまた会い、ともに走り、互いの健闘を称え合って、「また次の大会で」と別れる。なんという充実感であろうか。

 これは中学高校でも同じだ。レベルの高い大会に行くほど、より陸上に対して熱意を持った人が集まる。それだけその人たちの話は面白い。地区大会で仲間ができたら楽しいが、県大会ではもっと楽しい。地方大会ではもっと、そして全国大会では最高に楽しい。自分の知る最高は全国大会であり、世界ではどのくらい楽しいか知ることはない。だが、きっと言語が違っていても関係なくて、国内の大会よりも充実感のあるものになるだろう。

 私は口下手で若干コミュ症だと自覚している。だが共に走った人とは仲良くなれて会話も弾む。レースで、走りで、ライバルたちと語り合っているのだと気付かされる。そこに言葉を超えた高次な関係性が生まれている。

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