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稀人ハンター・川内イオさんの編集から学んだライターTips①~④

奈良に引っ越してから、おもに西日本で取材をし、寄稿してきた。なかでも、2022年5月から取材記事を寄稿しているウェブメディア「ロコラバ」で掲載した記事は、ライターとして成長するきっかけになったように思う。

今年7月から2ヵ月間ほどこちらのサイトの編集業にも携わらせてもらった。ライターとは違う目線を持つことができてありがたかったです。(Lightroomの使い方を覚えられて良かった!)

ただ、運営者の方針転換により、本メディアはライターの取材記事を取り扱うのが2023年9月いっぱいまでとなった。地域で稀な活動をしている人を丹念に深堀りできる貴重なメディアだったのが、仕方がない。わたしも新しいスタートを切るタイミングだったので、よい区切りだったかもしれない。

今回は、自分が「話を聞きたい」と思う人を取材して、文章にして、読者に伝えるまでに格闘したことをまとめてみる。

10本の記事の編集を担当してくださった稀人ハンター・川内イオさんからいただいたアドバイスも、全部は多すぎてむずかしいけれど残しておきたい。当時のWord原稿と公開された記事を照らし合わせながら、振り返っていく。まずは、ロコラバに寄稿した1本目の記事からです。

書き出しに凝ると、「体言止め」を使いがち

▼人口400人の町で生まれた世界企業。義肢装具会社「中村ブレイス」の2代目が“支える”大切さに気づくまで|島根県大田市

書き出しはいつも迷うのだが、今回は「取材相手のお話を聞いて、風景がリアルだった」「イオさんのような情熱大陸を観ているような原稿にしたかった」という2点の踏まえ、情景から入る形に挑戦した。

まず、指摘されたのは「改行なしのブロックで2文も体言止めを続けない方がいい」ということ。

普段、わたしは原稿を書き終えたら、Wordの音声読み上げで聞くようにしている。文章の飛躍がないかを確認するのがメインだけど、語尾に違和感がないか、助詞のミスはないかなどもチェック。初稿の時点で、2文の体言止めにそれほど抵抗を感じていなかったので、ギクリとした。

この時は、ひとつのブロックに2つの体言止めを使っていた。自分は「問題ない」と思っても、読者が「くどい」と思ったら読み進めてもらえないかもしれない。ただ、自分が「大丈夫」と思っているから、なかなか気が付かない。

ダンスのジャンルでいうと、HIPHOPを見ているのか、バレエを鑑賞しているのかで「心地よい」と思うリズムが異なる。文章にもその題材、メディアに適した言葉のチョイスが必要だろう。1本目ということで把握しづらいところもあったが、「一般的に見てどうなのか?」という視点を持つべきだった。

そして、下記の答えに辿りつく。

俯瞰して原稿を見るために、1日くらい原稿を寝かそう

ライターの学びTips①

おかげで「寝かせるために早く書く」という癖がつき、締め切りの前日には初稿を納品できるようになった。寝かせられなかった原稿は、やっぱり修正が多い印象がある。状況にもよるけど、6割の出来栄えでも最後まで書ききって、1日空けて修正する方が、わたしにとっては良い出来映えな気がしている。

知らぬ間に忍び寄る「こそあど言葉」

そんな過疎化が進む大森町で……」の「そんな」に赤入れ。

最初は「え、何がダメなの?」と思った。今では稀人ハンタースクール内では知らぬものがいない厳禁ワードです。「こんな」「あんな」「どんな」という「こそあど言葉」のひとつだが、いったいなぜ使わない方がベターなのか。

イオさんがライターとして駆け出しのころ、某有名雑誌の編集長に「『そんな』という言葉は便利だけど、なるべく使わない方が文章が上達するよ」と言われたことがあったそうだ。

試しに自分の原稿内の「そんな」を抜いて読んでみると、「なくても伝わるやん!」と思った。いらない言葉を人に読ませる必要はない。前の文章が「そんな」に該当するとしても、不確定要素を読者に委ねてしまうのは、書き手の怠惰かもしれない。使うことで、やや幼稚に見えてしまう。

その一文、「こそあど言葉」は必要か?

ライターの学びTips②

同じ言葉を、何度も使わない

同じ言葉を使い過ぎないことも、読みやすさに繋がる。

「一文に『知り』、『知った』が続いている」
「『思う』という言葉は多用しがちだけど、言い換えられるところは違う言葉にする」

と、イオさんから原稿内からコメントをもらい、「いかに同じ言葉を繰り返してきたか」と我が身を振り返った。よく使う語尾や単語って、人それぞれあります。口癖に似てる。

語尾だけでなく「野球」「サッカー」などの名詞は連発しやすい。「他にどう言い表したらいいの……?」と次の一手が見つからなかったが、イオさんが「球を投げては打つを繰り返す日々は」「ボールを追いかけながら」などとスポーツの動きにフォーカスしながら編集してくれて、「言い換えってすげー!」と感動した。

多用しがちな言葉をストックして、原稿を書き終えたらチェックしよう

ライターの学びTips③

意味を間違って覚えている言葉が多い

「『情熱を燃やす』という言葉はない」というコメント。

「熱を燃やす」と修正が入った。情熱を、燃やす?? 実はわたくし、このような「普通に使ってた! ハズい!」という経験を何度もしています。そもそもその言葉が使われていなかったり、覚え間違いだったり、場面にそぐわない言い回しだったり。正直に言います。10本目の原稿にも、ありました……。

これはもう書いてすぐ気が付く必要があって、わたしの課題。乗り越えたくて、リスペクトする先人の本を読んで、自分の言葉の選択のズレを正そうとしている。

たぶん、「カッコ良く書きたい」と思った時に出てしまう。原稿を寝かせた時に「この使い方は間違ってないか?」と検索したり、辞書を引いたりする。ただ、「正しくはないけど、最近はこういう使い方もアリ」という言葉もあるので、正解を求め過ぎないことも大事。

自分の「正しい」を疑うべし

ライターの学びTips④

まとめ

振り返ると、初歩的な指摘が多いかもしれない。けれど、読み手の脱線を防ぐためには、文章の「?」をいかに減らすかにかかっている。わたしは、最後まで読まれる原稿を書きたい。記事として伝えたいことが、最後にたくさん詰まっているから。

「世の中、読むことが得意な人ばかりじゃない」

これは、ずっと考えている。わたしも得意ではないからだ。本でもネット記事でも、途中で読むのを諦めてしまうことって結構ある。忙しい毎日を送る人が、動きを止めて、文章を読む。それってすごいことだと思う。

最後の最後は、書きたいように書けばいい。ただ、胸を張るにはまだまだ伸び続けなくては。言葉はおもしろい。川内イオさんに編集してもらって、心地よい開き直りができたことが、一番大きな学びかもしれない。

▼下記は、ロコラバに寄稿したその他の記事です。また折を見て、学びをお伝えできたらと思います。

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(記:池田アユリ)

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