天気の子

はじめに

記録的大ヒットとなった君の名はの新海誠の最新作。前作に引き続きキャラクターデザインに田中将賀、音楽にRADWIMPSを採用している。

今回の作品は、晴れを呼び寄せる不思議な力を持つ少女陽奈、そして島を飛び出し東京で暮らす決意をした少年穂高が降り止まない雨の中織りなすボーイミーツガール。

ポジティブな点

相変わらず背景の美麗は他者の追随を許さないものがあり、雷や花火など新しい描写も違和感なく最高の背景を作り出していた。特に今回は作中ほとんどが雨のシーンだっただけに、余計に晴れのシーンの映像に心震わされた。公開前に不安視された本田翼の演技も、蓋を開けてみれば不安の原因とされた決め台詞「君の想像通りだよ」だけが多少の違和感を感じるだけで、その他の演技については気になる所はなかった。また主演二人の演技も違和感なくそこにマッチしていた。

ネガティブな点

ただ全体的な評価としては君の名はに大きく劣る作品であろうと思う。キャリア全体を通してもそう高くはない。君の名はのラストシーンはわかりやすく秒速5センチメートルのセルフオマージュでありファンの反応も良かったが、それに味をしめたのか君の名はのネタが今回も見られる。スターシステムで瀧と三葉が登場するのはまだニヤッとさせられる場面で嬉しくなるが、穂高が定期的に「これってもしかして・・・!」という台詞を発するのは天気の子の質を下げていると言わざるを得ない。観客をバカにしているとまで感じられる。

君の名はは急緩急という全体の構成で話がテンポよく進んでいったが、今回は話の転がり方も良くなく、ベースを丁寧に描いた後挿入歌に細かいコマ割りの映像で話をグッと進めて次の展開へ行くという得意な演出も効果的に機能はしていなかった。その上物語全体のボリュームが多いので、感情移入する前に物語が次のフェーズに進んでしまい、結局見終わるまでキャラクターに没入する事が出来ずじまいだった。これらの脚本については、Netflixなどで8話程度の連続アニメーションで作られれば満足いくものになっていただろうと思う。

おわりに

今回改めて新海誠という監督は物理的に会えない男女のボーイミーツガールを作る事に優れた監督なんだという事がわかった。会えないもどかしさや葛藤などを脚本に組み入れた時の映像は目を見張るものがあるが、そうでない場合の男女になると途端にチープさが臭いたつ。いってみれば携帯電話が普及する前のトレンディドラマのようなそういう作品が主戦場なんだろう。

秒速5センチメートルからを映画館に繰り返し観に行った頃からのファンでもあるので、個人的には再びタッグを組んだ田中将賀、RADWIMPSとはここで一旦お別れし、また新しい形で作品を作ってくれる事に期待したい。


6.5点

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