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夏の終わりを閉じ込めて【BaseBallBear・ASIAN KUNG-FU GENERATION】

BaseBallBear主催の対バンライブ「I HUB YOU」

2018年から始まり、2022年の冬に二回目の開催があったこの企画。
「BaseBallBearが、対バンライブを主催!」
という文言を見た瞬間から、私は限りなく0に近いほんのわずかな期待をせずにはいられなかった。
それはそれは昔、ベボベと交流があったあのバンドとの対バンが実現するのではないか、と……!

しかしながら、現実はそう期待通りにいかないもので、
「I HUB YOU」三回目となる今回もやっぱり私の勝手な期待はあっさりと打ち破れてしまった。
しまった、のだが、
対バン相手の発表を見て、私は2度見、いや、3、4度見くらいした。
そして開催地を見て更に仰天した。

「I HUB YOU」8月26日の大阪公演。
Base Ball Bearが対バン相手として招いたのは、

ASIAN KUNG-FU GENERATION だった。


きっとこれは神様の思し召し

正直、開催地が東京だったなら。
「あ〜行きたかったなぁ〜……見たかったなぁ〜……豪華対バン……」
という嘆きの一言で幕を閉じていたと思う。

「行きたいライブには進んで行く!」が私のモットーではあるが、
対バンライブが発表された時、私はまだ転職先も決まっていなかったし、貯金を崩しながらの生活をしていて、遠征はおろか行きたいライブの数々を断念していたのだ。
ライブの日程が発表されるたびに、カレンダーを確認するものの、先のことが何も決まっていない状態でチケット確保できるほどの余裕は私にはなかった。

だからこそ、ベボベとアジカンの対バンも、東京開催であれば、私は簡単に諦めがついていたのだ。
しかし、何度見返してみても、開催地は大阪だった。(しかも会場は個人的に好きなライブハウス、Zepp Osaka Bayside……)


即決したい気持ちをぐっと堪え、
チケット先行販売開始!の文字を見なかったことにして、私は目の前の転職活動に集中することを選んだ……(我ながら本当にえらい…)


一般販売日が来れば、きっと即完になるライブだ。
チケットサイトの「Sold Out」の文字を見て、
「ライブ開催を知るのが遅すぎた…!!もっと早く知っておけば……!!」と後悔すればいい、と投げやりに思った。
アジカンとベボベがライブをするなんて、そんな情報、私は”まだ見ていない"のだから。
そうやって自分を騙して、なんとかライブのことは忘れることにした。
ライブよりも自分の将来が優先だからこの選択は正しいんだ、と何度も自分に言い聞かせた。


それから随分経って、
6月末に転職先が無事決まった。
貯金を切り崩しながらの生活にやっと終わりがくる!という安心感が何より大きかった。
そして、ふと、思い出したのだ。
私が諦めたかったあのライブのことを。

チケットSoldOutの文字を見て、
「あ〜〜もっと早く知っておけば……!!!」
と後悔して次のライブへと思いを馳せるために、私はeプラスの販売ページへと進んだ。

一般販売から何日も経っていたはずだった。
でも、何度ページを更新しても、そこには

「大阪公演:販売中」

の文字しか見当たらなかった。
私はまたしても3、4度見した。


アジカンとベボベの対バンが即完じゃない…???
会場の収容人数は相変わらず規制されたままだろうし、いくら平日とはいえ、対バンツアーのファイナル公演でもあるこのライブが、チケット残数僅かの△にすらなっていない、なんてこと…あるの………???

チケットが残ってて嬉しい!!!
という感情よりも先に、なんだか申し訳ない気持ちになってしまった。
「Base Ball Bear」と「ASIAN KUNG-FU GENERATION」、私からしてみれば、これはとんだビッグネームの激レア対バンライブなのだ。
ツアーファイナルとして大阪公演を選んでくれたのも嬉しかったし、それがZepp Osaka Baysideであることも嬉しかった。そして何よりその対バン相手がアジカンであることが本当に嬉しかった。
なのに、まだチケットが残っているだなんて、
これじゃあまるで私たちが、「別にこの対バンは待ち望んでないんよな〜〜〜」と言ってるようなものじゃないか…!!!!


8月26日は金曜、平日。
その日は私も普通に仕事がある日だった。
早めに上がれたらスタートから見れるけど、どうかなぁ、、、なんて考えるより先に指が動いた。
まだ仕事も始まっていなかったから、職場の様子もわからないし、残業で行けない可能性ももちろんあった。
それでも、先のことが少しだけ決まっていた私にとって、「ライブに行かない」という選択をする理由なんて何一つなかった。

アジカンとベボベが対バンするっていう情報を、このチケットページで私は知ってしまった。
チケットを購入する理由は、それだけで十分だった。


高揚の集う場所

久々のライブ、というほど久々じゃなかったけど、それでもやっぱりライブ会場に着くまでの道は、本当にワクワクしっぱなしだった。

チケット購入後少しだけ不安に思っていた、
果たしてスタートに間に合うのか問題、についてだが、予想外にあっさりと早上がりさせてもらえることになり、余裕でスタート時間に間に合った。
なんなら会場に着く前に、バンドTシャツに着替えてライブ仕様の身支度をするくらい余裕があった。(ちなみにTシャツはアジカン、タオルはベボベ。そしてベボベのパッチンバンド装着、という私なりの最強の装備である。)

身支度を整えた後、電車に揺られながら私は会場へと向かった。
電車内でもちらほらとアジカンやベボベのグッズを身につけている人を見かけたが、会場の最寄である桜島駅に着くと、そういう人たちで溢れかえっていた。
駅を降りて会場へと向かう間に何種類のTシャツを見たことだろう…
今回の対バンツアーT、過去のベボベTシャツ・アジカンTシャツ、グラニフコラボの中村さんのアジカンCDジャケ絵Tシャツ……
今目の前にいる人たちはみんなアジカン、ベボべが好きなんだなぁ、、、
なんて当たり前のことを思いながら、みんなの「好き」が一堂に会する様がなんだか無性に嬉しくなって、マスクの下で満面の笑みが溢れた。不意にスキップしちゃいそうなくらい嬉しくなった。

私が桜島駅に着いたときにはオープン時間を既に過ぎていたこともあり、会場へと向かう皆の歩みもどことなく早足だった。
言葉に出してなくたってわかる、溢れんばかりのワクワク感。

ライブはもちろんながら、やっぱりライブ前のこの空気が堪らなく好きだなぁ…と改めて思った。
そして、「アジカンとベボベ」という奇跡のような対バンを見れるという事実に、周りも、私自身も、高揚していた。


▶︎ASIAN KUNG-FU GENERATION

『Re:Re:』
よくよく振り返ってみれば、アジカンがゲストとして呼ばれるライブに、私は今まで行ったことがなかった。
メジャーどころ中心のセトリかなぁ、なんて想像しながら、ワクワクそわそわふわふわした気持ちでその時を待っていたのだが、
聞き馴染みのあるイントロが鳴り響くと、頭の中であれこれ予想していたセトリを放っぽり出してしまい頭の中が空っぽになった。
なにせ一瞬にして頭の中が空っぽになってしまったので、あまりよく覚えてないけど、あのイントロが聞こえた瞬間にガッツポーズくらいはしちゃった気がする。


1曲目にして会場全体の高揚感が天井まで突き上がってきた…!というのに、
「アジカンの音楽はこんなもんじゃないよ」とでも言うかのように、
『リライト』『ソラニン』と、彼らを代表する曲たちが続いた。

目の前で繰り広げられる彼らの全力の音楽に圧倒されて、私はなんだかぶっ倒れそうな気持ちになっていた。
アジカンのライブは実に3年ぶりだったのだが、彼らはこんなに凄まじいバンドだったのか、、とただただ圧倒された。
そして清々しいほど自然体なステージ上の彼らに眼差しを向けた。


「彼らが学生服着てた頃、なんというか、キラキラしてたんだよねー」
「当時彼らからもらったテープ(CD?)、俺今でも持ってるんだよねー。タバコのイラストが描かれててさ。あれ今出したら問題になるよなーって思って(笑)」


ベボベとの出会い、当時の思い出を話すゴッチ(アジカンvo)は、
自分の中にある宝箱の奥底から取り出したものを大切に手に取って、
「これはね、」と、一つ一つ私たちに話してくれてるような感じがした。

「小出くんは、若いけど、若老人になるのが早かったからねぇ」
なんて笑い話も交えながら。(笑)


後のベボベのMCでこいちゃん(ベボベvo)が言っていたように、
アジカンのセトリはまさに「ハンバーグ→冷やし中華→ハンバーグ」だった。
(これの説明については後ほど出てくるので、よくわからない人はそのまま読み流してほしい。笑)

思い出話のMCを挟んだあとは、冷やし中華がやってきた。
『You To You』『触れたい 確かめたい』、そして9月にリリースとなった新曲『出町柳パラレルユニバース』と続いた。(新曲とても好き……MVも好き……!)


「CRAZY FOR YOUの季節が〜♪って、どんな季節かわかんないけどさ、
あー、そういうのわかる、そういう気持ちわかるな〜っていう、
そんな感覚が大事なんだよなぁ、って思うんだよね」


曲は言わずもがな、アジカンはライブが特別素晴らしい。
縦にも横にもノれる曲たち。お客さんの音楽を自由に楽しむ姿。
そして、「全てを言葉にしなくてもいいんだよ。なんか好きだな〜いいな〜っていう感覚でいいんだよ。そういうのって素晴らしいよね」と、
目の前の素晴らしい音楽で突き動かされる感情をうまく言葉にできない、そんなもどかしさすらも全てまるっと肯定してくれるゴッチのMC。
音楽は自由で、楽しみ方に正解なんてない。
誰にでも平等にある素晴らしいものなんだ

ってことを、アジカンのライブを見るたびに、私は何度も思い知らされる。


『荒野を歩け』が会場に響き渡ったとき、私は手を掲げて、心の中でスキップしながら歌った。そして曲が進んでいくと、高く突き上げる手が私の視界に入ってきた。隣にいる人が私に負けじと手を掲げていたのだ。
目の前の音楽を同じように浴びて、いいな〜楽しいな〜って思えているこの瞬間。
ライブハウスにある全てが、目の前で繰り広げられる音の世界に取り込まれるような、この瞬間。
そんな非日常的で特別で異様な光景が、たまらなく心地良い。

たくさんの幸福を浴びて、なんだかお腹いっぱいになっていたけど、この高揚感を更に高めて次のバトンへと繋げてくれるのが、アジカンだった。

『君という花』
そう、〆パフェならぬ〆ハンバーグである。
わっと沸き立つ歓声が聞こえた、ような気がした。
そんな幻聴が聞こえてくるほど、会場が一つになっていたのだ。


本当に、1曲目の1音目から最後の1音まで、驚くほどずっとワクワクさせられっぱなしだった。(何回心の中でガッツポーズをしながら歓声をあげたことか…)


アジカンは最後の最後まで会場の温度を上げ続けたまま、
そのバトンはベボベへと繋がれた。


▶︎Base Ball Bear

8月26日は、秋の気配を感じる風が吹いていて、夏の終わりが近いことを私は肌で感じていた。
秋風が吹いていたとしても、暦の上ではまだ夏だった。

『senkou_hanabi』
夏が終わる前に聴いておかなくちゃ、と思い、会場に行くまでの間にいそいそと再生していた曲が、まさか1曲目に来るだなんて全く予想だにしていなかった。
(人気曲だろうけど、B面曲なので尚更対バンツアーである今回聞けるとは思っていなかった。)
恐らく会場の9割は私と同じことを思ってたんじゃないだろうか。
もしくは「待ってました!」という思いの人が多かったのかもしれない。

というのも、ギターが鳴って曲が始まった!と認識すると同時に聴こえてくるあの歌詞に会場全体が沸き上がったからだ。
もちろん無歓声だったので沸き立つ歓声はなかったけれど、会場の温度が5度ぐらいぐんっと上昇した、気がした。


1曲目。1音目。1秒で。

アジカンのライブが終わって会場中に散見していた熱を、ベボベはひとつにかき集めて鮮やかに掻っ攫っていった。
それほどまでに、一瞬でベボベのステージへと塗り替えられたのだ。
それも、会場中がハッとするほど自然なまでに。
観客が目の前の彼らの音楽以外のことを考えられなくなるくらいに。

ワンマンライブでは見ることができないこの光景に、ぞくっとしたし、思わずニヤリと笑みが溢れた。
これだから、対バンは堪らなく面白いんだよなぁ、、やっぱり今日このライブを見過ごさなくて良かった……!と私は自分の選択を称賛した。


会場の温度を一気に上げて、そのまま温度を上げ続けるのが、夏バンドとも謳われるベボベの強さである。
『真夏の条件』『short hair』『Summer Melt』『海へ』
MCを挟みながら、夏曲を中心とした演奏が続く。
会場の熱気も相まって、
季節が夏の終わりを告げる前に、彼らが夏を連れ戻してきた、
そんな感覚になった。


印象的だったのが、MCの一言目。
「アジカンのライブ、凄かったよねー!!」
と、声高らかに、興奮気味に私たちに向かって話す、こいちゃんの姿。
そして、その言葉に、うんうん!と大きく頷く関根嬢(Ba)と堀くん(Dr)の様子だった。

「会場のみんなが思っている以上に俺ら感慨深いのよー!!」
「当時のライブ(ゴッチも言っていたライブ)のタイムテーブル、大事に持ってたから!!」
と、こいちゃんは写真に収めてきた当時のタイムテーブルをドドンっ!と私たちに見せびらかし(実際に携帯を観客側に向けてた笑)、そのライブの企画者名、入り時間、リハスタート時間まで事細かに読み上げてくれた。(笑)
ウキウキした様子で当時の思い出を語るその様は、ゴッチが言っていた”キラキラした彼ら”そのものだった。



そして、「バンドを洋食屋に例えると、」という前置きから始まったのは件の冷やし中華の話だった。

「洋食屋さんでハンバーグを頼むお客さんに対して、俺らはハンバーグじゃなくて、冷やし中華を出すバンドなのよね」
「でも、アジカンは、ハンバーグを出してくれる。しかもそのあと冷やし中華が出てくる。そしてハンバーグで締めるのよ!すごいよね!」


初めのMCでこいちゃんが今回の対バン発表に対する反応について少し触れていたのだが、
「アジカンもベボベも青春時代の思い出!」
「懐かしい!!」
という思いでこの会場に足を運んでいる人が多いであろうことは、私もなんとなく感じていた。


青春時代を彼らの音楽で過ごしてきた人たちは、この対バンを、彼らの音楽を、卒業アルバムをめくるような気持ちでこの会場に足を運んだのだろう。
さながらこのZepp Osaka Baysideは、昔ながらの思い出の洋食屋さんで。
懐かしい空気に思いを馳せながら、当時を思い起こすハンバーグを、私たち観客は無意識に求めていたのかもしれない。
そして、その定番のハンバーグはやっぱり想像通りに美味しくて。
そして、懐かしさに浸っていると、あの当時は目移りもしなかった、頼むこともなかった冷やし中華が急に目の前にポンっと出される。
戸惑いながらも、一口食べてみると、あぁ、これも美味しい…!と新たな出会いにびっくりする。
あの当時知ることもなかった洋食屋さんの新しい美味しさ。
ハンバーグと冷やし中華。洋食と中華。ジャンルは全然違うけど、どっちもちゃんと美味しいね、と嬉しくなる。洋食屋が冷やし中華???なんて疑問はきっと抱かない。
ハンバーグが好きなんじゃなくて、この洋食屋さんが好きで、変わらない美味しさと新しい美味しさを味わうことができたから。

こいちゃんがバンドを洋食屋さんに例え出した時には、疑問しか浮かばなかったけれど、架空の洋食屋「BaseBallBear」、洋食屋「ASIAN KUNG-FU GENERATION」を想像してみたら、どちらも世代を超えて長く愛されるお店なんだろうなぁ、と思い、そして妙に納得してしまった。



音源だけでは伝わらないバンドの魅力の一つとして、ライブのMCが挙げられるんじゃないかと私は思う。
そして、ベボベもそんなバンドの一つである。
熱のこもった熱い思いを語ってくれるMC、ではなくて、こいちゃんのMCはむしろその真逆で、一切取り繕った感じがしない、綺麗な言葉ばかりを並べたりしない、自然体なMCなのだ。
「そういえばね」と話しかけてくれる旧友みたいな感覚に陥るようなMC。
そんなMCも相まって、なんだか本当に親しい友人と懐かしの洋食店へと足を運んでいるような感覚になっていく。

アジカンやベボベを「青春時代のバンド」と括ったが、両バンドとも私の青春時代のBGMではなかった。
彼らの楽曲が青春時代を彩ってくれていたらどんなに素晴らしいものだっただろうか、と、少年少女のようなキラキラした眼差しでステージに目を向ける観客の姿を見て少し羨ましく思った。
きっと彼らの十数年前の夏は、カセットテープを再生するみたいに、ポチッと再生されているんだろうなぁ。
そして、私は架空の青春時代のページを今この瞬間に創り上げるかの如く、目の前の音楽をしっかりとこの身体に刻んだ。
私の青春は今だ、と言わんばかりに。彼らに負けないくらいキラキラした眼差しでステージへと目を向ける。

みんなのような思い出のカセットテープを持っていなくても、
夏も、青春も、キラキラしたものは全部、彼らが連れてきてくれる。

私にとってBase Ball Bearは「青春時代のバンド」じゃなくて、
「青春を創り出してくれるバンド」なのかもしれない。


▶︎アンコール

ツーマンライブで期待せずにはいられないのが、ゲストバンドとのコラボ。(必ずあるとは限らないけれど)
アンコールの拍手が鳴り響き、再度ステージに現れたベボベは、今回のツアーでアンコール中に披露してきたAパターンとBパターンについて話し始めた。
ゲストバンドの曲を演奏する、Aパターン。
ゲストを招いて一緒に演奏する、Bパターン。


その説明の時点で、私の心は浮き足立っていたのだが、
「今回は特別にCパターンです!」
と宣言され、喜多さん(アジカンGt)がギターを持ってベボベの3人と並ぶ光景は、本当に夢かと錯覚したほどだった。

喜多さんは、こいちゃんのMCについて少し触れ、(冷やし中華の話を始めた時はどうなるかと思ったよ笑、との言葉に思わずこちらも笑ってしまった笑)
皆が楽器を手に取る姿を見て、いよいよアンコールが始まる!!なんの曲がくる!!?と会場全体がワクワクに包まれる空気を感じ、ステージへと熱い視線を注いだのも束の間、
「やだー!まだ終わりたくないーーー!このままずっと演奏してたいーーー!」
とこいちゃんが急にステージ上で駄々をこねだしたのだ。笑

MCでも言っていたが、今回のライブは私たちが思っている以上に彼らにとって相当感慨深いものなのだな、と思い知った。
きっと彼らはキラキラしていたあの時の気持ちを持って今ステージに立っているのだろう。
"楽しいから終わりを迎えたくない"
そんなライブを今こうして見れていることが何より嬉しく感じた。

そんなこどものような我儘を言った後、「そんなわけにもいかないからね、」と大人の顔に戻り、いよいよアンコールが始まった。


『ループ&ループ』
アジカンの曲は、これまでにもたくさんのアーティストがカバーしてきているが、ベボベの『ループ&ループ』は見事なまでに原曲リスペクトな演奏だった。
歌が始まるまで、アジカンのライブを見ているような感覚に陥ってしまうほど。
そして、こいちゃんの歌声が聴こえてきた瞬間に、アジカンの皮を被ったベボベが現れた。もちろんしっかり目の前の演奏を見ていたものの、思わずステージ上を凝視したし、目の前の光景がやっぱりにわかに信じられなくて、心の中で大きな歓声をあげた。
メロディは原曲リスペクトでありながら、歌を聴くとちゃんとベボベで、そこに喜多さんのコーラスが重なるので、頭の中はずっとプチパニック状態だった。笑

確かに言えることは、
目の前の演奏は後世に語り継ぎたいほど、なんともスペシャルで贅沢なものだった、ということだ。


……なんともすごいものを見てしまった。
会場中に大きな拍手が鳴り響き、喜多さんがギターを置いてステージを後にした後も呆気にとられたまま心ここに在らず、という感じでポカーンとしてしまった。
もうすぐこの贅沢なライブが終わってしまう、そんな寂しさも感じていたが、そんな気持ちはすぐに何処かへ行ってしまった。

「また来年の夏に会おう!」

というこいちゃんの力強い掛け声で、私の心はここに呼び戻された。
カラッと晴れた青空みたいなギターメロディが響く、アンコール2曲目、『PERFECT BLUE』

ステージ上の眩いライトは太陽に見えた。
私たちの頭上には青空が広がっているように思えた。
確実に今は夏だ。

今年もベボベが夏を連れてやってきた。
そして、この夏のトビラを閉じるのも彼らだった。



I HAVE YOU

8月26日。
夏の終わりの夜風はもうすっかり秋の顔をしていた。
今年の夏はあの会場に置いてきたのかもしれない。

長く続いているからこそいろんな変化を見せてくれる、これからも走り続けてくれるであろう青春時代のバンド。
アジカンもベボベも、"あのとき"の思い出のバンドにとどまらず、現在進行形で新しい面を増やして進化を続けるバンドだ。
"あのとき"だけじゃなく、いつまでもキラキラしているバンドだ。

私はこの夏の終わりに見たキラキラの光景を一生忘れることはないだろう。



きいろ。


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