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『プリンセスと魔法のキス』を観て

2009年に公開されたディズニー作品『プリンセスと魔法のキス』を観ました。
音楽・情景・物語どれを取っても良くできている…というか。
ただ単にすごく良い音楽・すごく良い情景・すごく良い物語を足し合わせてるわけではなく、
「ニューオーリンズが舞台」で、「それぞれの夢を持つ生き物たち」が「本当に大切なものを探す」というテーマに沿った、
この作品ならではの描写がより印象的に感じさせるのかな、なんて。

物語のあらすじは、自分のレストランを持つことを夢見て働くティアナと、自由とお金を求めてドクター・ファシリエにカエルに変えられてしまったナヴィーン王子が、
人間に戻る方法を探してそれぞれの夢を持つ仲間に出会っていくお話。


カエルになって見える景色は、考えているより美しいのかもしれない

作中ではアーティスティックでカラフル…端的に言うとなんかめっちゃおしゃれな情景がたくさんある。

例えば、ワニが藻を分けて泳ぎながら水面に作る模様。
例えば、夜の森を数多の蛍が街頭みたいに照らす様子。
例えば、タンポポの綿毛に光る水滴。

自分の夢のためにウェイトレスとして働き続けたティアナと、
王子として大理石の城で遊んで暮らしてきたナヴィーン。
それらは、2人が今まで1つの生き方をしていて見えてこなかった景色が、
カエルになったことで視点が変わって見えている描写なのかなと思った。


人には夢がある。人以外にも夢はある。

主人公のティアナを含め、登場人物達が持つ"夢"はこの物語の中で大きな意味があると思う。

自分の店を開くために働き続けるティアナ。
自由気ままに、遊んで暮らしたいナヴィーン王子。
小さい頃からプリンセスになることを夢見るティアナの友達であるシャーロット。

「星に願いをかけただけじゃ願いは叶わないわ」

王子様が来るよう祈るシャーロットに対するティアナの言葉は、
「星に願いを」をテーマ曲の1つとするディズニー自身の皮肉みたいにも聴こえる。

カエルになったティアナとナヴィーンは、沼地を彷徨う中で他にも"夢"を持つ生き物達に出会う。

いつか人間達と一緒に演奏がしたいトランペット吹きのワニ。
夜空に浮かぶ一番星に恋をする蛍。

人と生き物たち、それぞれが自分の抱える夢と向き合っていく。


本当に大切なものは、夢を叶えることなのか

一見不可能そうな夢を持つ登場人物たちも、信じることによって最終的に魔法の力で願いが叶ってみんなハッピー!
…とならないのがこの映画の一番好きなところ。

「みんな望むものは分かっていても、必要なものは分かっていない」

これは、旅の途中で出会う魔法使いママ・オーディが、人間に戻してほしいと頼むティアナ達に言うセリフ。
ティアナとナヴィーンそれぞれが持つ夢に対して、望むものではなく必要なものを考えてみて、と説く。

ドクター・ファシリエはティアナに「お前の父親は毎日働き続け、夢を叶えることもないまま死んだ。お前もそうなりたくないだろう?」と囁く。
その時、ティアナは「父さんは夢を叶えられなかった。でも本当に必要なものが何か分かっていたんだ」と気づいた。

すべての生き物にとって夢を叶えることだけが幸せで、それ以外は不幸であるなんて、そんなことはない。
「すべてのものに本当に必要なものは夢ではなく愛である」ということが、
この物語の中でティアナ達が気づき、見ている人たちに教えてくれる最大のテーマだと感じた。


ディズニーは、すべての人の生き方を肯定してくれる

わたしのディズニー作品のとても好きなところは、その時代に沿った多様な価値観を描いてくれるところ。
ディズニー映画はそれまで『ピノキオ』や『シンデレラ』など、”夢”を題材にした多い側面があった。

「信じ続けていれば、夢はいつか絶対に叶う」

これはシンデレラの有名なセリフ。

それに反して『プリンセスと魔法のキス』では、前述した通り「では、一番大切なものは夢なのか」という疑問を投げかけてくる。

信じ続けて夢を叶えたシンデレラがいれば、夢を追った末に夢より大切な愛に気づいたティアナがいたって全然良い。
そんな肯定と寛容さを教えてくれるディズニー作品を、わたしはずっと大事にしたいと思う。


まとめ

夜空の一番星に恋をする蛍のレイモンド、彼の夢の終着は最後まで想像できなくて、その上で作中で最も感動した部分でもある。
記事中では深く触れていないけれど、ティアナが出会う仲間たちのお話もとても良いのでぜひ見てほしいです。

あとは序盤だとどうみてもティアナのライバルになりそうなシャーロット。
彼女がただの噛ませ犬でなく、観ていくうちに友達思いの快活な女の子であることが分かるのもこの映画の大好きなポイント。

みんなこの映画を観て、ニューオーリンズに夢見ながら踊ってほしい。
では、ビビでした。

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