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夏のせい。

※この話は完全なるフィクションです。

大学の仲良しグループでカラオケに行った。
サークルが同じ人もいればサークルが同じ人と同じサークルの日もいる。なんとなく前に遊びに行って、今度はカラオケに行こうと話が出た。

会も煮詰まってきて、誰かが「隣に座っている人にのために選曲しないか」と提案した。

はじめにマイクを受け取った男の子は女性シンガーが歌う可愛らしい片想いソングを歌って右隣の男の子に「この気持ち、受け取ってください」とマイクを差し出した。

冗談らしく愛を歌う人もいれば、二人で見たという映画の主題歌を選曲する人もいた。

私が選んだ曲は、

夏のせい 夏のせい 夏のせいにすればいいからさ
冷たいくらいがちょうどいい

ラブホテル クリープハイプ

あれは多分夏休みが始まって2週間くらい、お盆の前の平日のこと。
突然『今日暇だったら新宿に行かない?』の着信。

暇すぎてベッドに生える苔になりそう、という私のツイートを見てか、そもそもTwitterなんてしばらく開いてないかわからない。
が、唐突に連絡が来た。

接点はこれと言ってない。
サークルが同じらしいが、新歓で見かけたきりで、連絡先を交換したのは友人に誘われてグループで出かけた時。
その時はそれなりに話したけど、正直それきり。そんな人。

数日人に会ってなかったし、暇だったので、
『今日の夜、お友達の家でホームパーティするけどそれまでならいいよ』
と返信した。

複雑を極める新宿駅でなんとか落ち合って、
比較的涼しい日だったのもあって新宿御苑を練り歩き、駅前の適当な飲食店でお茶をして、大学の近くで一人暮らしをしている友達の家へ向かう電車に、同じく一人暮らしをしている彼と一緒に乗った。

途中、
これは、デートですか。
どうでしょう、お嬢さん。エスコートいたしますよ。
なんてふざけたやりとりがあった以外は適切な距離で、適当な話をした。

彼のアパートは大学から3つ先の駅だが、大学の最寄りでわざわざ降りてくれて、友達の家の近くまで送ってくれた。

今日は突然だったのにありがとうね。
いやいやこちらこそ、楽しかったよ。

決まり文句の別れの挨拶を済ませて立ち去ろうとしたその時、
じゃあね、と掲げた手を掴んで引き寄せ、



なんの前触れもなく。

…え、なんで?

数秒の沈黙の後に、
んー、なんとなく。
それじゃ夏休み明けにね。

とだけ言い残し、
曲がり角に消えた。

結局残された夏休みの1ヶ月、会うこともなければ連絡を取ることすらなかったし、
夏休みが終わって学内のコンビニでたまたますれ違った時も、

あ、久しぶり。
久しぶり〜。


のそれだけ。


そうして今日、隣に座っていたわけですが。

夏のせい 夏のせい 夏のせいにしたらいい
それでもダメなら 君のせいにしたらいい
これから季節が冬になってしまったら
誰が 温めてくれるんだよ

今でも 
忘れられないよ

ラブホテル クリープハイプ

冗談めかしか冗談か、いずれにしても。


なんでその歌?
答える言葉は、なんとなく。


2023.8.28

追記:
こんな恋と呼ぶには及ばない、かといってどこかに焼きついているようなそんな一夏の、(いやもっと短いかも。)思い出があったらどうだろう。なんて夏休みの終わり頃に書いた妄想を、今更ながら投稿してみました。
逆に時期的にリアルになったかな?笑
恥ずかしくて例の二文字は消してしまいました。

来年の夏は恋がしたいです。

2023.11.5


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