職場で厚顔無恥な不遜人間にやり返してしまった話

 とある地方自治体の非常勤職員として2年ほど働いているのですが、昨年度に同じ非常勤として入職してきた30代の女性が、最初からなぜか私のことを下に見てくるのです。入って3カ月もしないうちから。チームが違うので当初はあまり接点がなく、どのような人なのかよくわかっていませんでした。ただ数少ない接点の中でも最初から「苦手なのでその作業は絶対にやりません」とか、チームリーダー同士の作業確認に呼ばれてもいないのにしゃしゃり出てきて「こうしてください、それだと困るんですっ」みたいなことを平気で言う人でした。発言する立場でもなければ決める権限もない、誰もあなたに聞いていないのだけれど。しかも後者に関しては、その人の所属するチームの作業の遅れを、こちらチームがカバーするための話し合いです。話が決まって相手リーダーが「本当にすみません、お願いします」と私たちに頭を下げた側で「お願いしまーす」と顎をつきだして言い放ったのでした。

 少し触れてしまったので、思い出すままにこの人の厚顔無恥行動を挙げたくなってきました。見苦しいことを承知で書きます。この人はとにかく図々しいのです。

 お昼の20分前には仕事をやめて「休憩の準備」に入り、就業の時刻の5分前には車に乗り込んでエンジンをかけ、定時のチャイムが鳴ると同時に(←大げさでなく本当に)アクセルを踏んで帰っていきます。自分のチームの仕事であっても、後片付けも(ちなみに準備もです)しません。理由は「預けている子どものお迎えが1分でも延長料金を取られちゃうんで」。でもお菓子が配られたりするときには定時を過ぎてもうろうろしています。

 あるときこちらチームのヘルプに入ってもらったことがありましたが、不服そうに終始ギャーギャーと大きな声でおしゃべりをした挙句、2段の脚立を指して「こんな脚立に上る作業をして万が一ケガでもしたらばかばかしいので、ここからは絶対にやりません」とまたまた言い放ちました。私は目の前で脚立の最上段に上っている最中で、ほかにも手が足りないことから部署を越えて応援にきて、脚立に上って作業していた女性たちが何人もいたにもかかわらず。むしろあえてデカ声でわめきたてて、周囲の人に聞かせたいようでした。自分は特別な人間だとアピールしているつもりなのでしょう。そして休憩時間の20分も前から一人で作業室の外へ出て「もう休憩なのになに作業を続けているんだよ」とでも言いたげなイライラを隠さない態度でうろうろし、それでもこちらチームの正職員上司から「終わり」の合図が出ないものですから、勝手に引き揚げていきました。こちらチームの正職員上司は大学を卒業したばかりのとてもおとなしい女性で、何も言わない人なので端からなめてかかっているのです。お迎えとか延長料金とか関係なく、まじめに働くつもりがなく、そしてただただ、自分のチームの上司以外を下に見下しているのです。チームはいくつかあって、どのチームにもそれぞれ正職員上司が1人いるのですが、件の女性のチームの正職員上司が、その正職員たちのリーダーなのです。それを笠に着ているのでしょう。たいした笠でもないのですが。

 この人は人を見下していることを隠しきれないらしく、初めて挨拶以外の会話をしたときには「泥泡さんって年齢きかれたら怒るタイプですかあ~?」と、複数人の前でおおはしゃぎな大声で質問して、あえて答えさせようとしてみたり、上司のいないところではこちらが差し出した書類を受け取るのにも、顔をそむけて片手だけ出してきます。自分がツケで購入した物品の代金を払うにも、側まで来て渡そうとするのではなく「お前が取りに来い」とばかりに遠くからこちらを呼ぶ始末です。

 私にだけそうするのかな、と思っていたら、私と同じチームの男性(前出のこちらチームの非常勤リーダーです)は、初日から笑顔で挨拶しても完全に無視されたそうです。顔までそむける、と。最初は人見知りなのかな、慣れたら返してくれるかなと思っていたそうなのですが、どうも変な態度でずっとそうなんだよ、と。自分のチームの正職員男性上司にだけは初日から愛想よくべらべらと超デカ声でおしゃべりしているので、人見知りの線は薄いように思います。こちらチームの非常勤リーダーが何か嫌なことをしたのではないか、と考えてしまうかもしれませんが、これも可能性はかなり低いと思います。リーダーは人柄も態度も一本筋の通った人間だと、少なくとも一緒に働く私にはそう映りますし、そもそも、件の女性と私たちが共有する時間や空間はほとんどなく、あっても必ず複数人が居合わせるので、堂々とでも、こそこそとでも、嫌がらせしたりするようなチャンスは皆無と言ってよいのです。

 「まるで理由が思い当たらないのですが、なぜ私たちはこんなに見下されているのでしょうか」とぽろりと口に出してしまったところ、リーダーはこんなふうに言いました。「僕は何年もここにいていろいろな非常勤職員を見てきているから言えるんだけど、なぜか自分は正職員と同じ立場だと思って、ほかの非常勤職員を下に見る人が一定数、いつもいるんだよ。自分は上の人間だ、指示や業務命令を出す立場だと。一緒に作業するときでも正職員上司の目が届かないのをいいことに“お前らと同じ作業なんてしない”と、あからさまな態度を取る。そういう人たちは不思議なことにまったく同じ行動をするんだ。初日から誰が正職員かとか、そういうことばかり見極めようとする。こちらが非常勤とわかれば、関わるだけ労力の無駄遣い、とばかりに話しもしてこないし、助け合って作業しないといけない場面でも打ち合わせも相談もしない。仕事のしかたもわからないうちから、自分勝手なやり方で初めて、まったく終わってもいないのに「終わりました」と言う。一方で正職員とは実に気が合うようにキャッキャウフフと常におおはしゃぎして、こちらを輪に入れないようにする。正職員となんでも話せるような雰囲気を作って、ほかの非常勤職員は知り得ない、うちうちの情報を聞いたりして、自分のことをますます正職員と同等だと勘違いしてほかの非常勤を下に見るようになる」。

 不思議な話だと思いましたが、リーダーいわく「1年ごとの契約だから、頻繁に人が入れ替わる職場なんだけど、不思議なことにこういう人たちが必ずいて、同じ行動をするんだよ。人数が少ないときにはまだ耐えられるんだけど、こういう人がたくさんいた数年間もあって、そういうときはとてもおかしなことがたくさん起きるよ」。ここへきて湧いてくるのは上司たちへの疑問です。「だって、周囲の人たちが“あの人こんな態度をとっていますよ、仕事も全然しませんよ”とあちらの上司に報告してしまったら、一発で知れてしまうのに。そんなことするでしょうか」と聞き返すと「上司は、関係性が遠いほかのチームの非常勤が言っていることよりも、仲の良い部下が自分に見せている顔を信じるよ。ああいう人たちはそのために上司と仲良くしているのだから。しかもあの人たちは賢いから、上司の前では徹底して“よく働く、善人”を演じるからね」。本当にそんな演技が通用するのかなあ。人間の対人センサーってすごく精妙で、接しているときの目の動きとか声色とか少しの言い回しでも敏感に信頼できる人かどうか、察知できる(というか、してしまう)と思うんだけどなあ。リーダー曰く「あの人たちは普段からこういうことだけを考えている、“プロ”なんだよ。上司と一緒にいるときだけは普段は絶対にしないような張り切り方をして難儀な仕事も率先してやって、僕らとも笑顔で話したりする。まあ見ていてごらんよ」。この数日後、このときのリーダーの言葉が、笑ってしまうくらいにそのまま再現されたのでした。実際に件の女性は上司が一緒に現場に入る作業のときはきびきびとよく動き、時間が来ても休もうとせず、私たちに対しても白々しいほど朗らかに話し掛けてくるのでした。

 のちにわかることなのですが、件の女性は自身の夫が別の部署に所属する正職員ということでした。この夫からいろいろ吹き込まれているのかもしれません。実際、ヘルプに来てもらったときに「楽だからって聞いていたのに、全然楽じゃないじゃん!」とばかデカ声でわめいていたことを思い出しました。仕事しなくても何も言われないよ、休みたい日は簡単に休めるよ、それでいて自治体の非常勤だから賞与があるよ、と。そして、普段からこの夫が非常勤職員という人たちをばかにして話しているのでしょう。そうでなければ新しい職場で、最初から周囲の同じ立場の人間をああまで下に見ることはないように思うのです。

 「非常勤職員に対して“正職員になれなかった人たち”という意味で下に見ているし、この職場の非常勤は肉体労働者だから、そういった見下し方もしているんだよ。身内にそういう人がいると、自然にそう考えてしまうかもしれないよ」。リーダーとのこれまでの会話から、リーダー自身がもともとある分野の職人で、若いころから生き馬の目を抜く場所で腕一本でものづくりをしてきたことを知っていましたし、それと紐づけられるように学歴社会で屈辱的な苦労をしてきたこともなんとなく察していました(天災の影響で廃業して、今はここにいるようです。専門職としての知識、技術、経験も成果も含め、この人がなぜそれをいかした仕事をしていないのだろうと不思議に思いますが、人の人生にはいろいろありますのであまり聞かないようにしています)。

 でもいくら慧眼のリーダーの言うことであっても、この時代に教育を受けた、普通の人に見える人たちの中にそこまでの職業差別、学歴差別の感情があるのかしら、と思っていたのですが、こののち、私が世の中を知らないただの甘ちゃんだったことを、ことあるごとに痛感することになります。きっと私の正職員上司たちは、自分の中にある差別感情を意識しているかしていないかはわかりませんが私たちに対して「自分たちとあの人たちは違う」と思っていることがよくわかります。相手を同じ人間として見ていたら、そんな態度は取れるはずがない、ということが日常茶飯事なのです。これについてはいつか書こうと思います。

 脱線ついでに、このことにも触れておきます。最も悔しいのは、こちらチームの非常勤リーダーへの、正職員上司たちの態度なのです。非常勤リーダーは、職業人として高い矜持を持っていて、だからこそとても腰が低く、かなり年下の正職員上司にも丁寧に接します。誰よりも多くの仕事をして、正職員上司が気づかないことをよく気づき、正職員上司がすべきこともせずに年休を取りたいだけ取っている間に、可能な限りの作業を細やかに進めます。まったく行き当たりばったりで朝令暮改どころか、前回の指示内容も覚えていない上司に振り回されるような働き方の中、どんなに急な業務を言いつけられても対応できるように常に段取りし、無茶な要求にも猛スピードで事に当たります。一緒にペアで動くのが2年目に突入した私なのですが、情けないことに異常なまでにポンコツなので、ポンコツの面倒を見ながらです。私に無理がないようにと気遣いながら、私の見えないところで、痛む体と炎天下の熱射に滝のような汗をかきながら、それでも作業を止めない姿を何度もこっそりと見ています。絶対に「できない」と言わずに、人の何倍も難儀をして、その苦労を上司たちにも見せないのです。ただでさえ人員不足の職場で、八面六臂の働きです。今の時代は「頑張ること」を否定したり冷笑したりして、効率ばかりを語りたがる人がたくさんいるなあ、と感じていますし、「できない、と言いましょう」が推奨されています。無理をしてつぶれてしまうよりは自分を大事にしよう、というのは“正しいこと”だとは思います。それでも私はやっぱり「できない」と言う前に、できるように頭脳を働かせて段取りして作業の優先や強弱を設定し、並大抵の胆力や肉体で成しえない働きをする人こそ、その細やかな態度や精神こそ、“尊い”と思ってしまいます。辛抱強く丁寧に磨かれた、澄み切った玉のような美しさだと思います。

 正職員上司は自分たちの不手際だらけの指示をカバーしてもらっていることにも気づかない始末で、感謝もないどころか高慢な態度です。リーダーは前職で凄腕の職人だったことは話もしていなくて、この職場でもごくわずかな人しか知りません。とにかくひけらかすことをしないのです。ばかみたいに適当な指示も丁寧にくみ取って休みなく作業して「これでよろしいでしょうか」と上司に見せます。自分の指示がまったくとんちんかんなくせに上司は「ここがよくないですね」などと言っているのです。誰かが形にしたもののアラを探すことは、誰だって簡単にできます。

 あまりの理不尽さに、脇で見ている私は悔しさで狂い死にそうなのに、リーダーは不平不満を口にしません。それが余計に悔しい。もっとも悔しいのは、このリーダーだけ雇用形態が異なるため、ほかの非常勤と違って賞与がないのです。しかもほかの非常勤と違って、正職員上司たちのフォローのための休日出勤まであるのです。このときは「どうせ出勤するならこれもお願いします」とばかりにほかのチームの正職員たちも仕事を言いつけます。この働き方をしてようやっと、私のような未経験の新人非常勤と同じ手取り額なのです。通常業務の中でも、非常勤の中ではこの人しかできない仕事やほかのチームの分の仕事までしているのに。このことを考えるたびに、あまりの理不尽さに怒りで頭に血が上って吐き気がします。正職員上司たちはその不公平を知りながら、待遇を改善するつもりもありません。対内的にも、対外的にも、面倒な交渉になるからです。これだけの献身、貢献をしていてもそこはわざと見ずに、都合よく「使い倒して」一人の人間の犠牲的な、とも言える働き方にあぐらをかいているのです。

 実は口にこそしないだけで、リーダーだってさすがに怒りにも似た不満を持っています。前述したような正職員と非常勤の関係性の説明などをしてくれるときなどに伝わってきます。それでも、学歴で苦労してきたリーダーはお子さんたちを大学に進学させるためには職を失うわけにはいかないと考えているので、静かにしているのです。少しでも正職員に疎まれたら、契約更新が危うい、と。

 説明しないといけないことがいろいろあってまたまた脱線します。この職場の契約更新が健全でないことをお伝えしておく必要がありました。この職場は仕事の能力とか周囲と協力して動けるかとか、などは人事評価の基準になっていないようなのです。これまでにも、何でも知っていて周囲とも協力しながらよく働く人が、新しい上司とハイテンションなコミュニケーションができなかったばかりに更新されなかったり(それまでは何年もずっと更新されていた)、上司にゴマをする一群の「女子会しましょうよ~」という誘いを丁寧に辞退しておとなしく真面目に働いていた人は更新されずに、その欠員補助としてゴマすりグループにかつて所属していて、辞めて数年経った人を再入職させていた、ということがあったそうです。たかだかバカ騒ぎコミュニケーションに付き合わなかったくらいで、職場を追われるなんて、という私に「この職場の決定権を持っている人たちは、人が職を失うことがどれほど大変なことなのかを考えようとしない。人の人生なんてどうでもいい。平気でそういうことをするんだ」。リーダーはそういったグルーブに迎合することをよしとしないでおきながら、悪目立ちしないように細心の注意を払ってバランスを保ちながら、一人で何年も孤独に働いてきたのでした。「どれだけ仕事をしても好かれるわけではない。逆に煙たいはずだよ。それをわかっているから度を越さないようによく気を付けているんだ。一生懸命働くとか、仕事を丁寧に時間内に仕上げることは正しいことだけど、正しいことが求められてるわけでは決してない。仕事をゴールまで運んだり物事を成立させたり問題を改善しようとしたりする人より、何もしない人の方が問題を起こさないから、面倒じゃないんだ。ここの職員は、自分に責任が降りかかるようなことはとにかく避けたいんだ」。仕事をしないで職場に遊びに来ているような人よりも、ちゃんとしようとする人の方が邪魔だという職場もある。実際にリーダーと働いてみてわかったのですが、私たちのチームは、どれだけ作業量が多くても人員を回してもらえず、件の女性のように仕事から逃げて回りながら、上司とキャッキャウフフしているチームは作業量が少ないにもかかわらず、常に人員を一番多く確保しています。少ない作業量に対して人員が多いので、すぐに作業は終わり、長い時間休憩しています。私チームのリーダーが何人分も働いてようなく回している業務量を「こなせているからいいでしょ」と言わんばかりに。休憩も取れずに汗と泥と有機物の汚れにまみれて口もきけないほど疲弊している私たちのすぐ隣で、汗ひとつかかずにデカ声できゃっきゃうふふ。同じ業務内容で、同じ時給で雇われているはずなのにな、と、どうしても思ってしまします。そして「社会はこういう人がうまくいっているんだ」というリーダーの言葉を痛感します。それでも、自分の世間知らずぶりを恥じる気持ちはあっても、青臭いかもしれないけれど、やはり真っ当な姿勢で周囲の人を大切にしながら頑張る人と一緒に働きたいし、何より自分自身がそういう人間でありたいと思うのです。そう祈るように思いながら、その思いをかなぐり捨てたくなるほど理不尽に感じることばかりで毎日苦しいです。

 私の職場の人間関係を説明したくて話が脱線しましたが、ここでやっと件の女性の話に戻ります。リーダーは、前出のリーダー同士の話し合いにこの女性がしゃしゃり出てきたときにも、丁寧で腰が低い態度を崩しませんでした。それを見下すようなあまりに傲慢な態度に、私が「下手に出てりゃあいい気になりやがって」という、本当にお芝居のセリフそのままをなぞりながら怒髪衝天で物申そうとした瞬間、不穏な気配を察知したリーダーに「泥泡よ、あの道具を取ってきてちょうだい、お願いしていいか」と切っ先を制され、「ぐぐぐぐぐ…」とうなりながらしぶしぶその場を離れさせられたのでした。リーダーはとにかく一枚も二枚も上手なのです。そのあと「けんかすると自分自身が損をするんだ。何も反応しないでよい、絶対に何も反応するな」という話をこんこんと聞かされ「今後、何があっても反応しない」と約束させられたのでした。リーダーはそう言わないけれど、自分だけでなくリーダーにまで迷惑をかけるんだとわかりました。それ以降、何度かあった拳を握りしめる出来事をなんとかこらえてきたのですが、今回、ついに約束を破ってしまいました。件の女性と衝突してしまったのです。

 きっかけは、この女性が伝令として私たちのチームに伝えてきた上司からの指示を、私たちが間違った解釈をしてしまったことでした。件の女性を含む複数の人間が異なる指示を別々に伝達してきて情報が錯綜したことが事の始まりなのですが、結果的に私たちのしたことは上司の指示に反してしまったのでした。それについては、出来事のあくる日に、指示を受け取り違えたことが判明した時点で落ち度を認めて謝罪しました。私が爆発してしまった直接の原因は、私とリーダーが指示とは異なる行動をしているのを見た件の女性が「今やっていることを取りやめろ」とけんか腰に、居丈高に飛び込んできたことです。「先ほどの指示には、かくかくしかじかのような意図があるのだ。それがうちの上司の方針、うちの上司は上司連中のリーダーであり、その考えはすなわちこの部署全体の方針なのだから、従え」という訴えです。かくかくしかじかの部分は初めて聞く話で、オフィシャルで話されたことのない話でした。しかも、指示理由がそれなのだとしたら指示を受けての行動結果も変わってくるような話です。「当初あなたが伝令として伝えてきた指示とはまったく内容が違う。正職員と非常勤の間で共有されない情報があるのは別におかしな話ではないが、非常勤の間でもあなただけがその“方針”を知っていて私たちが聞かされていないのはおかしい。あなたの口から話されてよい話なのか。部署全体の方針と言うなら、それを話す権限がある人がオフィシャルで話せ」と強い調子で言い返しました。ちょっと回りくどいのですが、つまり、あなたがしているその話は、“方針”でも何でもないのではないか。オフィシャルで話されていない以上、あなたの意思で私たちに作業をやめさせるほどの効力を持つものではないですよ、上司が日常会話の中で話しているレベルの話を、あなたが何の権限でもって「部署の方針」だと認定しているのか。しかもあなたが勝手に認定した方針を理由として「作業をやめろ」と指示を出すことが、なぜ私と同職の一介の非常勤職員であるあなたにできるのか(なんだったらあなた後輩ですし)。それはもはや上司の指示でもなくあなたの指示になっているでしょう、と言いたかったのです。

 手っ取り早く「てめーには何の権限もないからすっこんでろ、馬鹿が立場をはき違えてからんでくるな」と言えれば伝わるのでしょうが、そんなことをしてしまってはこちらの方が無法者になってしまいます。突きたい点をドンッと突けないもどかしさで頭が破裂しそうでしたが、このあとさらに腹の立つことが待っていたのです。

 「相手の言動に反応しない」という、こちらチームのリーダーとの約束も破ってしまい、がっぷり四つに組んでしまったことを反省して、これ以上はこの話はしないでおこうと決めてあったのですが、翌朝に件の女性と彼女のチームの正職員上司が連れ立ってやって来ました。話をする中でこちらの指示の受け取り間違いも発覚したので、丁寧に詫びた上で「部署内で公にされていない“方針”の話が、この女性の口から、しかも後から出てきた。指示理由がその方針に基づくものなら、最初にまったく異なる指示理由を説明したのはなぜか。それがこの部署の“方針”ならば、なぜこの人にだけは知らされていて、私たちには知らされもしないのか」と問い直すと、件の女性は「自チームの非常勤リーダーがすでに伝えていると思った」という。そして「伝えに行っているのを見たし、彼女も“伝えた”と言っていた」と言い放ったのです。のちに確認しましたが、相手リーダーから私たちのチームにそのような情報を伝えられた事実はいっさいありません。直観的に嘘をつかれていることがわかるのですが、「嘘つき」などと責め立てても意味がありません。この人はつまり「伝わっていなかったのは私のせいではない=方針の話を私が勝手に持ち出したのではない」と言いたいのです。この発言はあとから無理やりの辻褄合わせで「リーダーに“あの話”を伝えたか?という聞き方をしたら“伝えたよ”という返事だったので、伝わっていると思った。あとでわかったのだが、リーダーが“あの話”という表現を別件と勘違いしていた」という説明に変わっていました。確かに、相手リーダーはその日、私たちのチームの部屋を訪ねてきていました。しかしそれはまったく別件の話をしに来ていたのです。その嘘に乗っかるとしても、そもそも「あの“方針”の話、別チームにもしておく必要があるな」なんて、いらないお世話です。お前が情報操作するな、どっちに転んでも重ね重ねすっこんでろ、という話です。

 詳しく書いてしまうと所属している組織が特定されてしまうおそれがあるので伏せて記そうとしています。まどろっこしい説明で申し訳ないです。
長くなったのと、ここからの説明は私にとってハイカロリーなために、いったん締めます。続きを書く気力体力が回復したら、また書きます。ひとさまからしたら職場の小さなもめごとであろうことは承知していますが、ここに置いていくしかささくれだった気持ちをなめす方法がありませんでした。途中までですが、脱線長文にお付き合いいただいてありがとうございました。

 


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