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アメリカでレイオフからの再就職に苦労した話

はじめに

X / twitter では "[あめいろ]" という名前です。

アメリカに住んで19年、企業で働きはじめて12年になります。2023年の4月末に勤めていた会社でレイオフにあい、その後7ヶ月に渡って就職活動を行ってきた時の記録です。経歴や職種は人それぞれで、景気やjob marketの状況も刻々と変わっていくので、直接的に誰かの役に立つとは思っていませんが、これだけ長い間就職活動に苦戦してきたことを自分のために何か記録に残しておきたいと思い、書き留めることにしました。

今回の就職活動を数字で振り返ると以下の通りです:

224 days
135 jobs applied (incl. 13 referrals)
54 first recruiter calls
106 interviews (incl. 23 live coding)
3 take-home assignments
3 presentations
12 proceeded to final rounds / virtual onsites

2 offers

自分の経歴は以下の通りです: 
日本で工学部修士課程を卒業後、外資系IT企業の研究所に就職。その後アメリカに留学してPh.D. (Computer Science) を取得。ポスドクとして2年働いた後にシアトルに移り、A社でResearch Scientistとして働く。その後M社、L社と二度の転職を経て、レイオフ時にはL社でSenior Data Scientist。


レイオフ以前

昨年末の時点でL社に移ってから4年になり、入社時のRSU (Restricted Stock Unit: 報酬の一部としてもらえる株) が尽きるのはわかっていたので、なんとなく転職は考えていました。入社3年目くらいの時点で、元L社のマネージャーだった方にお誘いいただいて、とある会社のインタビューを受けてオファーももらったのですが、total compensation (base salaryやbonusなどの現金収入とRSUを合わせた全報酬) がかなり下がってしまうということで見送った、ということもありました。

結局4年は過ぎ、2023年に入ってからも少しずつ応募したり面接したりでしたが、本格的に出し始めたのは2月の四半期決算でレイオフがほのめかされて以降のことでした。ちょうどこの頃はGoogle, Meta, Microsoft, Amazonなどのテック系大企業でかなり大規模なレイオフが行われて、ニュースでもよく扱われていました。

出典: layoffs.fyi

Onsite0社目: N社

- 2023/01/05 Recruiter
- 2023/01/24 Director
- 2023/02/02 DS
- (2023/02/16 Onsite 1) <──── Canceled
  - DS
- (2023/02/17 Onsite 2) <──── Canceled
  - DS
  - Director
────> 2023/02/14 Rejected (Filled)

まだL社でレイオフがほのめかされる前に受けた配信系N社のDSポジションです。リクルーターの後にdirector、続いてstaff DSによるtech screenを通過して、virtual onsiteがスケジュールされましたが、2日前になってリクルーターから電話があって「ポジションが埋まったのでonsiteはキャンセルで」とのこと。

そういうわけで実際にはonsiteはやっていないので「0社目」としました。この仕事は自分の好きな数理最適化が目一杯使えそうでかなり関心が高く、インタビュー前にinterviewerの書いた論文まで読んで準備していたので、キャンセルになってしまって非常に残念だったのを覚えています。

Onsite1社目: A社

- 2023/02/27 Recruiter
- 2023/03/02 Coding
- 2023/03/09 ML tech screen
- 2023/03/24 Onsite 1
  - Presentation
  - ML eng
- 2023/03/28 Onsite 2
  - ML eng
  - HM
────> 2023/04/04 Rejected

食品系スタートアップのDSポジションです。codingとtech screenに続いてvirtual onsiteで最近のプロジェクトについてプレゼンをさせられました。

どういう質問だったか忘れましたが、HM (Hiring Manager) とのインタビューで「社内政治に関わりたくないからIC (Individual Contributor: マネージャーじゃない人) やってるんだ」的な軽口を叩いてしまいました。今思うと明らかに印象を悪くした暴言で、でも一方この頃は気持ちに余裕があったんだなと思います。自分が思った以上にjob marketが厳しい状況だと身をもって知るのはもう少し後のことになります。

レイオフ直前から当日

レイオフがあること自体はわかったものの、問題はそれがいつなのかということでした。5月頭の四半期決算以前であることはほぼ確実だったのですが、4月に入っても会社からは何もアナウンスされず、Blind (techblind.com; 主にテック系会社の裏サイト的なもの) でもさまざまな噂が飛び交っていました。ちょうど創業者が退任して新しいCEOに変わるタイミングでもあり、社内はかなり混乱していたように思います。自分もかなりやる気が低下していました。

そんな中で「来週にレイオフ」というリーク記事が出て、それを受けてCEOからようやく公式情報が出ます。Blindの情報によると

  • レイオフ対象外だと "Your role is not impacted"

  • レイオフ対象者には "Your role at (L社)"

というメールが人事から届くとのことでした。

そしてこうなります:

蓋を開けてみると社員の26%、約1000人が対象という、これまでにない大きな規模のレイオフでした。自分のチームや周辺ではあまり対象者はいなかったのですが、入社以来ずっと自分のボスだった女性も対象者だったことを知りました。

severance package (レイオフ時にもらえる解雇手当) は14週分の給料と翌月のRSUの前倒しvest、そして半年分のCOBRA (離職した社員が引き続き同じ健康保険を使える制度) の保険料肩代わり、など標準的なものでした。14週以内に再就職できればむしろ得だし、まさかCOBRAが切れるまでかかるようなことはないだろう、と思っていました。

1ヶ月目 (2023/05)

初めてLinkedInに投稿したのですが、L社の同僚や元同僚、以前の会社での元同僚や友人などが結構反応やコメントをくれました。そんなに話したことのない元同僚からメッセージが来てreferを申し出てくれたりもして嬉しかったのを覚えています。

そういうreferも使っていろんな会社に応募したり失業保険の申請をしたりしつつ、平日が休みになったのでカヤックに行ったりしていました。まだ気持ちに余裕がありました。

以前からの予定で日本のGW明けに一人で一時帰国することになっていたのですが、出発当日の朝にも、実家から日本時間の早朝にもインタビューしてました。性格的には早く物事を片付けてスッキリしたい方ですが、この時点では就職活動にそんなに時間がかかるとは思っていなかったこともあり、温泉に行ったり美味しいものを食べたりと、日本をそれなりに楽しむことができました。

Onsite2社目: G社

- 2023/05/02 Recruiter
- 2023/05/08 HM
- 2023/05/26 Onsite
  - DS
  - Eng mgr
────> 2023/06/01 Rejected

文法系 (?) G社の、A/Bテスト系DSのポジションです。今思うとこの会社のプロセスはかなり簡素なものでした。

HMとの会話はかなり良い印象だったのですが、onsite一人目のDSには簡単な統計の質問に答えられず、二人目のeng mgrには過去のプロジェクトの話であまりインパクトが見えない例を選んでしまったという失敗が重なりました。まだこの頃には過去のエピソードなどの準備が不十分でした。

この時のリクルーターがとても良い人で、連絡の仕方も良く、フィードバックも具体的でした。後になってわかることですが、ひどいリクルーターというのは本当に多いです。

2ヶ月目 (2023/06)

日本から帰ってきてフルタイムで本格的に就職活動が始まりました。"full time dog-walker and chauffeur"などと自嘲しつつも、この時点ではまだ何とかなると思っていました。L社で同じようにレイオフになった元同僚と会って「〜はM社に決まったらしい、私は一社オファーが出てあと二つ結果待ち」とか聞いても素直に「良かったね」と思えていました。

Onsite3社目: Z社

- 2023/06/08 Recruiter
- 2023/06/13 Homework submitted
- 2023/06/20 Onsite 1
  - Presentation
  - Eng
  - Eng
  - DS 
  - DS
- 2023/06/21 Onsite 2
  - DS mgr
────> 2023/06/30 Rejected

自動運転系Z社のDSのポジションです。最初のrecruiter callの次に宿題があって、データ解析してレポートを提出しました。続いてonsiteではそれについてのプレゼンがあり、頑張って20ページほどのスライドを用意しました。

プレゼンに続いてのインタビューのうちの一つで、Bayesian inferenceについての質問があって、全く準備ができていなくてかなり基本的な質問にも答えられませんでした。今思うと、こういう事態をなるべく避けるために、どういうスキルが重点的に必要とされるか早い段階で確認しておくべきだったなと思います。

そういう大失敗があり、おそらくそれを補うほどの大きな加点もなかったということで落とされてしまいます。余談ながらその時の連絡が、リクルーターからメールで「今日電話で話せるか?」と聞かれて、電話に出てみると "Unfortunately, …" という感じで、思わせぶりにも程があるということで後で苦情メールを送りました。自動運転系はここを含めて全部で4社応募しましたが、別の一社には宿題を送った後に音信不通になったりと全くいい経験がなくて、八つ当たりですが自動運転そのものに懐疑的になりつつあります。

3ヶ月目 (2023/07)

onsiteで落とされるのが続き、またそもそも求人が少ないこと、そして応募に対する反応も悪いことで焦る気持ちが募り、日本で働く可能性について考えました。ですが子供はこちらで学校に行かせたいので単身赴任になるし、グリーンカードを維持するためには数年以上アメリカを離れるためにはいかないこと、アメリカの保険を自腹で払わないといけないこと、給与水準の低さ、などで、あまり現実的ではないという結論でした。

一方で、リモートでなくrelocationが必要な仕事には応募し始めました。ただ会社によっては「relocationは自腹で」というところもあり、かなり足元を見られている感じはありました。

Onsite4社目: M社

- 2023/06/29 Recruiter
- 2023/07/07 Tech screen
- 2023/07/12 Onsite
  - DS
  - DS
  - HM
────> 2023/07/18 Rejected

パートタイムで働きたいナースと医療機関のマッチングをするスタートアップのDSのポジションです。

ここはかなりプロセスが短く、onsiteで初めてHMと会ったのですが、あまりHMとは馬が合わない感じがしました。長すぎるプロセスは無駄が多いとは思うものの、こんな風に短すぎるのもあまり良くないなと思いました。

4ヶ月目 (2023/08)

同じくレイオフになった元ボスと会いました。L社では自分の時の半年前にもレイオフがあったのですが、その時に対象になった同僚がまだ求職中という話を聞いて震えました。彼は自分と同じかひょっとしたら年上のおじさんで、自分に似た部分を感じていたので「これは本格的に長引くかもしれない… 」と焦る気持ちが募ります。

そんな中で、これまで月一ペースだったonsiteが8月は3つも入りました。

Onsite5社目: C社

- 2023/07/11 Recruiter
- 2023/07/21 HM
- 2023/07/31 Tech screen
- 2023/08/09 Onsite
  - HM
  - Analyst
  - Prod mgr
  - DS mgr
  - Coding
────> 2023/08/14 Rejected

fintechスタートアップの、A/Bテスト系DSのポジションです。昔から自分の中でいくつか興味のない業界や業種というのがあって、金融はその一つだったのですが、そんな選り好みをしている場合ではないということで応募しました。

ですが初めからあまり乗り気ではなかったので、onsiteまで進んだのが不思議です。インタビューがどんな感じだったかよく覚えていなくて、最終的に落とされた理由も結局よくわかりませんでした。

Onsite6社目: V社

- 2023/08/02 Recruiter
- 2023/08/03 Coding
- 2023/08/07 HM
- 2023/08/16 Onsite
  - Tech panel
  - Values
- 2023/08/22 Head o‎f Data Science
────> 2023/09/01 Rejected

配送系スタートアップの、DSのポジションです。仕事の内容にはとても興味があり、HMとのインタビューでは良い感触で、onsiteでも良い感触、その後のHead of DSとも良い感触だったので、正直どうして落とされたのか理由がわかりません。こういうことがあると「年齢か…」と疑心暗鬼になりがちです。

余談として、この会社のcodingのラウンドは、よくあるCoderPadなのですが完全に自動化されていて、問題が出てきて制限時間のカウントダウンが始まり、時間以内にsubmitすると次の問題が出される、という形式で面白かったです。いくら自信のあるSQLでも「3分で」と言われると焦ります。PythonとSQL合わせて1時間で9問くらいだったと思います。

Onsite7社目: E社

- 2023/08/07 Recruiter
- 2023/08/15 Tech screen ──> Aborted: Lost Internet connection
- 2023/08/21 Tech screen
- 2023/08/30 Onsite 1
  - ML
  - Coding
  - Prod mgr
- 2023/08/31 Onsite 2
  - HM
  - ML System Design
────> 2023/09/12 Rejected

手作り系マーケットプレイスのDSのポジションです。最初のcodingの時に家のネットが落ちてしまうというハプニングがありましたが、無事にリスケされてonsiteまで進めました。

ここと上のV社は似たタイミングでonsiteがあって、最低でもどちらかはオファーがもらえるんじゃないかという目論見だったのですが、結局どちらも落とされてしまいます。

この会社ではリクルーターに嫌な思いをさせられました。onsiteが終わって数日後、「(元々応募していた)staffレベルは別の候補者を選んだのだけど、seniorレベルにも興味があるか?とHMが聞いてる」とリクルーターから連絡がありました。「興味ある」と答えたところ、「ちなみにbase salaryはこれくらいだ」という返事が来たので、seniorならオファーがもらえるということだろうと解釈したのですが、続いて「でもあと何人か候補者がいるからもう少し待ってくれ」と。

「え…?」

そして結局落とされます。こういうぬか喜びはもうしないと思ったのに、また引っかかってしまいました。これはあまりに腹が立ったのでglassdoorに投稿しました。

Glassdoorの投稿。今見るとやや大人気ないです。

落とされましたが「面接受けてくれてありがとう」ということで$50分のクーポンをもらえたので、おしゃれなコーヒー容器のセットを買いました。これ気に入ってるので許すことにします。

5ヶ月目 (2023/09)

この頃から精神的に辛くなってきて急激に体重が低下します。8月のonsiteを全部落としてしまったことで、失業保険、そして健康保険が切れるまでに仕事が見つからないかもしれない…という不安が大きくなってきます。また本当になりふり構わず応募するようになってきていて、給与がL社の時の半分以下のようなエントリーレベルのポジションや、agency経由の契約社員のポジションにもいくつか応募しました。

Onsite8社目: U社

- 2023/09/01 Recruiter
- 2023/09/08 Tech screen
- 2023/09/20 Onsite 1
  - Coding
  - HM
- 2023/09/21 Onsite 2
  - Prod mgr
  - ML
────> 2023/09/25 Rejected

fintechスタートアップの、DSのポジションです。またしても関心の薄い金融系ですが、選り好みしている場合ではないので、とても関心ありますというような雰囲気で臨みました。特に大きな失敗をした覚えはないのですが、あまり関連性のある経験があるわけでもなくて弱かったためか、落とされてしまいます。

Onsite9社目: M社

- 2023/08/28 Recruiter
- 2023/09/06 Tech screen
- 2023/09/18 HM
- 2023/09/25 Onsite 1
  - DS Analytical Execution
  - DS Analytical Reasoning
  - DS Behavioral
- 2023/09/28 Onsite 2
  - DS Technical Skills
  - Cross Functional Relationships a‎nd Stakeholder Management
  - HM
────> 2023/10/09 Rejected

大手SNSのDSのポジションです。この会社は数年前から時々リクルーターからのメールが来ていたのですが、個人的に会社の理念というか製品が好きじゃないということで全く見向きもしていませんでした。ですが、選り好みしている場合ではないので(略)

この会社はプロセスが変わっていて、最初のtech screeningが終わった後に複数のチームの job description を見せられて、どのチームに興味があるかという希望を聞かれます。自分の場合は4つのチームがあり、希望順を返したのですが、第一希望のところは既に埋まってしまったということで次のものになりました。

本当のonsiteの前にHMとのインタビューがあったのですが、どうもあまり感触が良くありません。cross-functional collaborationが重要なポジションということで、onsiteの6個のインタビューのうち2個半がbehavioralでした。大きな失敗をしたつもりはありませんが、おそらく大きな加点もなかったのでオファーには至りませんでした。別のチームとのインタビューはできないのか、とリクルーターにメールで聞きましたが無視されました。

6ヶ月目 (2023/10)

severance packageに含まれていたCOBRAの補助が月末で切れてしまうということで、代替の保険を調べはじめました。COBRAを自分で継続することもできるのですが、healthとdentalで$2k/moを超えるので到底割に合わない、ということで、ObamacareのWA州版であるWA healthplanfinderにアプリケーションを出しました。このプロセスでは子供が「何かお父さんの力になりたい」と、いろいろと調べたり問い合わせしたりしてくれて、有り難く思うと同時に、子供にそんな風に心配をかけてしまっているのが辛くなりました。

子供と同時に、日本の両親にもかなり心配をかけているのは時々来るLINEの文面から滲み出ていてそれも辛いです。心配されてもプレッシャーになるだけで何の足しにもならない、というのは正直な気持ちではあるのですが、親というのは心配するなと言われても心配するものだし、放っておいてと言われても放っておけないものだ、というのは自分にもわかるのでさらに辛いです。

Onsite10社目: L社

- 2023/10/05 Recruiter
- 2023/10/12 Technical
- 2023/10/13 HM: Behavioral

古巣です。退職時まで同じチームだった元同僚からLinkedInでメッセージが来て、近くのチームでopen positionがあるのだけど戻る気はないかと聞かれました。

関心があると伝えたところ、リクルーターから電話があり、元社員ということで通常と違う "condensed" interviewをするとのこと。5年前に応募した時には普通にtech screenがあり、宿題もあり、onsiteはin-personでSFの本社まで行って6人くらいインタビューしたのですが、今回は二人だけとのこと。しかも以前から知っている人達です。

知り合いとはいえ、この就職難の時代、普通に応募してくる人も相当数いるわけで、緊張感を保ちつつ自分なりに準備して臨んだ一つ目のtechnical interviewで大失敗します。

彼が甘い人ではないのはわかっていましたが、さすがにこれは厳しかったです。一方で、ひょっとすると彼は、僕が線形代数が得意だと思ってこの問題を選んだのかもしれないです。いずれにせよ本気で線形代数を(再)勉強する気にさせられました。

二つ目のHM interviewは基本的には思い出話でした。HMは僕の仕事を結構知っている人なのでリラックスして話せましたが、一つ目の失敗のショックが大きくて、「これもダメだろうな」と半分投げやりな気持ちでした。

7ヶ月目 (2023/11)

失業保険が月初で切れて、いよいよ本当に無収入になりました。失業保険は期間が1年だけど合計支給額の上限が半年分に設定されていたので、期間中ずっと貰い続けるわけにはいかないようになっています。月々$4k弱の収入がなくなるのはかなり痛手です。

Final payment … 😭

またホリデーシーズンが近づいてきたことで、求人が減って、リクルーターからの連絡が来なくなり、インタビューもなく、何も予定がなく時間を持て余す日が増えました。この機会にということで、ずっと苦手意識があり、先日の面接で大失敗した線形代数を本格的に勉強しなおそうとGilbert Strang先生の "Introduction to Linear Algebra" を最初から読み、MIT 18.06の授業ビデオを全部見るというのをやり始めました。おそらくインタビューにはそんなに役に立たないのだけど、暇にしていると不安に襲われるので、できるだけ何かに集中していたかったという気持ちでした。

また、このnoteを書き始めたのもこの月でした。仕事をしていないと何かをアウトプットする機会に乏しくなってしまうので、こうやって記録を書くだけでも少し気持ちが楽になったように思います。

Onsite11社目: R社

- 2023/10/18 Recruiter
- 2023/10/23 Chief Analytics Officer
- 2023/10/27 Coding
- 2023/10/31 take-home assignment (4hr)
- 2023/11/06 Onsite
  - DS
  - DS
  - Prod mgr
  - CEO
────> 2023/11/09 Rejected

LinkedInで連絡してきたagencyのリクルーターからの案件で、様々なスケジューリングをやってるスタートアップです。とても規模が小さい割に、かなりvisibilityの高い仕事をしていて面白い会社でした。ただ、ほとんどネット上に情報がなく、どういう会社なのか不透明ではありました。

tech screeningの後で、問題を受け取ってから4時間以内に回答を送り返すという形式の宿題がありました。数理最適化に関する問題が3つで、非常に面白くて夢中になってしまいました。時間内には全部できなくて途中経過を送り返したのですが、その後もずっといろいろコードを書いたりしてました。

宿題は無事に通過し、onsiteということで3人とインタビューがスケジュールされたのですが、リクルーターに頼んでCEOとのインタビューも足してもらいました。

メインの3人のインタビューは良い感じで終え、最後にCEOと20分だけ話したのですが、そこでちょっと失言をしてしまいました。「どうしてこんな小さい会社がそんなに大きな団体を相手に仕事をできているのか」と質問したところ、「顧客の急な要求、例えば明後日までに〜をして欲しい、というようなことに応えてきたから」とCEOは言ったのですが、それはちょっとscaryだ、と言ってしまいました。それで雰囲気が悪くなってしまい、終わりまで改善しなかったように思います。

とても小さい会社なので、CEOに気に入られなければ採用されないかもしれないと思っていましたが、予想通り見送りになりました。リクルーター曰く、「とても迷った末の結論」で「これはgood rejectionだ」と言われましたが、"For me, rejection is rejection and there is no good rejection" と返しました。ただし、ああいう形でCEOに不信感を持たれてしまったら、働き始めてからもいろいろ苦労したであろうと想像できるので、これでよかったのかなとも思います。でも仕事の内容はとても面白そうだったので残念ではあります。

Onsite12社目: S社

- 2023/10/11 Recruiter
- 2023/10/16 HM
- 2023/10/20 Coding (CoderPad)
- 2023/10/20 ML Screening
- 2023/10/30 Panel
  - Technical
  - Prod mgr
  - DS
- 2023/11/09 Head o‎f Tech
- (2023/11/14 CEO) <──── Canceled
────> 2023/11/13 Rejected

これもfintech関連ですが、fraud detectionの技術を提供しているスタートアップです。興味のなかった金融系の割には結構面白いと感じていて、インタビューが進むにつれて興味は増していたのですが、残すはCEOだけというところでのHead of technologyのインタビューの終盤で「prod mgrとどんな風に仕事してきたか」という質問になぜか全く何も言えなくなってしまいました。原因はそれだけではなかったようですが、ともかくそんな失敗があり、あと一息というところで落とされてしまいました。

Onsite13社目: S社

- 2023/09/27 Recruiter
- 2023/10/10 HM
- 2023/10/13 Coding
- 2023/10/18 DS round 1
- 2023/10/18 DS round 2
- 2023/10/27 DS round 2-2
- 2023/11/08 Presentation
- 2023/11/21 HM
- 2023/11/27 Prod mgr
- 2023/11/27 HM

名前は時々聞くけどよく知らなかったデータ系会社のDSポジションです。ラウンドが多いように感じましたが、昔ならonsiteでまとめて一日でやっていたインタビューを別々にしただけと考えると、特に多いわけでもなかったかもしれません。ただ全体のプロセスが本当に長くて疲れました。

このポジションは勤務地がベイエリアでした。なので最初のリクルーターとのインタビューでは、relocationする気はあるのかという確認をされました。

"DS round #2"は主にdata engineeringに関するインタビューで、過去にどんな目的でどんなテーブルを作ってどんなパイプラインを作って、というような話だったのですが、事前にそういう内容だとリクルーターから聞かされていなかったこともあり、あまり準備ができていませんでした。それでも自分としてはそれなりに答えたつもりだったのですが、「事前に聞いてなかったということなのでもう一度やりたいとHMが言ってる」とのことでround #2-2がスケジュールされました。

プレゼンは過去のプロジェクトについてですが、これは非常に悩みました。というのは、新しいスライドを作ろうにもL社で過去に自分が作ったスライドにはもうアクセスできないので、いろんな図を最初から作らないといけないという理由です。プレゼンの代わりに何かしらのダッシュボードを作るというオプションは一応あったのですが、なんだかそれでは弱い、と考えていたところでふと、三月に別の会社 (Onsite1社目: A社) のインタビューで使ったスライドがあることを思い出し、それをベースに手直ししたものを使いました。

プレゼンはうまく行ったつもりでしたが、その後しばらく連絡がなく不安に感じていたところに、「HMが"follow-up"したいと言ってる」と連絡がありました。リクルーターに詳細を聞いても「わからない」とのことで、rejectなら単にrejectと言えば済む話なので悪い知らせではないのだろうとは思いつつ、何の準備もできずに臨みました。結局それはプレゼンの内容に関する小さな確認と、勤務地についての希望などの話、そして今後のステップに関してでした。勤務地は、当初ベイエリアの予定だったが、シアトル側にも仕事があるのでそちらの勤務にすることもできそうだけどどうするか、という話だったので、シアトル側を希望と伝えました。

その後最終ラウンドとしてprod mgrともう一度HMとのインタビューがありました。

そして

11月の半ば、thanksgivingの前の週の金曜の夜遅くになって、10月にインタビューを終えていた古巣のL社 (Onsite10社目) のリクルーターから「オファーを用意する」というメールが届きます。

今週中には来ないか…と諦めていたので嬉しかったです

これは嬉しい知らせです。また、夜遅い時間なのに休み前にわざわざメールをくれたリクルーターには感謝してます。ですが、これまでいろんなぬか喜びに懲りていたので、本当にオファーレターを受け取るまでは気を抜けないという気持ちでした。そうは言っても、気分的にはかなり楽になりました。とりあえず家族だけには伝えましたが、ぬか喜びの可能性を考えて実家の両親にはまだ伝えずにおきました。

そしてthanksgiving明け、正式なオファーレターが届きます。リクルーターから最初の電話の時に、base salaryはレイオフ時と同じ、と聞いていたはずなのに、レターを見るとそれよりかなり低い数字が入っていた、という問題はありましたが、それも無事に修正され、ようやく本当に安心できる状態になりました。但しRSUはレイオフ前より大幅に減ってしまいました。リクルーターによるとこれはレイオフ後の全社的な傾向のようです。

ですが、もう一つS社 (Onsite13社目) の最終結果を待っていたので、そちらを待ちたい、と伝えました。また、S社のHMと直接話す機会があったので、L社からオファーをもらったと伝えました。

この時点でS社のHMはオファーを出す感じをほのめかしていて、referenceを3人欲しいと要求されました。L社時代のマネジャー二人と、eng mgr一人を紹介(全員転職済み)しましたが、全員HMから連絡があって直接話したそうです。みんなとても協力的で「何か言って欲しいことはあるか」と聞いてくれたりで感謝しています。

そして数日後、S社のリクルーターから「オファーを出す」とメールが来ます。

カフェでメールを開いた時、小さくガッツポーズしました

これは嬉しいです。L社のオファーも当然嬉しかったのですが、インタビューを「ちゃんと」勝ち抜いてきたわけじゃないという思いがありました。先に書いたようにtechnicalの方では大失敗したという自覚があるので、それでもオファーをもらえたのは、インタビューで話した以外の部分、つまりL社にいた時の仕事ぶりなり人柄なりを評価してくれたのが理由だろうと思っています。それに対してS社は、referralもなく応募して、普通のインタビューを一つ一つ通り抜けてきた実感があるので、今回の就職活動の中での自分の努力がやっと報われたように感じました。

ただやはりオファーレターをもらうまでは安心できないです。結局週末をはさんでもレターは来ず、問い合わせると最終的なapprovalを出す偉い人の時間が取れないとか何とか。でもリクルーターと電話で話して、compensationの情報はもらえました。数字はL社よりもかなり良かったのですが、自分の去年までの収入よりは下がってしまうということで、それにマッチすることはできないか、という交渉を一応試みました。L社の方は交渉の余地がない感じだったので、両方を行き来して吊り上げるような方法はいずれにしても取れないわけですが、実際のところタフな交渉をして引き延ばして少し上げてもらうよりは、早く落ち着きたいという気持ちでした。

翌日にもう一度リクルーターと話し、少しだけRSUを増やしてもらうことには成功したので、オファーを受けることにしました。そう伝えた時のリクルーターの反応からは「もう少しpush出来たのかもなあ」と感じましたが、「健康保険をつけてくれさえすればどんな安い給料でも働く」くらいに思っていた時から思えば、遥かに期待を上回るcompensationを得られたので満足しています。

その翌日の朝に正式なオファーレターが届き、サインしました。またL社にはオファーを断る旨とHMとリクルーターへの感謝を伝えるメールを送りました。これで今回の長い就職活動はようやく終わりました。

ふりかえって

今回の就職活動の中で感じたことや考えたことなどをいくつか適当に書いていきます。

応募とインタビューの記録

一つ二つの会社に応募するだけなら良いのですが、今回のように100を超える応募をするような状況ではちゃんと記録をとっておくことは大事です。リクルーターに聞いた情報は後々重要だし、それぞれのインタビューでどういう質問があったかというのは、他の会社のインタビューに備える上で参考になるし、またその会社の後の方のラウンドで話題になることもあったので、ちゃんとメモを取っておくべきです。

自分の場合はOneNoteに記録を書いていて、いつ誰とどういう内容のインタビューで、どんな質問をされてどんな質問をしたか、というようなことを書き留めていました。一つ自分が失敗したことですが、最初の頃はjob descriptionのリンクだけ貼っていたところ、ある程度応募が来たところでポジションを閉じられてしまうことが結構あって、いざ見ようと思った時にはリンクが切れていて見られず困りました。それ以降はJDのテキストをコピペで貼っていつでも読み返せるようにしました。

OneNote上の記録。"Rejected"が並んでいます。

インタビューに備えて

よっぽど優秀な方でない限り、technicalでもbehavioralでもインタビューに望む前には準備が必要です。例えばいくら仕事でMLをやってきましたと言っても、業務としてやる時には細かい(けど実際上重要な)ことをずっと考えてきた人が、インタビューで急に「boostingとは何か説明してください」なんて教科書的な質問を聞かれるとスムースには答えられないかもしれません。

technicalな話からすると、自分の場合には数理最適化、A/Bテスト関連の統計、そしてMLが業務上での経験だったので、それぞれCourseraのビデオを見返したり、本を読み返したりしつつ、ちょっとしたメモをOneNoteに作ったりしました。またmediumの記事を読んだり(但しかなり玉石混交なので注意が必要)、ChatGPTに質問したり(これも信憑性は自分で確認する必要)ということもよくしました。

codingについては、data scientistなので通常はそこまで複雑な問題は出ないのですが、pythonは定番のleetcodeで練習し、SQLはstratascratchというサイトで練習しました。

behavioralの方では、"biggest achievement"、 "failure"、 "conflict"、 "priority"、 "influencing others"など、定番とされている質問はいくつかあるので、自分の経験したエピソードを書き出しつつ、それぞれがどういう質問に使えるかを考える、というのが効果的かと思います。その際に、これも定番のSTAR methodに従ってまとめるようにすると使いやすいです。

僕はそれぞれのエピソードの原稿をOneNoteに書いておいて、質問に応じてその原稿を見ながら答えていましたが、本当ならこれはあまりお勧めできません。こういうことが出来るのはonsiteを含むほぼ全てのインタビューがオンラインで行われるようになったためなのですが、やっぱり「読む」感じになってしまうと相手に伝わりにくいだろうと思います。

今回の就職活動では、technicalな方で失敗することも当然何度もありましたが、苦戦したのは主にbehavioralの方でした。過去の就職活動では正直なところちゃんと準備したことなどなくて、STAR methodさえも知らないくらいでした。ですが、いくつかonsiteをこなしてその度にうまく話せずにrejectされるうちに、「これは本格的に準備しないといけないのかもしれない」と思って取り組み始めた次第です。ただし、そうやって「思い出話」を散々準備した挙句にtechnicalな方で失敗してしまうとショックは大きかったです。一方で、technicalな面ではある程度継続的にbrush upしていかないと錆びついてしまう一方で、behavioralは一度準備すれば比較的長持ちするので、就職活動の初めの方に集中して取り組むべきなのだろうと思います。

仕事がなくなる時に向けた備え

上と違って、仕事がある間の備えについてです。

アメリカでは一般的に"at-will employment"、要するに従業員も会社も理由なしに突然雇用関係を解消することができる、という形式が多いと思います。実際には従業員側からは"two-weeks notice"(退職する二週間前に通知)という慣習であったり、会社側は大規模なレイオフは60日前に予告しないといけない法律 (WARN act) があったり、その代わりとして60日を超える分の給料やRSUの前倒しvestingや健康保険などを含む severance package を用意するのが一般的であったり、と、少し様子は違うわけですが、それでも「いつ仕事がなくなるかわからない」という気持ちを日々実感を持って感じている人は、日本とは比べ物にならないくらいに多いと思います。

そういう状況では、仕事をしている時にも、仕事がなくなる時に向けた備えをしておくことが大事だろうと思います。

例えば一つ今回経験したことを。仕事をしながら転職活動をする時には問題ないのですが、今回のように退職してからの活動だと、過去の仕事に関する情報が一切手に入らないことに注意が必要です。自分の場合は、OneNoteに日記をつけていたのでそこからある程度思い出すことはできますが、会社ではGoogle Workplaceを使っていたので自分の書いた文書も作ったスライドも何も手に入らないという状況で、特に過去の仕事についてのプレゼンをさせられる時には困りました。退職前にそれらをPDFで取っておく、というのは恐らく機密保持上で問題があるので工夫が必要ですが、自分のような事態になりうることを踏まえて何かしらの準備をしておく必要があるように思います。またプレゼンとまで行かなくても、普通にbehavioral interviewに備えるためには、過去の仕事についてある程度具体的なエピソードを話せる必要があり、そういうものを仕事がある間に書いておくのは一つのアイデアかもしれません。

あともう一つ、人間関係について。英語で "Don't burn bridges" という言い回しがあります。要するに退路を断つなということですが、今の文脈では、転職する時に前の会社のチームと良い関係を保っておきましょうということです。これに関しては僕はかなり失敗しました。同じ土地で同じような仕事をしている限り、現在のチームにいる人が巡り巡ってまた同僚や上司になることは頻繁にあるので、つまらないことで争って敵を増やすよりは、良好な関係を維持することを選んだ方が賢いです。

アメリカで最初に働いたA社で、途中からボスになった人と本当に馬が合わなくて、1on1ではいつも喧嘩していました。組織変更のタイミングで「彼の下だけはやめてくれ」とお願いしたりして、彼との関係は回復しないまま転職しました。
今回の就職活動中に、とある会社で自分の経験に近いものを見つけて応募しました。その後LinkedInで見てみると、応募したチームのdirectorが問題の彼であることがわかりました。当然recruiter callもなくメール一本でrejectionでした。

良好な関係を維持しなかったために起こった問題の例 :(

宿題とプレゼン

既に書いたように、会社によっては宿題を出されたりプレゼンを求められたりすることがあります。おそらくsoftware engineerよりもdata scientistの方でよくある傾向でしょうか。ですが、個人的にはインタビューの一環として行われるのはあまり好きではありません。

まず、過去の仕事についてのプレゼンをさせるのは、採用側にとっては候補者の技術面でのスキルと同時にプレゼンのスキルも見ることができて非常に都合が良いので理解はできます。一方で、現職のNDAを考えると、社外で業務の話をすることについてはグレーなことも多いと思います。プレゼンする側としては、NDA的な問題を回避するために詳細を消すと面白みが減り、逆に詳細を話すとグレーな感じ、という板挟みになります。また、準備にものすごく時間がかかるので、採用を餌にそれだけの「労働」を無報酬でさせるのもどうかと思います。そういう点から、あまり正しくないやり方だなあと個人的には思います。

同じような理由で、宿題としてデータ解析などをやらせるのも微妙です。とにかく時間がかかります。自分の場合、リクルーターが "3-4 hours" と言った時には、余裕で半日はかかっていました。プレゼンも宿題も、インタビューで咄嗟の質問にうまく答えられないタイプの候補者が自分の能力をアピールするのには有効な手段なのですが、それらが正当化されるのは努力が報われる可能性がそれなりに高い時だろうと思います。現在のようにjob marketが非常に厳しくて、ほとんどの場合にオファーが出ないというような状況でプレゼンや宿題を候補者にさせるのは、ある意味で弱みにつけ込む残酷なやり方だと思います。

一つの会社ではrecruiter callの直後が宿題で、データが業務そのままな感じで質問もかなりopen-endedなものばかりで「これはキリがないな…」と感じたので、もともとそんなに関心もなかった会社だったことも考えて辞退しました。コーチングのコーチによると、宿題があるというだけで辞退する人は結構いるとのことでしたが、今回の自分のように「なりふり構ってられない」状況になると全部捨てるわけにもいかず、悩ましいところではあります。

リクルーターとのやり取り

就職活動においてリクルーターとのやり取りは避けられないわけですが、残念ながら、ごく少数の非常に優秀な人を除けば、あまりよい思いをしたことがありません。「また連絡する」と言って連絡しないのは序の口、メールで質問しても返事がない、電話の予定の時間になっても何の断りもなく電話してこない、などありますが、自動運転某社の「半日かけて仕上げたデータ解析の宿題を送ったところで音信不通」を超えるものはないです。

基本的にはチームとのやり取りはすべてリクルーター経由になるので、良好な関係は維持する必要がありますが、全ての事柄について当てにしすぎないで予防策を講じておくのは重要だろうと思います。

また主にLinkedIn経由で、recruiting agencyのリクルーターから声がかかることがあります。契約社員のポジションが多いですが、full-time employeeの話も時々あって、実際いくつかは話を進めました。ですが、この種のリクルーターは、通常の会社所属のリクルーターよりもさらに信頼度が低い印象です。「今までの仕事を1ページにまとめた文書をHMが欲しがってるから送って」と言われて、わざわざ作って送った後になんの音沙汰もなくなる、ということがあったし、似たような感じで連絡が途絶えることは他にもありました。一方で、一つ一つのインタビューの前にprep callをスケジュールして「彼はこういう人だからこういう感じの質問が来るかもしれない」などアドバイスをくれる人もいたので (Onsite11社目: R社)、一概に悪いとは言えない面もあります。(結局アドバイスはあまり参考にならなかったのですが)

年齢は問題になるのか

アメリカではresumeに年齢は書かないし、年齢をはじめ性別、人種、肌の色、性的嗜好などの属性が採用過程に影響することはない、というのはどこの会社の job descriptionにも書いていることではあります。これは調べたところ、EEO (Equal Employment Opportunity) Actという法律でそういった属性を採用や解雇などの判断に使うことが禁止されているためです。

が、それは建前の話であって、面接者の主観的な判断で決まる部分が多い以上、例えばHMが様々な理由で「やりにくい」と思った候補者を選ぶことは考えにくいように思います。そして自分自身や他のチームメンバーより遥かに年齢が上の人間と「やりにくい」と感じるHMは一定数いるのではないでしょうか。「メンバーがほとんどHMと同じ人種」というチームが結構見受けられるのも同じような理由かもしれません。

これが想像の域を出ないのは、どの会社もrejectionの際にフィードバックをくれないためで、それは会社側も、年齢等を理由にしたrejectionだと思われるようなことがあると訴訟のリスクが伴うために慎重になっているのだと考えられます。

"Overqualified"は年齢が高すぎる意味の婉曲表現、という説も。言われたことはないですが。

そういうわけで、自分の感想としては「年齢は問題になるかもしれない」です。ただし、だからと言って年齢を下げられるわけではないので、現状を受け入れた上で、どれだけ自分のコントロールできることに集中できるかが大事だと思います。

なかなか仕事が見つからない時にどうやって精神を健全に保つのか

これは本当に難しくて、ある時点から自分自身もかなり精神をやられてしまいました。インタビューのために会社やinterviewerのことを調べて勉強したり、宿題に時間をかけてレポートやスライドを作ったり、と散々頑張った挙句に、何のフィードバックもなく"Unfortunately, …"とメール一本で落とされるようなことが続くと、「これまでの努力は無駄だったのか」とどうしても思ってしまうものです。さらにそういうことが何度かあると、「このままずっと仕事が見つからないのではないか」と思考の悪循環に陥りがちです。

自分自身が心がけていたことや試したことはいくつかあります。

  • 基本的に家にこもりきりな生活になりがちなので、面接は極力午前中に入れて午後には外のカフェに行くようにした。

  • onとoffを切り替える。平日に仕事探しをして、週末は仕事探し以外のことをする。結果が伴わなかったとしても金曜日の夜は「おつかれさま」と自分を労い、湯船に浸かったり、少しお酒を飲んだりする。

  • 心構えとして「無駄な努力などない」と考える。面接のために勉強した知識、考えたこと、面接での経験、それを踏まえての反省などは今後の面接、ひいては今後の仕事を含む人生に何かしらの影響を与えるものであり、意味のあることだと考える。

  • severance packageの一つとしてコーチングを受けられたので試した。日本人の人を見つけたので、特に何かを期待するというよりは、気を使わずに自分の話を吐き出せる相手として何度か話を聞いてもらった。

  • コーチングと似ているが、日記でも何でも良いので自分の考えていることを吐き出す。ただSNSは自分が吐き出すと同時に、自分の見たくないものを見せられてしまうこともあるので要注意。自分の場合はこのnoteを書きはじめた。

こういう仕事探しは基本的には孤独なプロセスだと思います。レイオフにあった仲間と最初の頃はやりとりがありましたが、そんな中でも次の仕事が決まる人が増えてきて自分だけ取り残されると、やっぱり孤独になってしまいます。家族は一番の支えであると同時に、一番心配をかけたくなくてかえって重荷になってしまう存在でもありちょっと複雑なので、リアルであれネットであれ、信頼できる友人に話を聞いてもらうというのが一番良いのだろうと思います。僕はそれほど友人の多い方ではありませんが、それでも直接会ったことのないネット上の知り合いを含むいろんな方に力づけていただいて、それは確かに諦めずに前に進み続ける活力になったと思います。

おわりに

コーチングのコーチの質問で「これから一年後に現在のことを振り返ったとしてどんな風に思うだろうと思いますか?」というのがありました。「あの頃は大変だったなあと思っていると思います」と答えたと思います。コーチの意図としては、結局そういう風になるのだからもう少し力を抜け、ということだったのだと思いますが、自分の中では「ひょっとしたらその頃もまだ就職活動してるかもしれない」と冗談でなく思うほどに自信をなくしていました。なので、時間はかかったものの、最終的に自分の納得できる結果に落ち着くことができて、本当にラッキーだったと思います。

ここで書いた心がけであったり考え方であったりについては、リアルなりネットなりで誰かが言っていたことの受け売りも多いかと思います。中でもA社時代からの友人である竜さんには、著書 (「エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢」) にも影響されているし、苦労話を直接聞いてもらって「(若く見せるために)髭を剃れ。何なら頭も剃れ」などと有益(?)なアドバイスもいただいて、非常に参考になりました(髭は剃りました)。

それ以外にもいろんな方にカフェで話を聞いていただいたり、referのあてを紹介していただいたりと本当にお世話になりました。L社の元ボスには、カフェで相談に乗ってくれたり、zoomで何度かミーティングしてインタビュー対策のアドバイスをくれたりで、本当に感謝しています。またM社時代の元同僚には二度もM社のポジションのreferをお願いして「何度も申し訳ない」と謝ったところ、

という返事が来て感動したのを覚えています。彼はただreferするだけでなく、HMに直接メールを書いてくれるような丁寧な人でした。

今後自分がアメリカでまた転職することがあるかどうかわかりませんが、そういう時に自分自身が「あの時はこんなに大変だったけどなんとかなった」と思えるための材料として気の向くままに書いてみました。もし読んでいただいて何か有益な情報があったと感じていただけたなら幸いです。

大変長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。


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