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原色の少女 #2

2.酸えた怠惰を蹴飛ばして

酸えた怠惰を蹴飛ばして、僕は旅に出ました。

今や匂いのように、身体に付着した無精を振り切って、車を一路北へ走らせます。

十和田市に着いたのは、土曜日の真昼間のことです。

親友の栗山さんとの約束の時刻までは、まだだいぶ余裕がありました。

かつて住んだことのある街を、昔のように逍遙してみました。

荒野を切り開いて、建設された人工都市。

街路は「碁盤の目」になっており、人工都市にありがちな単調さが、僕は苦手でした。

当時は町の中心部のデパートが廃墟と化していました。

僕は孤独と煩悶の中で、弊社の人事担当を恨んだものです。

太宰治みたいに

「刺す」

とまでは言いませんが。

近年は現代アートの街として有名になり、すっかり、その化粧の色を濃くしていました。

かつての恋人の成熟した姿を見た時のような、微かな苦味を噛み潰して、さらに歩を進めます。

散策のハイライトは「十和田市立図書館」。

東北で五指に入る美しい図書館だと思います。

雨に濡れたコンクリートが艶やか。

図書館で十和田の歴史の本を読み、夕方に外に出ました。

「僕も、この地球という不確かな土壌に、自らの人生を建設するのだ。」と心に誓いながら。

(『原色の少女#3』へ続く)

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