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立ち飲みのススメ

近所に“良い”立ち飲み屋ができた。

20歳になってからお酒を飲み始めて、
学生の頃は立ち飲み屋にあまり行くことはなかった。
数回程度しか行かなかったのは
理由としては本当にシンプルで「座りたいから」という単純な理由である。

社会人になってから、立ち飲み屋に行くことが増えて、改めて良さを感じつつある次第です。
今まであまり行かなかったことを後悔するほど。


普通の居酒屋には無い、手軽さとこなれ感と、
粋な雰囲気がそこにはあるように思う。

あとメニュー数は少なく、厳選されている店が多いように感じる。
メニューが何枚もあるのではなく、
1枚の紙か、もしくは壁に箇条書きされているのが良い。
あれもこれも、とひけらかさないところに、
自信と潔さを感じずにはいられない。

こだわり抜かれた料理名のひとつひとつを指で辿る度に、お酒に合う香ばしい匂いが想起されるとともに、オアシスを求めた大人達の心を躍らせる。

また他のお客さんやお店の方とも距離感が近く、
気づけば会話が始まってしまっていることも多々ある。

社会人になって初めて1人で立ち飲みに行った時、
年齢も職業も境遇も違う大人同士が、
お酒を片手に軽やかに接続させられている空間はよく考えると不思議なようでもありながら、
居心地が良かった。
不透明な現実を生きるレディース&ジェントルマンの共通の憩いの場である。

たまたまその日その時間に出会い、
連絡先を交換するわけでもなく、
ただお酒を酌み交わし、共に興じるという時間に刹那のようなものを感じる。



先日近所に新しくできた、
クラフトビールと希少部位の焼き鳥が楽しめる立ち飲み屋に行った。

コーポだ



元々コーポだったらしき建物を、改装されている。
周りの建物も昔ながらの家や建物が多く、
こんなTHE住宅街にお洒落な飲み屋があるとは驚いた。

オープンしてまだ間もないということだが、
別の場所で人気の飲み屋をされていた方が、始めたお店とのことで、
話題性と信頼できる美味しさということもあるのだろうか、
お客さんは満員だった。

私が行った際は30.40代くらいの男女が多く、
カウンター越しにオーナーさんが
「若い方にも来てもらえるの嬉しいです。」と声をかけてくださった。

ヴァイツェンビールだいすき

ビールはたしか5.6種類あった。
一杯目はヴァイツェンを頂いた。
白ビールならではの爽やかで、主張し過ぎないスッキリとした味わいは何杯でも飲みたくなる。

白ビールはとても軽い飲み口でありながら、
フルーティな風味がふっとやってくる瞬間があり、味の奥行きのようなものを感じる。

焼き鳥の1本目はこころの部位をいただいた。
私は焼き鳥の中でこころが一番好きな部位なのだ。

初めて食べる背肝

あと、ももを頼もうとしたのだが、あいにく売り切れだった。
「ももはないけど、背肝ならあります、メニューには載ってないけど」とオーナーらしき男性が言う。

チェーン店には無い、
お目当ての料理がヤマだった時に、
メニューに載ってない料理を提供してくれるこの感じが本当に好き。

希少部位である背肝とは腎臓のことで、
白いぷっくりした部分は白子である。

肝よりもクセがなく、食べやすい。
白子のクリーミーな部分もたまらなく、
それはそれはもう舌鼓を鳴らした。

希少部位を置いてある焼き鳥屋は信頼できます。

スタウト

2杯目はスタウトを頂いた。
白ビールが軽いとしたら、
黒ビールは重量感のある味わいのように感じる。

一緒に合わせる食べ物は脂っこすぎないものの方が、私は好き。

焼きズッキーニは大正解だった。

立ち飲み屋で食べる料理は、なんだか座って食べる時よりも、
しっかりと丁寧に味わえて、食と真っ直ぐ向き合えるような気がする。

それはきっとこだわり抜かれた料理と、
スタンドという手軽なスタイルが同時に介在することで起こる、「気取らなさ」から生じる絶妙なバランスによるものだと思ってる。


お店を退店すると、
お店の前に、さきほど店内にいたお客さん男女3人組がいた。

「そのうちの男性が写真を撮りますよ」と急に声を掛けてくれ、
私と恋人がお店の前に立っている写真を撮ってもらった。
(その翌日、家の近所のスーパーで買い物をして帰っている時に、写真を撮ってくれた男性とたまたま道で遭遇して「あ!昨日の!」となったのもなんだか良かった)


ちなみにコーポは共同住宅という意味で、
アパートやハイツと同じ意味らしい。

店員さんもお客さんも、昔ながらのコーポの住民同士のような、あたたかい関係になれる飲み屋だった。


家の近所の馴染みのストリートを、
窓から漏れた光が照らす。

店を出ると、何かから醒めたように、
いつもの日常にすぐに引き戻される。
日常と地続きになっているのに、
どうして立ち飲み屋はこんなにも特別感を感じられるのだろうか。


オーナーが「また来てくださいね!」と、
言ってくれるその声を思い出しながら、
その日は家路についた。



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