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コーヒー一杯☕️短編小説

シャンプーの香りで目が覚める。同じシャンプーを使って起きた朝、自分の頭がこんなにいい匂いかもしれないことを、初めて知った。

「ゴールデンウィークだね。どうしよっか?」
寝ぼけた彼女は、僕の腕の中でごそごそと動いた。
「コーヒーが飲みたい」
腕を解き、布団を抜け出してキッチンへ向かう。
僕の部屋に慣れた彼女は、まるで自分の部屋のように、棚の中から簡単にコーヒーを見つけ出した。
まずお湯を沸かす。その間に豆を煎る。ゴリゴリと音が鳴る。カラッとした香ばしい豆の香りが漂う。
粉になったコーヒーをパックに入れて、お湯を注いだ。
ふわふわと泡立つ。

「すぅーーーーーは〜〜〜」
目を瞑って息を吸った。
マグカップにコーヒーを注ぐ。2杯のコーヒーが生まれる。
「休日は、一杯のコーヒーで十分だね」
ほおに血色が蘇る。
コーヒーを口に含む。熱い。苦さで目が覚めた。胸の真ん中がじんわり熱くなった。

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