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007 不健康自慢大会

座席後部からしゃがれた声が聞こえる。

「あら、……忘れた。あーあ、どうしよ」

「忘れたて、なんばね?」

「薬、薬ばもってこんとならんかった」

「薬て、どこに悪かと?」

「なーん。血圧の薬たい。別に悪かこたなかばってん、先生がやんなはったけん、飲まんといかんだろたい」

「そがんたい。血圧てどのくらいね?」

薬を忘れたという会話が耳に入ってくる。言葉はどこかのエリアの方言のようで、僕はそれが興味深くて書き留めていた。

後で調べたら、どうやら九州地方あたりの方言らしかった。

確か僕の後ろに座っていたのは、年配の男女だったはず。彼らの雑談がなんとはなしに耳に入ってくるのだが、ほとんどの会話が薬だったり、自分の体のどこが悪いかに終始していた。

例えば、

「最近、膝の調子が悪かったい。まげると、ほら、ここら辺が痛んできよる」

「そら、前からでしょうたい。わたしなんか、ほ、腕のここが、あんま曲がらんようになってしもてから」

膝が悪かったり、腕が悪かったりしているらしい。

更には、

「内臓がよわってきよると?」

「そぎゃんたい」

「今度、xxxxにお参りに行ってから、水ばもらってくるとよかね」

「どけあっとね?」

「結構近くよ。xxってわかるね?あそこの近く」

どちらかが内臓が弱っているのはわかった。そして、その治療にどこかに神頼みに行こうとしているようだ。

自分の体のコンディションの悪さを、まるで競うかのように話す二人。しかも、何となく楽しそうにすら聞こえた。実際、会話が弾んでいる。非常に興味深かった。

おまけに、この二人のおかげで、方言に興味を持つことができた。日本には、その地方の人間でなければわからない言葉もたくさんあるようだ。

僕にはまだまだ学ぶべきことがたくさんあるなと、感じた。


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