ずっこけ盆踊り放浪記④


踊りの神様が降臨した。
おじさんの指導は止まらない。
細い指導が入ると、頭を使い出すので、途端に踊れなくなるという現象が起こるのだ。
手も足もおかしなことになり、何度か自分に「イイーーッ!」となる。
ただ楽しむためにここへ来たのに、なんでイラつき始めるのか、もう訳がわからない。

そのうち神様は視界から消える。
ちょっとホッとする。テンポの速い曲が始まり、すると威勢の良い若者が下駄を上手いこと鳴らしながら、踊り出した。
こんなに若い子たちが、楽しそうに踊ってる姿、威勢よく掛け声を出して盛り上がっている姿を見ると、祭りって本来こういうもんよね!と熱くなる。
爺さん婆さんが踊るのも良いのだが、若い人たちのエネルギーってすごいのだ。そのエネルギーの輪の中にいるだけで、元気になるし、老若男女が混じってる感じもいい。
そうそう、これこれ、と思い出すのだ。

訳のわからない踊りをしていると、先程の下駄を上手いこと鳴らしていた青年が「踊れてますか?隣の人踊れる人なんで、見て踊ってみてください」と言ってくれる。
さすが若者、あのおじさんみたいに細かい指導が入らないので、精神的に楽である。
言われた通りに隣の若い女性の踊りを血眼で見る。
彼女は楽しそうに踊っている。見てるだけで楽しい。
曲が終わり、彼女に話しかけてみると、毎年徹夜おどりに参加していると言う。
「こんなに楽しいことに参加しないなんてあり得ない!」と彼女言う。ピカピカの肌を光らせて。こんなに若さ溢れる女性が日本の伝統文化を心底楽しんでるなんて、希望でしかないし、その姿はとてもはつらつとし、美しい。

気分もほっこりしたところで、また次の曲が始まり、踊り始めるとどこからともなく、また踊りの神様がすうっとやってきたのである。


つづく


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