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「11月7日」が繰り返される話(恒川光太郎:『秋の牢獄』)

今日(11月7日)限定で恒川光太郎さんの『秋の牢獄』という短編作品が全文無料公開されていたので読んでみました。(作品はカドブンから読めます)

この作品は主人公・藍が何度も繰り返される「11月7日」の中で「リプレイヤー」と呼ばれる同じ境遇の人たちに出会い、彼らと交流しながら好きなように過ごす様子が描かれていました。

何をしても、11月7日の朝になればすべてが元通り。(ただし「北風伯爵」なる謎の生物に捕まるとリプレイヤーではなくなる…らしい)
その性質を利用して、リプレイヤーの中には悪事に手を伸ばすことを選んだ人もいました。(でも結局は飽きていましたが)

もし自分が「リプレイヤー」になったら、どんな風に11月7日を過ごしたいですか?

私だったら作中の藍たちのように各地を旅するのは絶対してみたい!他だと普段はしないようなちょっと贅沢な買い物とかもしてみたいですね。

読んでいると「自分ならこう過ごしたい」といろいろ妄想が膨らむところもこの小説の面白いところだと思いました。

物語のラスト、何度もの「11月7日」を満喫した藍の前に「北風伯爵」が現れます。

藍をずっと閉じ込めていた「秋の牢獄」からの脱出のシーンでは、自分がこの世界11月7日の一員ではなくなることへの寂しさも感じられました。この時の彼女の感情は、きっと「死」ともよく似ているような気もします。

この作品の存在は前から知っていたのですが、今まで読んだことがなかったので、今回の無料公開を機に読めて良かったです。

ちょっぴり怖さを感じるものの、不思議とこの物語の世界にずっといたくなるような作品でした。

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