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少年社中25周年ファイナル公演『テンペスト』

サンシャイン劇場で行われてる少年社中さんの公演を観に行って来ました!

少年社中さんは25年も続いている劇団ですが、その25周年を締めくくるファイナル公演にシェイクスピアが後期に書いた作品『テンペスト』を題材にした作品を上演するとのことで、今日まで今か今かと指折り数えて楽しみにしていました。

あらすじ

旗揚げから25周年を迎える「虎煌遊戯」は今回2人の客演を迎えシェイクスピアの『テンペスト』を上演する。
だが上演途中に以前劇団員で演出家も務めていたギンという男が客席から乱入する。
今回客演で入っていた2人はギンが劇団に送り込んだ刺客であり、ギンは「演劇に復讐をする」と言う。
劇団員たちは決して止められない公演をなんとか修正しようとするが、ギンや刺客として送り込まれたランによって劇団の光と闇が入り乱れ公演はますます混乱していく。
果たして「虎煌遊戯」は公演を無事に終えられることができるのか。

劇団が実際に劇団の役を演じる。っていうところがおもしろいですよね。
多分少年社中さんも25年も続く中には、意見の食い違いだったり仲間の離脱だったりいろんなことがあったわけで、自分達の記念公演にその苦悩を演じるっていうのはリアリティもあって、25周年見守ってきたファンにとっては特別な作品になったことではないでしょうか。

演劇が大好きな人が「演劇に復讐をする」っていう台詞を吐く25周年公演。かなり尖っているように見えますが、「演劇が大好きだからこそ演劇に苦しめられてきた人生。だけど嫌いになんかなれないんだよな。」っていう演劇に携わる全ての人の言葉を凝縮したような作品だったなと感じてます。あの場にいる人キャストも運営の方も観客もみんな演劇に恋してるんですよね。そのパワーが凄くてとても好きでした。

私は舞台を観るようになって何年も経ちますが、やっぱり演劇に恋してる人は舞台上でも一際目を引きます。特に最近は。
少し前によくあった「名前を売るために事務所にオーディション受けろと言われました」が以前よりも通じにくくなってると感じています。
観客の演劇を見る目が肥えてきてるからです。
その心配が一切ないほどみなさん演技の熱量がすごい。どの人みても凄い。
上手いとかだけじゃなく、極めてる!それがこの作品に感じたことです。



以降ネタバレ含む感想

✴︎最後の演出について
私たち最後の最後にただ観客として【ただ舞台を観ていた】わけではなく、観客というキャストとして【舞台に出演していた】ということに気付きます。

それは『テンペスト』におけるプロスペローのように演劇への復讐に燃えていたギンが全てを許し、劇団に戻って来ることを観客の拍手に委ねられる場面で、客席に役者さんたちの視線が集まることで気づくとこになります。
最後まで「生でお芝居をする」という演劇の特性を表現した演出が、少年社中さんが真骨頂としている「浴びるような演劇体験を」を体現しているようでした。

✴︎鏡合わせの2人
突如として現れた天才俳優ラン(鈴木拡樹)と劇団でトップ俳優として立っていたゲキ(萩谷慧悟)
2人は『テンペスト』の中ではエアリアルという同じ役を演じた2人ですが、その演じ方が全然違うのが面白かったです。
ゲキは天才俳優で繊細なシェイクスピアの原作のイメージに近い精霊の演じ方をするのに対し、ランはそんな固定概念に囚われない自由で奔放な道化師に近い解釈なんですよね。
何年も劇団を支えてきたゲキと、刺客として演技を叩き込まれたランのお芝居の向き合い方の違いが表現されていて面白かったです。

そして現在の看板俳優として全てを背負ってしまうカグラ(矢崎広)と過去に劇団を背追い込もうとしていたギン(井俣太良)も同じように鏡のように描かれていました。
『テンペスト』のプロスペローとして表現されていて、
カグラもギンも公演中に台詞ではなく本気の言葉で仲間達とぶつかり合うことで、自分と演劇を許していくんですね。
この2人は対になっているというよりは、同じ方法で解決していく。
この4人の描き方が演劇っぽく、美しくて大好きでした。

俳優さんについて

少年社中さんは名前は知っていたし、評判も聞いていたのですが実は観るのは初めてでした。
でも俳優さんたちの名前は存じていて、正直言ってどの方も素晴らしすぎる人ばかりでした。
井俣さんの存在感と演技の説得力は圧巻、大竹さんのヒメは繊細な人間の心の動きがナチュラルに入ってくるし、それぞれにすごいところが盛りだくさんでしたが、何より不明瞭な台詞を言う人が誰もいないってところがすごい。
当たり前を当たり前にできることが、25周年を迎えられる劇団の凄みなのかもしれないと感じることになりました。

もちろん鈴木拡樹さんや矢崎広さん、萩谷慧悟さん客中の方々も眩しくて、毛利さんとの鈴木拡樹さんという俳優の解釈の一致など言いたいことは山ほどあれど、今回ここまで記事を見て下さった方は演劇がかなり好きな方と見て、最後にヒナタ役 本田礼生さんについて伝えさせてください。

本田礼生さんについて

もともと本田礼生さんのファンをさせていただいている者でして、これまでいろんな作品を観させていただいたんですが2024年1発目が少年社中で「ありがとう〜!!!」と叫びたい気持ちでいっぱいなんですよね。

といいますのも、本田さんほんとに演劇が好きな俳優さんだと思っていて楽しそうに板の上に立つ方なんですよ。
ただ2.5次元とかだと若手がどんどん出てきて歳上の立場になってきて、「支える演技」が多くなってきちゃう印象なんですよね。

本田さんという俳優さんを観てきて、私が思うのは「幅広い役ができるというよりも、自分のできる中でグラデーションのある演技ができる人」というイメージ。
器用で繊細な表現ができる人なのに、俳優としてそれを求められにくいってところがあったような気がしてるんです。

ただ『テンペスト』で板の上に立ってる本田さんは久しぶりに大物たちに素手でぶつかっていくみたいな、少年ジャンプ的な感じに見えてファンとしてワクワクしました。
今年も凄い本田さんが見れるんだ!!楽しみ!!そんなことを思わせてくれる公演になりました。

✴︎本田さんのお芝居が好きすぎる件について
まず本田さんの「おもしろお兄さん」的なところをよくぞ出してくださいました!の役のチョイスに大拍手。
客演で劇場をちゃんと笑わせられる場の掴み方はすごく好きでした。

あとヒナタが劇中で変わる場面が2回あって、その表現が俳優 本田礼生の良さが出てて好きでした。
まだ正体を明かしてないゲキがヒナタに憑依する場面と、劇団のことを聞かされて自分はどうするべきなのか考えてから板の上にたつ瞬間の2回。

ふと目の色が変わって、劇団でも下っ端だったヒナタが本当に俳優として発声も変わる瞬間はぜひ1回観終わった方ももういちど注目していただきたいと思います。

(もし今回の公演で気になった方がいれば、2023年『三人芝居』という作品の本田さん観てくださるとかなり楽しめると思います。)

最後に

総じて言えること、「最高でした」の一言です。
演劇大好きな人はきっと何かを受け取れる作品だと思います。
好きなことを続けること それは楽しいだけじゃないけど」なんてYOASOBIさんも言ってるけれど、25周年も劇団が続いてれば絶対いろんなことがあったと思います。

少し演劇を齧った私でさえ、毎公演「逃げたい」「やめといた方がよかったのかな」とかなるのに25年。演劇の神様を恨みたくなったこともあるかと思います。
それでも長い間演劇を愛し続けてきた人たちの作品を、演劇を愛し続けてるみなさんと観れたこと大変幸せでした。
ここまで読んでくださったみなさま、そしてまた素敵な作品を見せてくれた本田さんにもありがとうございました。
2024年もどうぞよろしくお願いします!


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