無理なく、心地の良い清潔さを保ちたい

ダーティーとクリーン。

筋トレをしていると食事に清潔度の感性が芽生える。
美味しい・美味しくない、好き・嫌い、カロリーが高い・低い、などの中にダーティー・クリーン。

身体に良くて栄養がある食事をクリーンな食事と呼び、日本人なら和定食がイメージしやすい。
お米、おひたし、汁物、焼き魚といった食事内容は理想的だ。

筋トレをする人には、あえて体重を大幅に増やして体を大きくする増量期(バルクアップ期)を設ける人も多いが、これもクリーンバルクとダーティーバルクと呼ばれるものに分かれる。
ファストフードなどのダーティーな食事で体重を増やすと、いざ減量期に入った時に痩せにくく、筋肉と共に増える脂肪も多くなる。
マイルドドラッグなどとも言われる白色に輝く美味しいものたち——小麦粉、砂糖、塩、生クリームなどの油脂は本当に美味しくて心の健康には良いが、依存性が高くダーティーな食材だ。
同じカロリーだったとしても、クリーンな食事で太ることに比べ脂肪がつく割合が高く、健康に悪い。
筋トレのためにも、心身の健康や美しさのためにも、クリーンな食事をたくさん食べられたら良いが、少食であったり、体質などによっても難しい場合はある。

私も可能な限りクリーンな食事を心がけてはいるが、世の中には誘惑があまりに多い。
美味しいものの依存を断ち切りクリーンな食事に慣れたとしても、生活の中の様々なストレスによって人は食事に刺激を欲してしまうことがある。
クリーンな食事というのは、できる限り「刺激を排した」食事だとも言える。

私はコーヒーやチョコレートなどの嗜好品がもともと好きだし、それらは少なからず刺激のある食べ物だろう。
対して和食は、風邪の時でも食べられるものが多く、味付けも優しい。
健康的な食事だって十分に美味しいのに、どうしてか心が満たされず、カロリーだけ高くて栄養価の低い特定の食品や、濃い味付けを求めてしまうという経験は誰しもあるように思う。
ストレスがある時こそどうやって食事を楽しみ刺激をもたせるか——それはフィットネスをする上で常に私の課題だ。

対策の一つとして、好きなメニューではなく好きな「食材」を知ることは有効だと思う。
その中にはヘルシーでも食事を十分に豊かなものとして楽しませてくれるものが見つかるかもしれない。
ジャガイモなんかは太ると思われがちだが、脂質と組み合わせない調理法にすれば、大変優秀な減量食となる。
基本的に揚げたり、バターと食べたりする料理が有名なので、ジャガイモは太ると思われがちだ。
塩や砂糖の味ではなく、素材そのものの味が好きだと思えるものをいくつか知っておくと良い。私の場合はそれが卵だった。
毎日食べても美味しい、好き、と思える食材を見つけて素材そのものの味を楽しむことができたら、クリーンな食事は少しだけ楽になる。

あとは別の角度から、健康的な刺激を取り入れることも有効だ。
スパイスや薬味などでいわゆる「味変」することで食材を汚すことなく刺激を得られる。
また、コーヒーやチョコレートなどは嗜好品で刺激があるとはいえ、うまく取り入れることができたら健康を促進しクリーンでいられる。

私にとっては、毎日の食事を楽することが何より大事だが、楽をするだけでは避けられなかった何かしらの疲弊がある時などは、心を満たすための工夫は必要だろう。
そんな楽や工夫をするにも、最低限、心身と時間の余裕が必要になるから厄介だと思う。
自炊をする余裕、後で楽をするためにまとめて何かしておく余裕、自分の好きな食事を考える余裕、自分の機嫌を自分でとれる余裕——生活全般を自律的なものとして、クリーンに保つ余裕。

部屋が綺麗な時はダイエットが順調に進むのは「あるある」なのではないかと思うが、何事も清潔であるためには努力が必要で、その努力が行使されている空間というのは自制的で自律的な良いサイクルが保てる余裕があるのだと思う。

ニーチェは清潔が幸福に関与するものとして、こんなことを言っている。
「清潔好き。——子供のうちに清潔好きの感覚をそれが情熱となるほどまでに焚きつけるべきである。後日それは、たえず新しく姿をかえながら高まってゆき、ほとんどすべての美徳にゆきつく。そして最後にはそれは、あらゆる才能の補正として、清潔、節度、温厚、品性のいわば光の面紗のように見えてくる、——幸福を身にたずさえ、幸福を身のまわりにひろめるものとして」

幼少期から生活のあらゆる清潔を保てる習慣化が無理なく行われたら最強だが、そういう人は稀だ。
ヘミングウェイの短編小説『清潔でとても明るいところ』で感じるような強烈な明暗が人生にはある。毎日の中にさえある。
濃い影の中で必要とされる光のあたる清潔なカフェのように、心と体をいっとき休めるためにも、居心地がよいと思える適度な清潔さが生活にも食事にもせめてたまにあると良い。

結局のところ継続が最も難しく価値があるとも言えるため、無理のない清潔さを続けていきたいと思う。

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