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今日ときめいた言葉136ーアカデミー賞の「アジア人の透明化」

(画像はトレジャートイズから転載)

(2024年4月8日付朝日新聞 「GLOBEハリウッドのアジア人軽視」俳優 松崎悠希氏の言葉から)

記事を読んで早速YouTube で見てみた。確かに、助演男優賞受賞のロバート・ダウニーJr.と主演女優賞受賞のエマ・ストーンの態度は不快だった。前者はアジア系のプレゼンター(前回受賞者)を2回も無視したという。「傷をえぐられるような感じ」だったと、松崎氏は語る。

ハリウッドの世界で20年以上活動してきた松崎氏は以下のように解説する。そこには複雑な理由がありそうだ。それは、

ハリウッドの映画を作ってきたのは白人たちだという自負からポッと出てきたアジア系俳優に対するリスペクトがなかったからで、差別意識があったわけではないだろうということ。一方アジア系俳優にしてみれば、ハリウッドの映画界を作ってきたのは白人たちで、彼らの差別意識を批判する行為はキャリアを作ってくれた人たちに対する裏切り行為になる。だから批判することがはばかられる。

松崎氏は続ける。

でも誰かが言わないと気づかないし、変わらない。文句を言って初めて変わる。アメリカはそういう社会だ。
(そう思う。我ら家族もそんな差別をたびたび経験した。娘たちなどいまだに不快な経験をすることがあるという。その度にファイトバックしている。小学校のSchool Boardのメンバーになって意見も言う)

松崎氏がこだわってきたのは、

「ハリウッドの日本に対する差別的な描き方や日本を描く際に多様性を一切排除するスタンス」これを批判したところ、日本の描写が改善されたそうだ。

なぜそんなにもこだわるのか?

「ハリウッドが出す作品は世界中に広まっていきます。我々日本からの俳優が『日本人』というものを描き、日本人を『表象する』ことによって、世界が考える『日本人像』が変わるんですよ。だから、どんなふうに日本人のキャラクターを演じるべきかを常に考える必要がある。その責任が我々にはあるんです」

でも松崎氏が特に心配しているのは、

「日本からの俳優や映画人が、『ちゃんとした日本』を世界に伝えたいと思うあまり、一元的で多様性の欠如したステレオタイプな日本像を世界に発信していないかということです。いわゆる我々日本人が考える『様式美的な日本像』になっていないか。これこそが『日本人だ』と限定することで、逆に『排除されている日本人』がいないか、という部分です」

またしても「日本人とは何か?」「日本社会とは何か?」に立ち返る。「排除される日本人」には性的マイノリティとか外国にルーツを持つ日本人とかがいる。

日本人像を多様化するためには多様化した作品を世界に出すこと。多様な日本社会を反映した作品をヒットさせることでハリウッドの映画人の「無意識下の日本人像」がアップデートされる。そしてハリウッドの作る「日本人像」も多様化される。


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