創作童話『ねぇねぇ、あのね』
うさぎのマルは、内緒話が大好き。
隣に住むリアーと、いつもコショコショと内緒話をします。
「ねぇねぇ、あのね」
マルはいつものようにリアーに言いました。
「うんうん、なぁに?」
リアーは大きな耳をマルの方へ傾けて、耳を澄ませます。
「台所にあったおまんじゅうを、つまみ食いしちゃったんだ」
「ダメじゃないか、そんなことしちゃ」
「美味しかったから、きみにも持ってきたよ」
マルはそう言っておまんじゅうを差し出しました。
「まったくもう、マルったら」
そう言いながらリアーはもぐもぐとおまんじゅうを食べ始めました。
「ね?美味しいだろう?」
「うん、とっても美味しいよ」
またある日、マルは言いました。
「ねぇねぇ、あのね」
「うんうん、なぁに?」
「綺麗な原っぱを見つけたんだ。ふたりで見にいこうよ」
「そいつはいいね!」
ふたりはピョンピョン跳ねながら、原っぱに向かいました。
原っぱには、綺麗な草花がたくさん咲いています。
「とっても綺麗だろう?」
「うん、ここ、すごく気に入った!ふたりの秘密基地にしよう!」
ふたりは原っぱを駆け回ったり、穴を掘ったりして遊びました。
また、ある日のこと。
「ねぇねぇ、あのね」
「うんうん、なぁに?」
「お馬さんを見にいきたいんだ。牧場に行こうよ」
「仕方ないなぁ。ついておいで!」
ふたりはまたピョンピョンと跳ねながら、牧場に向かいました。
牧場では、羊さんや牛さん、色々な動物たちがのんびりと暮らしていました。
「いたいた!お馬さんだよ!」
マルが嬉しそうに言いました。
お馬さんは大きくてたくましく、とても立派に見えます。
「やぁやぁ君たち、どこから来たんだい?」
お馬さんはふたりに尋ねました。
「ずーっと向こうの森からだよ。この子がお馬さんに会いたいって言うから、連れてきたんだ」
リアーが答えます。
「そうかい。あんまり遅くならないうちに帰るんだよ」
お馬さんはそう言うと、パカラッパカラッと走っていきました。
「お馬さん、かっこいいねぇ」
マルは目を輝かせて言いました。
冬になりました。
マルは冬になると外に出てこなくなります。
リアーはそんなマルのことが心配でたまらなくなりました。
あったかい帽子とマフラー、手袋をつけて、リアーはマルのおうちへ出かけました。
その日は雪が降っていて、風もビュービューと吹いていました。
「マル、入るよ」
リアーがマルのおうちのドアを開けると、ベッドの上でマルがブルブルと震えていました。
「ダメじゃないか、そんなに寒い格好をしてちゃ」
リアーは、自分の帽子とマフラー、手袋をマルにつけてあげました。
それから暖炉の火をつけ、温かいココアをふたり分用意しました。
ココアを飲んでるうちに、ふたりともポカポカとしてきました。
「冬は苦手なんだ。お山の向こうから、寒ーい風が吹いてくるから」
マルがぽつりと言いました。
「そうかい。それなら、冬の間は一緒に暮らそう!もう寒い思いなんてさせないよ」
リアーは自信満々にそう言いました。
「ねぇねぇ、あのね」
マルのいつもの内緒話がまた始まりました。
「うんうん、なぁに?」
リアーもいつも通り、耳を傾けてやります。
「きみのことが、だーいすき!」
おしまい
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