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創作童話『ガーガの冒険』

黄色い足を忙しなくパタパタとさせ、アヒルのガーガは今日も出かけます。
冒険好きのガーガは、なにか面白いことはないかと、よく探しにいくのです。


ガーガが歩いていると、お猿のおじいさん、ゴンタが道の真ん中で困っているようでした。
草の根を掻き分け、何かを探している様子です。
「ゴンタさん、こんにちは!」
「はいはい、こんにちは」
ゴンタは面倒くさそうに返事をしました。
「こんなところで、どうしたの?」
ガーガが尋ねます。
「お前さんに言ったところで、どうしようもないさ」
ゴンタは頭を掻いて、うんうん唸り始めました。
「困っているんでしょう?僕が手伝ってあげる!」
ガーガは冒険好きな上に、少々おせっかいでした。


「大切な石を、失くしてしまったんだ。もう三日三晩探している。お前さんにも見つけられまい」
ゴンタははぁ、とため息をつきました。
「僕が探してくるよ!」
なんだか宝探しみたいだ!と、ガーガはワクワクしました。
「無理さ。あちこち探したんだ」
冒険好きのガーガは諦めません。
「きっと、僕の友達が知ってるはずさ!どんな石?」


根負けして、ゴンタはこう言いました。
「よぉし、そんなに言うなら、真っ赤な石を見つけて来い!ルビーのように美しい石じゃ。見つけてきたら、たんとお礼してやる」


ガーガは、仲良しの蝶々たちに聞いてみようと思い、まず、モンシロチョウのところへ駆けていきました。
モンシロチョウは、キャベツ畑をヒラヒラと舞っています。
「モンシロチョウさん、こんにちは」
「こんにちは、ガーガ」
「ゴンタさんの失くしもの、探しているんだ。真っ赤な石を知らないかい?ルビーのように美しいんだ」
「それなら、このキャベツ畑を持ってるおばあさんのお庭で見たわ。こっちへいらっしゃい」


モンシロチョウはガーガを案内してくれました。
ふたりはそーっとおばあさんのお庭に入ります。
モンシロチョウが舞っているすぐそばの草の根に、赤い石が落ちていました。
それは、ルビーのように美しい石でした。
「きっとこれに違いない。ありがとう!」
ガーガは石をくわえると、ゴンタのところへ戻りました。


「ゴンタさん、赤い石って、これのこと?」
「おぉ!これだこれだ!」
ゴンタはガーガから赤い石を受け取ると、白い袋の中に大切そうにしまいました。
「よぉし今度は、青い石を見つけてみろ!サファイアのように真っ青じゃ。見つけてきたら、たんとお礼してやる」


ガーガはアゲハ蝶のところへ駆けていきました。
アゲハ蝶は、湿原で静かに飛んでいました。
「アゲハ蝶さん、こんにちは」
「こんにちは、ガーガ」
「ゴンタさんの失くしもの、探しているんだ。青い石を知らないかい?サファイアのように真っ青なんだ」
「それなら、小川のほとりで見たわ。こっちへいらっしゃい」


アゲハ蝶とガーガは小川に向かいました。
「ほら、ここよ」
アゲハ蝶が舞っているところを見ると、青い石が川の中でキラキラと光っていました。
サファイアのように真っ青です。
「きっとこれに違いない。ありがとう!」
ガーガは石をくわえると、ゴンタのところへ戻りました。


「ゴンタさん、青い石って、これのこと?」
「おぉ!これだこれだ!」
ゴンタはガーガから青い石を受け取ると、また大切そうにしまいました。
「よぉしお次は、緑の石を見つけてみろ!エメラルドのように輝いている。見つけてきたら、たんとお礼してやる」


ガーガはゴマダラ蝶のところへ駆けていきました。
ゴマダラ蝶は、ひと気のない公園で飛んでいました。
「ゴマダラ蝶さん、こんにちは」
「こんにちは、ガーガ」
「ゴンタさんの失くしもの、探しているんだ。緑の石を知らないかい?エメラルドのように輝いているんだ」
「それなら、木の上で見たわ。こっちへいらっしゃい」


ゴマダラ蝶は、ガーガを大きな木のところへ案内してくれました。
「この上にあるわよ」
ゴマダラ蝶はそう言いましたが、ガーガは飛べないし、木を登ることもできません。
ガーガはくちばしで木をつついてみたり、お尻で叩いたりしてみましたが、何も落ちてきませんでした。
ゴマダラ蝶はヒラヒラと上の方へ飛んでいくと、ポトリと石を落としてくれました。
それは、エメラルドのように輝く緑の石でした。
「きっとこれに違いない。ありがとう!」
ガーガは石をくわえると、ゴンタのところへ戻りました。


「ゴンタさん、緑の石って、これのこと?」
ゴンタはそれを見て、ガーガから緑の石を奪い取るようにすると、白い袋に入れるのも忘れて、スタコラサッサ逃げていきました。
「あれ?」
もう終わりなのかな?
そういえば、ゴンタさんは、たんとお礼すると言っていたような。
ガーガはゴンタが戻ってくるのを待ちました。
しかし、どれほど待ってもゴンタが戻ってくる気配はありませんでした。


「まぁ、いいや」
いつの間にか日暮になっていたので、ガーガはお家へ帰りました。
明日もなにか、面白いことがあるといいな。



おしまい

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