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やりたいことがなくたって、食えれば別によくない?

2ヵ月に1回。
わたしが美容室に通う頻度だ。

ショートスタイルかつブリーチもしているため本当は1ヵ月半に縮めたいところなのだが、1回3時間かかることと財布の事情が秤に乗ると2ヵ月に1度が自分のなかでつり合いがとれるポイントだ。

ぼちぼち美容室だというタイミングに帰省が運良く重なると、実家近くの美容室にお世話になる。
人もよく腕もよい美容師さんなので、安心しておまかせできる。

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担当のSさんは(おそらく)社会人歴と美容師歴がイコールでつながる経歴の持ち主だ。
複数の店舗を経て、今のお店をオープンしたと聞いた。

雇われて働くのと独立して働くのとでは、みえる世界が180°変わるといっても過言ではないと思う。
雇われて働いている時分は「被雇用者」の目線でしかなかなかものごとを考えられないが、独立するとなると経営者目線が求められる。

売上をあげて利益を生まなければ、お店は続けられない。
時流も変わり、街も変わり、近所の競合も移り変わるなかでお店を十数年運営しつづけるということは、とてつもなく大変なことだ。

Sさんはこう言う。
美容師のなかにも、自分のお店を持ちたい、もっともっと規模を大きくしたいと経営の道に進み、現場には立たなくなる美容師もいます。
でもわたしは美容師という仕事が好きだから、ずっと現場にいたい。「経営だけ」というのはできないし、むしろ経営は超苦手。
とはいえ、自分のお店を持つとやりたくないこともたくさん出てくる。
その「やりたくないこと」は、現場に立ちたい一心で乗り越えてきた感じかなあ。


…ああ、すごいなSさんは。
わたしは「やりたくないこと」がつらすぎて、挫折してしまった側の人間です。

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ライターとして活動しはじめる数年前、実はまったく別の仕事で独立した時期がある。
好きなことをして働きたいと思ったし、環境もタイミングも悪くなかったから。

でもすぐに挫折した。
どんなに好きなこととはいえ、Sさんもいうように経営となるとやりたくないことも多かれ少なかれ出てくる。
がんばったからといって、結果が出るとは限らない。

赤字続きとなると、毎月毎週毎日、心がえぐられる感覚を味わう。
…わたしは早々に見切りをつけて辞めた。

「好きなこと」と「やりたくないこと」が天秤にかけられて、秤は「やりたくないこと」のほうに傾いてしまったから。

それだけ早く諦めがついたということは、その程度の「好きなこと」だったのかもしれない。

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そして今、わたしはまたライターとして独立して働いているわけだが、今の仕事が好きか?と問われたら「嫌いではない」との回答になるだろう。

まず書くことそのものが苦ではない。
そこからクライアントとのやりとりや、(正直たまにある)ぜんぜん書きたいと思えない仕事などの「やりたくないこと」をぜんぶひっくるめて引き算したとしても、まだ「苦ではない」が残るから続けられているだけである。

書いているジャンルに関しても、とくに好きなわけではない。
さほど苦ではなく書けるから書いているだけだ。
第一、本当に書きたい文章ならお金をもらえなくたって書く。このnoteのように。


「どうせ働くなら好きなことを仕事にしよう」と声高に叫ばれるようになった一方で、やりたいこと迷子も多い。「やりたいことの見つけ方」といった本もたくさん出ている。

別に、やりたいことなんて見つからなくてもいいんじゃないの。
仕事にする必要もないし。

仕事となると切に生活がかかってくるから、基本的には続けていくことが前提になるでしょう。
働かなくても食っていける蓄えでもない限り。

「やりたい」とか「やりたくない」とか贅沢いっていられないのなら、まずはできるだけストレス小さく続けていけることのほうが現実的だし、だいじじゃないの?とわたしは思う。

「好きなことで働こう」神話に惑わされることないよ。
Sさんのように「好きなことを仕事にして食ってます」という人たちはたしかに素敵だけど、そうじゃなくたって幸せな人たちはスポットライトが当たりづらいだけでたくさん存在しているはずだ。

やりたいことがないから劣っているわけでも、好きなことを仕事にしなければ劣っているわけでもない。

「苦じゃない」という、消去法のスタートもあるんじゃないかな。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたの「苦じゃないこと」はなんですか?

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