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涙色のレモンサワー [前編]

起業家という道を経て、今は二作目の出版を目指して執筆活動に明け暮れる橋本なずなです。

母の死の前後、主に私を支えてくれた3人。
母の恋人のヤナちゃんと、共通の友人であったカナちゃん。そして、友人のトモくん。

今日はその、トモくんの話をしましょうか。

遡ること半年ほど前、2023年の夏。
その頃に書いたnote【 私がセックスをしたい時に、】は、PR記事を除いて昨年最もバズった作品です。
そこに登場した “トモくん” と、今回のトモくんは同一人物です。


———  トモくんと夕飯を食べて帰宅すると間もなく、母の心臓が止まったと病院から連絡がありました。
私は病院に向かうタクシーの中でトモくんに電話を掛けました。

「 お母さん、心臓止まったって。今病院に向かってる 」

返って来た言葉は意外なものでした。

『 僕も病院向かうわ。出る幕無ければそれはそれで良いから 』

病院に着いてからは【 母が亡くなりました。】に書いた通り。
その後、私は救急玄関口で待っていたトモくんと話をしました。

『 何かして欲しいことはある?』『 役に立てることはある?』と、トモくんはとても親身になってくれました。
その日、母が亡くなったことで自分が何をしでかすか分からなかったから、私は夜を一人で越すべきでないと判断しました。

そのため、母の遺体を乗せた葬儀社の車を見送った後、私はトモくんと共に家に帰りました。

確か帰宅したのは、夜中3時か4時頃だったと思います。
私は母の死で完全に覚醒してしまい眠ることができなくて、朝日が昇るまで永遠とお喋りをしていました。
何を話していたのか、今はもう覚えていませんが、トモくんは今にも閉じてしまいそうな重たい瞼を擦りながら、付き合ってくれていました。

その翌日の葬儀社との打ち合わせも、そのまた翌日も、そしてお葬式の当日も。
ずっとトモくんは側に居てくれました。


———  お葬式当日

告別式の後、火葬場に向かう車内で、私は怒りを露わにしていました。
トモくんの運転で、助手席に私、後ろにはカナちゃんが乗っていました。

「 お祖母ちゃんらさ、なんなんあれ!悲しそうな顔しやがってさ!一回お母さんの心殺してるヤツが、ノコノコ出てくんなよな! 」
「 だってその当時、お祖母ちゃん、実の娘のお母さんに対してストーキングしてたんやで⁈  地域ぐるみで嫌がらせして、お兄ちゃんまで奪ってさ。お母さんを意図的に孤立させた主犯格やで! 」
「 せやのに、あんな顔して。なんでお葬式来れんねん…! 」

祖父母らが母にした悪事について話していると、ハンドルを握るトモくんの手に、段々と圧力が込められていることに気が付きました。

『 なずなちゃんの家庭のことはざっくりと話訊いてたから。祖父母さんらが来た時、僕もなんかイライラしてさ 』

なんか、なんかさっ… と言葉を詰まらせながら、トモくんの目には大粒の涙が浮いていました。

『 僕が泣くなんてレアやで 』と笑っていました。
確かにトモくんが泣いている姿なんて、見たことが無かった。
それに、悲しみでも嬉しさでもなく、“他人の事情への怒り” で一緒になって涙を流してくれるなんて。

私は「 ありがとう 」と言って、ハンドルを握るトモくんの手を、ぎゅっと握りました。


お葬式と火葬の後、骨になった母を連れて家に帰りました。
ヤナちゃん、カナちゃん、トモくんとともに祭壇をつくり、お線香を上げて手を合わせました。

疲れもあったことでしょう。ヤナちゃんとカナちゃんは先に帰り、残った私とトモくんは二人で夕飯を食べに行くことにしました。

家から歩いて十数分の焼肉屋さん。
私たちはレモンサワーで乾杯をしました。

『 一日よく頑張りました 』
「 私、今朝ぐずってたもんな(笑)・・・我ながら、ほんまよう頑張ったわ。トモくんもありがとうね 」

今朝、私はお葬式に向かう途中、トモくんが運転する車の中で子どもの様にぐずっていました。
お葬式行きたくない、お母さんにさよならしたくない、やだやだ、帰りたいって。

けれど多くの参列者の皆様と、身近な3人のおかげで、何とか無事に母との別れをやり遂げることができたのでした。

あの夏のように、トモくんはお肉を焼いてくれている。
私はそれを食べて、レモンサワーで流し込む。

「 私さ、 」

言葉はおもむろにこぼれました。

「 ご飯を、お酒を、美味しいって思えるんは、まだずっと先になると思ってた 」

その言葉を聞いて、トモくんはぐっと口を噤んで目を大きく見開きました。

後編につづく

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