安藤進一

1966年福岡県生まれ。北九州の出版社・株式会社あかつき舎代表取締役。安藤行政書士事務…

安藤進一

1966年福岡県生まれ。北九州の出版社・株式会社あかつき舎代表取締役。安藤行政書士事務所代表。2022年9月より協同組合折尾商連理事長。著書・編集書籍の関連などを記事にしていきます。

最近の記事

今月のひと駅-2024年5月

駒込(山手線) こまごめ駅 東京都豊島区 明治43年開業 ソメイヨシノはこの地から  巣鴨から駒込にかけては、東へほぼ一直線の掘割区間。だから、車窓の見通しは悪い。何も変化を感じることないまま、駒込駅に入ると、ホームの両側は掘割からツツジの花壇に変わる。5月には色鮮やかなピンクに染まる、沿線風景の名所。巣鴨側からだと、コンクリートの壁からいきなり変化するので、感動よりも驚きが勝る。  今でこそ、駅とツツジの関係を知る人も少ないが、駒込は江戸時代に遡る、造園職人のまちだ

    • 今月のひと駅-2024年4月

      伊豆多賀(伊東線) いずたが駅 静岡県熱海市 昭和10年開業 今は見下ろす桜の美しさ  来宮駅を出るとすぐに単線となり、ゆるゆると急カーブを切り始める。トンネルに入っても、まだレールをきしませる金属音が響き、なかなか加速しない。  2本目のトンネルからようやくスピードアップするが、今度はなかなか暗闇から出ない。ようやく光が差したかと思うと、見晴らす海は視線のずんぶん下の方。線路はかなり高所まで登っている。それでもこの区間は切り通しが多く、なかなか車窓を楽しめない狭苦し

      • 今月のひと駅-2024年3月

        都留市(富士急行線) つるし駅 山梨県都留市 昭和4年開業 赤ら顔のインベーダーに注目 一般に聞かれることはあまりないけれども、山梨県は笹子峠や籠坂峠などが連なる急峻な分水嶺を境に、西は「国中(くになか)地方」、東は「郡内(ぐんない)地方」という名で分けられる。国中とはいうまでもなく、旧甲斐国の中心である甲府盆地一帯を指すもの。対して郡内とは都留郡全域という意味で、それだけ都留が広域な地名、つまり甲府盆地とは環境も風土も違う、一国に相当するほどのものであることがわかる。

        • 今月のひと駅-2024年2月

          上臼杵(日豊本線) かみうすき駅 大分県臼杵市 大正6年開業 うすきいろの城下を堪能 車窓から眺めていると、臼杵の市街はかなり長く感じる。線路が「し」の字を描いてまちの外縁を周回するからだ。熊崎から郊外の住宅地を進み、臼杵川を渡ると列車は金属音をきしませて急カーブを描く。「し」の底の部分に、半ば無理やりの感で片面だけのホームが延びる。ハートをあしらったユニークな駅名標は、次駅の話題にするとして、車両との隙間が大きいホームからは、植え込みも美しい坂の下に、開業以来の姿を忠実

        今月のひと駅-2024年5月

          今月のひと駅-2024年1月

          柳井(山陽本線) やない駅 山口県柳井市 明治30年開業 主役は鉄道から白壁へ 一時は路線名にまで採られた柳井のまちは、長らく交通拠点の性格が強かった。柳井港の存在から、四国への一玄関という要素もあるものの、ブルートレイン全盛時代を知る人からすれば、柳井は広島と下関の間で、かつての小郡とともに印象深い中継駅に違いない。それは、柳井に鉄道関係の業務施設が置かれ、特急列車の多くが停車して、機関車の入れ替えや乗務員の交替などが行われたためだ。  それでも、柳井市の人口は最盛期

          今月のひと駅-2024年1月

          今月のひと駅-2023年12月

          馬路(山陰本線) まじ駅 島根県大田市 大正7年開業 マジで輝く琴ケ浜 見えそうで見えない海岸風景にもどかしさを覚えつつ、ほんの一瞬、築堤の上から集落越しの海が見える。細い路地とともに家並みがせり上がって、また視界がふさがれると馬路駅に着く。ここも五十猛と同様、日除けのない島式ホーム1本だけの駅で、撤去された駅舎に代わって、ホーム上に小さな待合室が設けられている。  ただ、驚くのはこの駅の駅名標。下り線側には「まじ!?」と大きく書かれ、撮影用に顔出しの穴が開けられている

          今月のひと駅-2023年12月

          今月のひと駅-2023年11月

          下小川(水郡線) しもおがわ駅 茨城県常陸大宮市 大正14年開業 地獄の橋の清らかさ 中舟生を過ぎて国道が川の対岸へ渡ると、いよいよ清流とのランデブー。待ちに待った清々しい風景が、この先、常陸大子のまちを挟んで福島県境まで堪能できる。  渓流の水面がだいぶ近づいてきた頃、関東では珍しい沈下橋が見えてくる。頑丈なコンクリート造りとはいえ、欄干もなく細々とした橋は、どこか頼りなく映る。それでも国道と下小川の集落を結ぶ、れっきとした生活道路で、もちろん車も通ることができる。歩

          今月のひと駅-2023年11月

          今月のひと駅-2023年10月

          篠目(山口線) しのめ駅 山口市 大正6年開業 高原にてSLの一服 山に阻まれた仁保駅を出ると、すぐさまトンネルに入るけれども、約1キロの暗闇を抜けてもまだ上り坂の峠道は続く。森の切り通しに潜ったり、中腹から谷を見下ろしてみたりと、変化に富んだ地勢は、それこそSLの力の見せ所。一方で、途中にいくつか現れる口径の小さなトンネルでは、黒煙に包まれて機関士にとっても乗客にとっても泣き所だ。  最も長いトンネルを最後に抜けると、周囲は峠を「越えた」というより「登りきった」という

          今月のひと駅-2023年10月

          今月のひと駅-2023年9月

          鹿児島(鹿児島本線/日豊本線) かごしま駅 鹿児島市 明治34年開業 元来の県都駅舎は五代目  そこにあるのは桜島だけ、と言ってよい竜ヶ水駅からは、まったく都会の兆しが感じられない。沿線の全列車は2駅先の鹿児島中央まで乗り入れるが、日豊本線としての終点は、もう次の鹿児島駅。ただし、竜ヶ水からはまだ7キロもある。そこまで孤高の道が続くことに、薩摩国の代名詞である鹿児島のまちが、いかに本州側から隔絶された環境だったか、改めて思い知らされる。  山手の崖が少し後退して、車窓に

          今月のひと駅-2023年9月

          今月のひと駅-2023年8月

          上麻生(高山本線) かみあそう駅 岐阜県七宗町 大正13年開業 ひちそうか飛水峡か 上麻生駅があるのは七宗町。誰でも「七」を「ひち」と読むと「しち」に直されるものだが、七宗は「ひちそう」と呼び、本来の誤表記が正式名称となっているところ、その強引さは、ある意味で称賛されるものかもしれない。  しかし、この界隈で「ひちそう」の町名より有名なのは、飛騨川きっての名勝、飛水峡だろう。駅の裏手から始まる、谷底深く刻み込まれた奇岩・甌穴の連続は、車窓から眺めるだけでも吸い込まれそう

          今月のひと駅-2023年8月

          今月のひと駅-2023年7月

          日暮里(京浜東北線) にっぽり駅 東京都荒川区 明治38年開業 鉄道展望からまち歩きへ 西日暮里からまた、東北本線が合流してきて、今度は新幹線が掘割へと沈み始める。さらに左手からは常磐線と京成電鉄も急カーブを切って合わさる。  新幹線が地下に潜る直前、地上に広がる日暮里駅の構内は、京成線も含めて6路線、13もの線路がずらりと並んでひっきりなしに電車が行き交う。東口駅舎の裏から回りこんで構内を跨ぎきるという、珍しい動線の道路橋「下御隠殿橋」(しもごいんでんはし)は、国内で

          今月のひと駅-2023年7月

          今月のひと駅-2023年6月

          桑川(羽越本線) くわがわ駅 新潟県村上市 大正13年開業 夕日の駅へ鉄道でも車でも 笹川流れの最寄り駅である桑川までは、まだそれほど地形の険しさを実感することはなく、車窓からは、鄙びた小さな漁港が点在する海岸風景を楽しめる。途中の間島も越後早川も、観光化はされてなく、沿岸を走る国道345号から1本奥まった旧道沿いに、ポツンと小さな無人駅舎を構えるだけ。グルメの観点でも、もう少し活性化が画策できそうなのだが、いまだ機は熟さずといったところか。  その意味では、桑川駅の変

          今月のひと駅-2023年6月

          今月のひと駅-2023年5月

          鬼無(予讃線) きなし駅 高松市 明治30年開業 盆栽嗜むか桃太郎 電化された予讃線の複線区間は、多度津まで続く。特に坂出までは、四国で最も列車密度が高く、都市路線としての貫禄を湛える。ただし、この間には簡素な無人駅も多く、輸送の主力である快速マリンライナーをはじめ、高速で通過していく列車が圧倒する。だから、いくつも現れては過ぎ去る小駅たちは、旅行者の記憶には残りにくいだろう。  そうした中で桃太郎の鬼退治伝説に由来するという「鬼無」の駅は、わざわざ降りてみるだけの話題

          今月のひと駅-2023年5月

          今月のひと駅-2023年4月

          浦ノ崎 (松浦鉄道) うらのさき駅 佐賀県伊万里市 昭和5年開業 桜のトンネルが駅舎代わり 久原を出て、まだ集落続きといったところで、まさにその名の通り、入江に直面した波瀬駅を通る。国道204号は、その手前から松浦市内にかけて、山腹に高規格のバイパスが造られている。だから、松浦鉄道に沿った旧道側は、明らかに交通量が減り、しばらくのどかな海岸沿いの道が続く。  春しかその美しさを愛でられないが、片面ホームのみの浦ノ崎駅は、構内全体が桜のトンネルである。駅開業を記念して植樹

          今月のひと駅-2023年4月

          インタヴュー ウィズ オスプレイ ⑨(最終回)

          ミサゴ(水沙児)は冬の季語―お察しの通りで、カラスからの質問なのですが、フグに当たって死ぬようなことはないのかと。これは人類の側からも興味があります。同じフグでも無毒なものはいますが、見分けることはできるのですか? ミサゴ 具体的な確証があるわけではないのですが、長い歴史の中で遺伝的に記憶されているのでしょう、私たちは一定程度、毒性の有無を感知できるようです。ご存じのように、タカ類は小さな獲物でも、ウやサギのように丸吞みはしません。皮から骨まで、必ず細かく、一口サイズにちぎ

          インタヴュー ウィズ オスプレイ ⑨(最終回)

          インタヴュー ウィズ オスプレイ ⑧

          空中撥水のカズダンス?―タカ類の中でも際立って特異な飛行術をもつミサゴですが、それを可能にする翼の性能について教えてください。 ミサゴ タカ類の翼の形状は、大きくは2種類あって、ワシを含むタカ科は開いたときに楕円形、ハヤブサ科だと先端が尖る台形になります。前者は旋回重視、後者は加速重視なんですね。特にハヤブサたちの急降下時の加速、これが最もスピードの出る瞬間ですが、その際の翼はやや折りたたまれ、ブーメランの形をしています。それらに対して私たちは、両者の中間のような形状で、極

          インタヴュー ウィズ オスプレイ ⑧