スクリーンショット_2020-03-14_17.35.41

【逗子創業支援カフェ】#4 美しい棚田を守りたい。その想いを繋げる葉山アイス

逗子創業支援ネットワークが主催する、「逗子創業支援カフェ」。

支援機関や金融機関がネットワークを組んで、逗子で何かをはじめたい人をサポートしています。

本連載は、「逗子創業支援カフェ」と、逗子の暮らしを心地よく編集する「アンドサタデー 珈琲と編集と」が一緒になってお届けする、様々なフィールドで活躍している方の創業ストーリー。
逗子で創業(起業)を目指す皆さまにとって、気付きやきっかけとなり、そっと背中を押すことを目的としています。

>第一回目はこちら 「日本発祥のビーチサンダルで、世界に挑んだ創業者」
>第二回目はこちら 「サラリーマンから転身、 夫婦で叶えた『AID.KITCHEN』開業の夢」
>第三回目はこちら 「自分らしく等身大で作り上げた理想のコーヒーショップ」

第四回目となる今回は、「葉山アイス」を作られている、株式会社BEATICEの山口冴希さんにお話をお伺いしました。

画像17

「葉山アイス」は、アイス1つあたり10円が葉山の棚田での活動費に還元されるという仕組みを持つ、美味しくて優しい商品です。

画像21

待ち合わせ場所は、葉山の上山口の棚田。御用邸の町として知られる葉山町の山手には、「日本の里100選」にも選ばれた、都会から一番アクセスの良い棚田があります。
冴希さんにお出迎えいただき、「葉山アイス」の開発&創業ストーリーをお伺いしました。

画像1

偶然の連続から生まれた棚田アイス

ーーすごい、葉山にこんな棚田があったのですね!

初め見たときは私たちも同じ反応でした。田植え時期の、緑も青々として水を張った棚田は本当にきれいですよ。葉山に引っ越して程なく、たまたまごはん処の和か菜さんに行った際に、お店の裏手にある美しい棚田に感動したことを今でも覚えています。その後偶然にも幼稚園のパパ友に声をかけられ夫が米作りのお手伝いすることになったのが、この棚田でした。

画像22

ーーたまたま農業を手伝われることになったと。

そうなんです。農業なんてやったこともなくて全くの初心者でしたが、お手伝いはとても楽しかった。なんでも自分たちで工夫したり作ったりする農家の方の仕事を見て、純粋にかっこいいなと思いましたね。

ーー実際に米作りに参加しないと得られない貴重な経験ですね。「葉山アイス」のきっかけもその経験から?

はい。お手伝いをするうちに棚田の厳しい現状を知って。人手が足りなかったり、面積が小さく大きな機械が入らないので、一つ一つの作業が全て手作業で手間がかかっていたり。農作業を手伝うだけでなくて、他に棚田を守る方法はないかと考えるようになりました。

画像3

ーーそこで「葉山アイス」が生まれたのですね。

実は、すぐにアイスに行き着いた訳ではなく、初めは「棚田が見える宿がやれたらいいね」なんて話していて。

ーー宿の計画があったとは初めて知りました!

そこでの私の担当は宿でお出しする朝食を考えることでした。ご縁あって葉山にある「カラバシ」というカフェを間借りして、週に2日ほど「ちゃぶがえ」という屋号でお味噌汁と季節の炊き込みご飯、葉山で獲れたお魚といった和朝食を提供していたこともありました。
宿の計画はなかなか難しい側面もあり一度ストップしてしまったのですが、この期間に出会えた方やご協力いただいた素敵な方が本当にたくさんいて、まるでドラクエのように(笑)どんどん仲間が増えていきました。

画像5

ーー計画だけでなくて、実際に行動に移されているのがすごいなと思います!冴希さんたちが行動する度に、仲間が増えて行ったのですね。

アイスもそんな感じで、最初は夫の思いつきでした。夏場に海の近くで「ちゃぶがえ」のポップアップショップのお話をいただいたのですが、暑い中お味噌汁も違うよねというところから、お米でアイスって作れないかな?と夫が。

画像22

ーーなるほど。夏場のポップアップショップのメニューを考えているところから、偶然アイスが浮かんだと。

そうなんです。元々棚田のために何ができるか考えていたのですが、「保全活動」となってしまうと重たいしつまらない。アイスなら、みんなで美味しいねと言いながら気付けば棚田に貢献していて、棚田のことを知るきっかけにもなる。これだ!と思いました。

画像7

ゼロからの商品開発

ーーそこから商品化まではどのように進められたのですか?

夫はアイスは作れないので(笑)、そこからは私の方で試作の日々でした。家の炊飯器で甘酒を作るところから初めて、何度も何度も試作を重ね、やっと出来たアイスは子供たちや知人にも好評で!これならいけるかも、と兆しが見えた瞬間でしたね。

画像11

ーー「葉山アイス」が誕生した瞬間ですね!そこから実際の商品化はどのようにして?

商品にするには、許可のとれた工房や量生産できるような機械といった製造環境が必要なのですが、すぐに自分たちで手配することは無理で。そこで、茅ヶ崎にあるアイス屋さんのプレンティーズさんを訪ね、イチから思いやレシピについてをご相談し、生産いただけることに決まりました。

画像12

ーーまずはOEMという形で商品化されたのですね。いきなり工房を構えるのではなく、自分たちの企画したアイスを最短で商品として世に出せる仕組みをとったと。

はい。農業もそうですが、アイスに関しても素人だったので、自分たちだけ進めるのではなくて、とにかくたくさんの方にご相談したりご協力を得たりしながら進めていきました。

ーークラウドファウンディングの末、2019年には葉山にアイス工房も完成されました。

活動を初めてから嬉しい反応を多くいただき、もっともっとたくさんのアイスを作って多くの人に棚田のことを知って欲しい!という思いが強くなり、ほぼ思いだけで工房を持つことに決めました。

画像14

ーー工房ということは家庭での試作とは訳が違うと思うのですが、その辺りはどうやって?

当然、業務用の大きな機械でアイスを作るということも初めてで、素人同然なわけです。右も左も分からない状態だったので、機械選びから使い方、作り方まで、同業の方に助けてもらうことで何とかなりました。

ーー特にご苦労された点はありますか?

「商品にする」ということの難しさを痛感しました。今まで料理やお菓子は半ば感覚で作っていたのですが、それでは成立しない。均一な「葉山アイス」の味を作らなくてはいけない。毎回細かなメモを取り、時にはマシンの前でひとり涙しながら少しづつ改良を重ね、美味しい「葉山アイス」を安定してお届けできる体制を整えていきました。

画像15

ーーマシンの前で涙!その甲斐もあって、棚田アイスは葉山に止まらない広がりを見せているのだとか。

この取り組みを知った全国の方々から、「私達の棚田でもやってみたい!」と声をかけていただけるようになりました。今商品化しているのは、高知県嶺北の棚田、長野県千曲市にある姨捨の棚田のアイスです。それぞれの地域の商店や道の駅などで販売されたり、ふるさと納税の返礼品にも認定されたりしています。

ーー葉山での取り組みが、他の地域にも広がっているのですね。

当たり前のことですが、棚田は葉山だけのものではなく、全国にある。当然同じような悩みや課題もある訳で、そんな各地のみなさんと情報交換しながら、アイスで全国の棚田を盛り上げていくことができたら嬉しいなと思っています。

画像20

「葉山アイス」のこだわりと展開

ーー現在発売されているアイスの味や特徴を教えてください。

棚田のお米を使って作った甘酒とココナッツミルクとを合わせて作った「甘酒&ココナッツミルク味」と、実は葉山の名産である生姜とスパイス、アーモンドミルクを合わせて作った「アーモンドミルクチャイ味」の2つを常にご用意しています。卵や乳製品は一切使っていないので、卵や乳製品のアレルギーをもつお子さんでも食べることができます。

画像18

ーーヴィーガンの方も食べられるアイスなのですね!

私自身はヴィーガンという訳ではないんですが、誰でも美味しく食べられるものが作りたいという思いはありました。でも、初めからヴィーガンレシピにする!と決めていた訳でなくて、完成したレシピがたまたまヴィーガンだったんです。
葉山にあるヴィーガンのお店や、素材をこだわっているお店に気に入っていただけ、置いていただくこともできました。

画像9

ーー結果、販路も広がったと。葉山アイスはどこで買えるのでしょうか?

葉山ステーションさんや逗子駅前のスズキヤさんなど、逗子葉山横須賀市内の何店かに置かせていただいているのですが、先日2月1日に念願の通販サイトをオープンさせることができました!今まで遠方の方にはなかなか食べていただくことができなかったのですが、これでどなたにでもアイスを買って楽しんでいただくことができるようになりました。

ーー通販は嬉しいですね!おすすめはありますか?

おすすめは、「日本各地の棚田アイスセット」です。現在商品化している葉山アイスと嶺北アイス(高知県嶺北の棚田)、姨捨アイス(長野県千曲市にある姨捨の棚田)の3つの棚田アイスが楽しめる特別なセット!
本来はその地域に行かないと食べられないのですが、通販になったことでどなたでも各地域の作り手の想いが込められた、こだわりのお米が生み出す風味の違いを楽しむことができ、それぞれの棚田に貢献することができます。

ーーアイスを食べることで貢献できるなんて嬉しい。工房も通販サイトも整われ、これからの展開もますます楽しみです!貴重なお話しをありがとうございました。

画像8

株式会社BEATICE
 BEATICEは、「鼓動(BEAT)が高鳴る」=「ワクワクする瞬間」を軸に、素敵な(N ICE)気づき(NOUT ICE)を共有することを目指して活動しています。
WEB:https://www.beatice.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/beatice0923/

画像6

編集後記

「全部、偶然の巡り合わせなんです」
と穏やかな口調で微笑みながら語っていた冴希さん。お話しを聞いていると、どうやらこれは偶然なんてものではなさそうです。

分からなかったら、分かる人に聞けばいい。肩の力抜けたそのスタンスと、思ったら即実行!の並外れた行動力。棚田へ熱いの思い。そこに冴希さんご夫妻の人柄が相まって、いろいろな人が引き寄せられ、手を差し伸べてくれるという良い流れが生まれているのだと思いました。

強い思いを持った人に、人は集まる。迷ったら、まずはやってみる。そうして訪れた巡り合わせを、確実に自分たちのものにする。そんな当たり前のようでなかなか難しいことを朗らかにやってのけている冴希さんたち。物事を推進するうえで大事なことを、たくさん学んだ取材となりました。

冴希さん、素敵なお話しを聞かせていただきありがとうございました!

----------------------------------------------------------------

創業支援事業など、創業に関する情報についてはこちらに掲載されています。まだ創業を決めていない人たちにとっても、知っておくことで将来にきっと活きる知識が満載です。ぜひ一度ご覧いただければと思います。

『逗子創業支援カフェ ホームページ』
https://www.shokonet.or.jp/zushi/

『逗子創業支援カフェ Facebookページ』
https://www.facebook.com/zushisougyoucafe/


また、逗子市と商工会とで進めている逗子市シティプロモーションサイト「逗子暮らし」でも、逗子で起業し、逗子で働く方々の創業ストーリーを掲載しています。よろしければ、こちらの記事もぜひご覧ください。

逗子市シティプロモーションサイト「逗子暮らし」より
『逗子で働く』
https://www.city.zushi.kanagawa.jp/citypromotion/work/

----------------------------------------------------------------
コーディネーター:逗子市商工会 栗原大輔
取材・文・イラスト・写真:アンドサタデー 珈琲と編集と

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?