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抑え込みのコンセプトとテクニックとイメージ 抑え込みシリーズ④

 今日も今日とて柔術は楽しい。育児は大変で楽しい。育児の空き時間の筋トレで気休めに体を動かしています。1分あれば腕立て30回できるし、寝かしつけしながらスクワットもできるし、何セットもやれば意外と追い込めます。

 今日は抑え込みシリーズ第4弾。ここにきてようやくテクニックの回です。長いので最後のまとめを読んで、気になるところだけ細かく読んでもらっても

<用語>
ファーサイド→奥側、ニアサイド→手前側


1.抑え込みのコンセプト(ゴール、目的、目指すところ)

1-1 背中をマットにつけさせる
1-2 両肩をマットにつけさせる。肩を制する
1-3 両骨盤をマットにつけさせる。骨盤を制する。腰を制する。

 背中をマットにつけさせるには骨盤と肩を制することが大事です。両方抑えてもいいです。

1-1 背中をマットにつけさせる

 抑え込みといえばこれです。背中をマットにつけさせる。これが抑え込みのコンセプト(ゴール、目的、目指すところ)です。脇を差したり、枕を取ったり、胸と胸を合わせるのも全て「相手の背中をマットにつけさせる」というゴールにたどり着くための手段です。

 抑え込みが上手くできないと感じる白帯の方はまずこの「背中をマットにつけさせる」という抑え込みのコンセプトを意識してみてください

1-2 両肩をマットにつけさせる。肩を制する

 「背中をマットにつけさせる」の解像度をもう少し上げると「両肩をマットにつけさせる」になります。これはレスリングのフォールの定義です。さすがは歴史の深いレスリング。このフォールの定義は本当に理にかなっています。両肩をマットにつけられると全然動けません。

1-3 両骨盤をマットにつけさせる。腰(骨盤)を制する

 骨盤を制することも重要です。レスリングのフォールの定義には当てはまりませんが、腰(骨盤)をコントロールすると抑え込めます。首と脇がディフェンスされて上半身(両肩)をコントロールできない時はこちらを抑えることが多いです。

2.各テクニックのポイント

 骨盤と肩を制して背中をマットにつけさせるための各テクニックのポイントをまとめます。長いので流し読みでどうぞ。

2-1 首、マクラ

 マクラをとるのは首をコントロールすることで相手の背中をマットにつけさせるためです。

<マクラは2種類>
 
相手の首の下にただ自分の手を入れるだけのマクラはあまり効果がないです。
A)抱えて後頭部を浮かせる
→後頭部がマットにつかないとブリッジができない。足を引きつけられない
B)クロスフェイス
→顎~ほほにプレッシャーをかけて相手を反対方向へ向かせる。相手の顔(鼻)がこちらを向くと力が出るのでそれをさせない。襟をもって自分の前腕でプレッシャーをかけてもいいし、深く手を入れて自分の肩でプレッシャーをかけてもいい。もしくは自分の頭を使ってもいい(トライポッドパス)

<腕固めのカウンター>
 相手の足を越えていてない状態で浅く首を取ると腕固め(カッティングアームバー)を食らうので注意が必要です。

2-2 脇差し

 脇を差すのは脇を差すことで相手の肩をコントロールして背中をマットにつけさせるためです。

<脇は差すことよりも差されないこと>
 脇を差すことは大事ですが、それ以上に大事なのは脇を差されないことです。雑に差しに行って差し返されるのが最悪です。

<マクラと組み合わせる>
 マクラと脇差しを組み合わせて、相手の肩甲骨の下あたりでクラッチを組むと強力です。

<相手の肘が90度以下の脇差し>
 脇差しは①一般的な形のもの(相手の手が自分の肩口)と、②相手の肘が90度以下になる形のもの(相手の手が自分の胸の前)があります。脇が固い相手には②の形のほうが取りやすいです。

<手以外で脇を差す>
 脇を差すのは手ですが、別のものでもできます。
・逆の手の肘で脇を差す(後ろ袈裟)
・頭(肩固め)
・肘(襟を持った形で肘を脇下のマットに差す)

 今回は抑え込みでの脇差しの大事なポイントだけ。抑え込みの細かいポイントや展開はたくさんあるのでまた別の記事でしっかり書きます。

2-3 胸

 抑え込みの基本。みんな聞いたことがある「胸と胸を合わせる」

 これをやると相手の背中がマットにつきます。コツは乗りすぎに気を付けること、タイトにして手を入れさせないこと、くらいです。この形に入っていればかなり強いです。

 実際はこの胸と胸を合わせる形に行くまでが大変で相手の手が邪魔してきます。脇差しやマクラといったテクニックを使って相手の手を処理して胸と胸を合わせに行きます。

2-4 腰(骨盤)

 2-1マクラ、2-2脇差し、2-3胸は両肩を抑えるテクニックですが、この腰を抑えるのは骨盤を抑えるテクニックです。相手の両肩をマットにつけさせるよりもやや弱く、完璧に背中をマットにつけさせるのは難しいですが、有効なテクニックです。

 脇やマクラを取らせてくれない時は、骨盤を抑える低い抑え込みやニーオンで腰を抑えます。

<低い位置の抑え込み>
 首脇が取れない時は後ろに下がって低い位置で抑え込みます。自分の肘(前腕)と腰で相手の腰を挟んで相手の骨盤をマットにつけさせます。頭の位置が大事です。みぞおちの上あたり。相手の手が自由なのでめっちゃ押してきます。首をまっすぐにして顎を引いて耐えます。
 最終的には手を処理して上に上がって、脇や首をとります。もしくは背中を向けてきたらバックテイクします。
 パスしたけど手のフレームが強くて上体を抑えられない時に、この低い位置でとりあえず3秒抑え込めばパスのポイントが取れます。

<ニーオンは骨盤をスネで抑える>
 腹の上に膝を置くのは安定しません。ニーオンは相手の帯のラインに自分のスネをのせましょう。自分の膝で相手の遠い側の骨盤を抑えるイメージです。これだけでだいぶ安定します。また、組手がしっかりできていれば、腹に膝をのせてもコントロールできます。
 ニーオンからのアタックがたくさんありますが抑え込みができないとアタックもできません。

<脇を差す手を手前の腰の前に置く>
 相手の膝が入ってこないように手前の腰の前に手を置くとコントロールできます。ノースサウスへの移行もしやすいです。

2-5 足

 足のコントロールだけでは相手の背中をマットにつけさせられないですし、そこからのサブミッションもないですが、とりあえず立たせないための抑え込みとして有効です

<足を束ねる抑え込み>
 先ほどの低い位置の抑え込みと似ています。自分の腕で相手の両足を束ねて手をクラッチします。相手の腿裏に自分の膝(腿)を入れて相手の足を浮かせると相手は足裏がマットについてないのでエビできません。手が自由なのでめちゃ押してきますが足を束ねて足裏を浮かせていればエビできないので逃げられません。
 低い位置の抑え込みと同様に、パスしたけど手のフレームが強くて上体を抑えられない時に、この足を制する抑え込みでとりあえず3秒抑え込めばパスのポイントが取れます。
 そこからは手を処理して上に上がるか、またいで自分の足で相手の足を束ねる形を作ったりします。

<レッグウィーブの形>
 パスやエスケープの流れで相手の体が横になった形になることがあります。その形では相手の上の足を抑えると相手の両足をコントロールできます。その後は相手の襟を取って上体を抑えるか、逆サイドに走ってパスかバックテイクにつなげていきましょう。

2-6 その他

・相手の手首をマットに押さえつける
→相手のファーサイドの手首をコントロールする抑え込みもあります。手の位置が低い(手の甲が上)ならキムラ。手の位置が肩のラインならストレートアームバー、手の位置が高い(手の甲が下)ならV1アームロックにつなげられます。

・ラペラ
→ブラボーチョークの組手を作ります。相手のファーサイドのラペラを背中側から通して手前の肩口に持ってくると、そのラペラ一本で相手の脇と首両方コントロールできます。

・ノースサウス(上四方のポイント)
→脇を差されたり起き上がられそうになった時にノースサウスに移行するとコントロールできます。
→抑え込みのポイントはとにかく胸と腹で相手の顔にのることです。
→手を取れたらキムラ、手が取れなければチョークを狙います。ノースサウスチョークは極まりづらいですが、リスクが少なく相手を削れます。

3.コンビネーション

 前回の記事で詳しく書きました。

3-1パウンド、サブミッションのプレッシャーを利用する

A「パウンドやサブミッションのプレッシャーを利用して抑え込む」
B「抑え込みから逃げようとする相手の隙を狙ってパウンドやサブミッションを取る」

ABを組み合わせて使います。

3-2 バックテイクと組み合わせる

 抑え込みを逃げようとして背中を向けた相手にバックテイクするのは鉄板のコンビネーションです。まず初手でしっかりと抑え込むのが大事です。

4.抑え込みのイメージ

 感覚的なポイントですが、セミナーやクラス、プライベートレッスンで聞いたり、自分でやっていてイイ感じのイメージを紹介します。

4-1 両骨盤、両肩にピンを打つ

いらすとや、本当になんでもあるな。。。

 1章で先述した両肩と両骨盤のコントロールのイメージ。相手の両肩と両骨盤の四点にピンを刺します。二点以上刺していればだいたいコントロールできます。ピンに使うのは自分の頭、肩、膝、スネ、腰、胸、手が多いです。
 肩と骨盤以外でも、手首や前腕、みぞおち、胸、顔(首)にピンを打つこともあります。
 ピンは力を入れるというよりも体重をかけるイメージがいいです。

4-2 スライムのような脱力

 脱力すると体重がかかります。力を抜いたほうが重いです。子どもは寝ている方が重くなります。スライムのように体の上にのるイメージ。押しても押してもスカされるような。力を入れて固まって抑えると乗りすぎてブリッジで返されます。
 ①で書いたピンする部分(重くしたい部分)に質量を集めるイメージだといい脱力と重心のコントロールができる気がします。

4-3 抑えるよりも「通せんぼ」するイメージ

 「相手がエビして腰を逃がす先に手を置く」、「押そうとしてこちらを無効とする顔の前に手を置く(クロスフェイス)」「膝を入れようとするスペースに手や腰、スネを置く」。
 相手を力で抑え込むよりも、相手の動かしたい方向に自分の手や足や肘や膝や腰を置いて「通せんぼ」するイメージ。このイメージを持つと力に頼らない抑え込みができる気がします。

5.まとめ

1.抑え込みのコンセプト
→両肩か骨盤を制して、背中をマットにつけさせる。

2.各テクニックのポイント
→首マクラ、脇差し、胸、腰(骨盤)、足、を抑える。

3.コンビネーション
→パウンド、サブミッション、バックテイクと組み合わせることでより効果的な抑え込みをする

4.抑え込みのイメージ
→ピンを打つ、スライムのような脱力、通せんぼ

 ゴールは「背中をマットにつけさせる」「両肩と両骨盤をマットにつけさせる」。そのために首脇をとったりコンビネーションを使います。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。参考になる部分があればうれしいです。

2024/3/13 アンディ

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