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スイープは座った状態からのテイクダウン

 今日も今日とて柔術が楽しい。今週末は全日本柔術選手権。初出場。頑張ります。

 今日はテイクダウンとスイープの話。昨日書いた記事「上から攻めるか下から攻めるか」を読み返して整理したい部分が出てきたので、上を取る手段としてどちらを選ぶのかまとめました。


最近は結論から書くようにしてます。その方が読みやすい気がするので。

結論 楽なルート・効果的なルートを選ぼう

 テイクダウンとスイープ。結論としては、「自分にとって楽なルート・状況に効果的なルートを選ぶ」です。(結論になってない?)。以下解説。

 格闘技は基本的に上を取るのを目指します。(詳細は次項)上を取るためのルートとしては3つ。

A テイクダウン
B 引き込み→スイープ
C 相手が引き込むのを待つ

 A,Bのどちらのルートでも2P取って上になるのは同じです。 
ガードのコントロールが弱~強なのがミソです。
トップのコントロールが強になっていたらそれはパスしているか、限りなくパスに近い状況なので「弱~中」としています。

 「C 引き込むのを待つ」は除外します。ポイントも入らないし、相手に主導権を握らせています。格闘技で相手に主導権を握らせるような、相手の引き込みを待つスタイルはナシです

 Aルートについて、テイクダウンは先制得点を狙えるし、試合はスタンドから始まるのでスタンドの攻防で主導権を取れるのは強いです。しかし難しく身に付けるのが大変です
 Bルートは遠回りになりますが、Aルートより簡単です。スイープはいわば「座った状態からのテイクダウン」。極論、足を持って立てばいいのです。相手はこっちをテイクダウンできないけどこっちはテイクダウンを狙える状況がスイープです。ガードを作ってコントロールしていれば「有利な状態から仕掛けるテイクダウン」になります。また、ガードからはサブミッションやバックテイクも狙うことができるので意識を散らしてスイープを成功させやすいです。(スタンドからもサブミッションやバックテイクはあるが、かなり難しい)暴論に近い極論を言えば「スイープはテイクダウンより簡単」です。ちなみに、この「スイープは座った状態からのテイクダウン」とという言葉はトライフォースの芝本幸司先生のセミナーで聞きました。

 また、残り時間が数秒の時に得点するにはテイクダウンの方が効果的でしょう。得点までの手順が少なく早いのもAルートのメリットです。

 イメージとしてはAルート(テイクダウン)は最短ルートだけど装備少なくて荒れた道、Bルートは遠回りだけど装備充実してて整備された道(ラクな道ではない)という感じです。どちらを選ぶにせよ主導権を取って自分から攻めましょう。そのうえで、自分の能力、相手の能力、時間、得点、残りのスタミナなどの状況に応じてどちらを選ぶか考えましょう。(もしくは上を取らず最短距離でバックテイクやサブミッションを狙うというD,E、Fルートもあります。次項で説明)

 次項から、細かく各項で説明していきます。長文ノーサンキューな方はここでさようならです!読んでいただきありがとうございました!

1.上を取るのが格闘技の基本

ポジションのゴールはマウントかバック(図の左上)
ゴールであるマウントとバックは上(トップ)にある。(図の上半分)
基本的には上(トップ)の方が有利なポジション

 雑で短絡的な言い方をすると上を取るのが格闘技の基本です。シンプルに上なら殴れます。コントロールできます。フィニッシュに近づきます。

(マイナスのスタート:サイド・マウント・バック取られているからエスケープする)

スタート:下か、スタンド

①スイープorテイクダウンで上を取る

②パスしてポジション取る

③さらにいいポジション(バック・マウント)を取る

ゴール:一本

第一歩が「①上を取るスイープorテイクダウン」

 柔術の本質は「ポジショニングとコントロール」。一本というゴールへたどり着くためにポジションを重視して相手をコントロールするシステムに柔術のフィロソフィがあります。相手をコントロールするポジションを取るための第一歩が「上を取る」なのです。柔術といえば「下からの攻め」のイメージですが、自分は柔術の本質は「ポジショニングとコントロール」だと思っています。

 少し話がズレますが、競技柔術ではないクラシックな柔術は打撃を想定してて護身術的側面もあります。「相手をコントロール(支配)する」というのは「有利な上からの打撃で相手をコントロールする」という意味があると思います。また、不利な下から上になれば逃げる選択肢ができるので護身術として価値があります。そういった側面からも「上を取る」ことは格闘技として重要視されます。

補足 上を取る以外のコントロール

 柔術の本質は「ポジショニングとコントロール」。ゴールは一本。そのための第一歩が「上を取ること」。というのが1.の主旨です。しかし、上を取る手順を飛ばしてコントロールしたり、一本取ることも可能です。

(マイナスのスタート:サイド・マウント・バック取られているからエスケープする)

スタート:下か、スタンド

①スイープorテイクダウンで上を取る

②パスしてポジション取る

③さらにいいポジション(バック・マウント)を取る

ゴール:一本

①、②、③は飛ばすことが可能です。

 ガードからのアームドラッグによるバックテイクやベリンボロでは最短でバックを狙います。(①②を飛ばしていきなり③)ヒップスローでスイープしてマウントを取るのは飛ばすというよりも、同時に①②③をやるようなイメージです。
 下からの腕十字や三角、足関節は①②③を飛ばしていきなり一本を狙います。ガードで十分にコントロールできていれば可能です。
 たまに、コントロールできていないマウントやバック、サイド取られている状態(マイナススタート)から一気に一本を狙うこともあります。バックからの足関やマウントからの袖車、サイドからのバギーチョークなど。これは奇襲というかコントロールできていない状態から出す技なので多くの場合有効ではありません。

 どのルートが絶対の正解ということはありませんが、「基本のルートとポジショニングの概念を理解すること」「相手をコントロールすること」を意識してゴールを目指すことが大切です。

2.上を取るための手段としてのスイープとテイクダウン

 先に書いたAルート(テイクダウン)とBルート(引き込み&スイープ)のデメリットとメリットを深掘りしてみました。

①テイクダウン

テイクダウンのメリット
・ポイント先取できる
・選択肢が増える
・テイクダウンを警戒させれば、引き込みもしやすくなる
・テイクダウンされにくい(先制されづらい)
・試合開始はスタンドから。最初から主導権を取れる
・(トップが得意なら)パスをすぐに狙える、体重を使って相手を削れる。
・スタンド再開になっても即得点のチャンスになる。
・時間が残り数秒でも得点できる
・テイクダウンできない人が多いので、スキルとして希少価値が高い。(少しできるだけで優位に立てる)
・SJJJFルールのサドンデスの時に有利
・引き込みがマイナスポイントになるADCCルールで有利
・カッコイイ

テイクダウンはカッコイイ

テイクダウンのデメリット
・スパーではスペースの関係でテイクダウンの練習をするのが難しい
・スパーでは引き込むことが多いためテイクダウンの攻防が練習できない
・テイクダウンのテクニッククラスは少ない
・柔術のテイクダウンを得意としている指導者が少ない
・単純にテイクダウンのテクニックは難しい
・フィジカル、スピードによる要素がスイープに比べて多い
・立ち技の攻防はケガのリスクが高い
・難しいわりに引き込まれて使う機会がないことも多く、成功させても2Pしか入らないのでコスパが悪い(※)

※最後の項目は場合によります。上を取ることが有利に働く重量級やパスが得意な人だと
テイクダウンで上を取るのは価値が高いので、最後の項目は当てはまりません。

 まとめると「主導権をとって速攻で攻められるけど、難易度が高く身に付けるのが難しい」

 余談ですが、ノーギグラップリングでは比較的、上有利になることが多いので、上を取れるテイクダウンの価値が高いです。

②引き込み&スイープ

引き込み&スイープのメリット
・テイクダウンに比べて、スパーでスイープを練習する機会が多く、スイープが得意な指導者が多く、クラスや動画でも情報が多く身に付けやすい
・手順通りにやれば決まる確率が高い
・フィジカル、スピードによる要素がテイクダウンに比べて少ない
・立ち技の攻防に比べてケガのリスクが低い
・テイクダウンができなくてもこれができれば勝負ができる
「座った状態からのテイクダウン」
有利な状態から仕掛けるテイクダウン」
サブミッションやバックテイクも狙うことができるので意識を散らしてスイープを成功させやすい

テイクダウンのデメリットの逆です。

引き込み&スイープのデメリット
・手順が多い人ので得点まで時間がかかる。
・SJJJFルールのサドンデスの時に不利
・引き込みがマイナスポイントになるADCCルールで不利
・相手も下を取りたい場合、ダブルガードの攻防になってしまう
・トップが強い相手の場合、体重を使って削られる
・スタンド再開になった場合、もう一度引き込みをしなければならない。(テイクダウンは再開してすぐに得点を狙える)
・テイクダウンと違ってスイープはできる人が多いので、スキルとして希少価値が低い。相手もその技を知っているので防がれやすい。(少しできるだけでは優位に立てない。)

<テイクダウンできなくて引き込みを選ぶ場合のデメリット>
・スタンドで主導権を取られる可能性が高い
・ポイント先取されやすい
・選択肢が一つしかない
・テイクダウンを警戒していないので、引き込みの難易度が高い

テイクダウンができる上で引き込みを選ぶのがベスト

 まとめると、「手順が多く遠回りだけど、理屈通りやれば成功しやすい」「テイクダウンもできるとさらに強い」

まとめ

 最初に結論で伝えた内容と重複しますが。

・基本的には上を取ってポジションをとっていく。
・テイクダウンと引き込み&スイープ、どちらを選ぶにせよ主導権を取って自分から攻める。
自分の能力、相手の能力、時間、得点、残りのスタミナなどの状況に応じてどちらを選ぶ
もしくは上を取らず、下から最短距離でバックテイクやサブミッションを狙うルートを選ぶ

 ダメなのは「テイクダウン苦手なんだよな~、相手スタンド強かったらどうしようかな~、でもワンチャン相手弱かったらテイク取れたらいいな~」「上取りたいな~、相手引き込んでくれないかな~」みたいなマインドでなんとなくスタンドから組み合うことです。(まさに昔の自分であります)
 「死ぬ気で下を取る!」「最初からテイクダウンを狙っていく!」「集中して立ち合いして、相手のスタンドの強さを見極める!」といった感じで自分から攻めて主導権を取るのが大事です。

 これを読んで柔術の考えが整理されたらうれしいです。ありがとうございました。

2023/10/5 アンディ

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