嬉しいこと、悲しいことのすべて
ひと月半ほど自宅で仕事をしていた
今日ほんとうに久しぶりに出社した
日々反復するからこそルーティンに
なるのであって、別の反復になれば
かつての反復は忘れ去られてしまう
朝起きてから、どんな順番で準備を
していたのかも忘れてしまっていた
◇
当たり前だけれど、オフィスの風景
は、何ひとつ変わった様子はなくて
私が、いても、いなくても同じ風景
そう、私ひとりが変えられることは
ほとんどない
それは、そんなに悪いことではない
同時に、そんなに良いことでもない
買ったばかりのドクターマーチンは
まだ硬いけれど、さほど痛くはない
靴ではなく、足が合わせようとする
そんな考えがふと浮かんできた、朝
◇
出社すると、相次いで声をかけられた
それも他部署の方で、別段仕事の会話
というわけでもなく、久しぶりだねと
ただ話がしたくて声をかけてもらえた
ことが嬉しかった
特別なこと、ではないのかもしれない
何の気なしに、当たり前のことだから
私には余計に嬉しい、と感じる出来事
大袈裟だけれど生きているという実感
人の間に生きているという生身の感覚
じんわりと、涙が出そうにだってなる
大袈裟に見えても良いじゃないか
繊細だとか、感受性が、だなんて言う
つもりはないよ、だってまたあの人に
ネタにされて、揶揄されるだけだもの
揶揄する人みたいに常に自己アピール
することばかり考えてなんかいないよ
人と比べてどうだとか「普通」が何か
なんて割とどうでも良いことであって
嬉しいことがあったら、嬉しくて泣く
悲しいことがあったら、悲しくて泣く
私は、私が感じたことにいつも素直で
あれたら、それがまた嬉しいことなの
◇
自分を良く見せるために書いていない
私は特別にはなれなかった
私は良い人にもなれなかった
この先どうなるかわからないけれどね
嬉しいことがあったら、書いて遺す
悲しいことがあったら、書いて遺す
そうして忘れてしまわぬようにしたい
そうして忘れてしまうことがあっても
こうして思い出せるようにしていたい
だって、これからも
私は、たくさんのことを忘れてゆくし
私は、たくさんの人に忘れられてゆく
◇
珈琲を淹れに行ったら窓の外側が少し
赤くなり始めていた
離陸したての飛行機が、右上に飛んで
そして、旋回して遠くに消えていった
鳥のように人は毎日遠くに飛んでいく
いつか、どこかへ、私も飛んできえる
たんなるにっき(その99)
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